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敵の敵は

ブックマークありがとうございます!

寝込んでたので節々が痛いです泣

そしてこちらも痛い話から始まります笑



「キッツゥ~~ッ!!」



これは、全身筋肉痛、決定だな。

私も連中のように声を上げてしまいたいと、そう思う程には厳しい訓練だった。


周りを見やれば、屍の如く地に転がっている同期生達。

休暇中に騎乗練習をした私達でさえ音を上げる程なのだ。他の者達は午後まで動くことができないだろう。



「ルフェ……お前なんでンな涼しそーな顔してやがるッ…!!」


「そりゃーアレだろー?、ブフッ…!!あん時と比べたらこんなモンよゆーなんだろォッ…!!」



思い出し笑いをし、腹筋を痛め、腹を抱えて苦しむ連中。

まったく、此奴らは阿呆なのか?



「あん時、とは?」



本当に涼し気な表情で尋ねてくるディート。

まったく…騎乗訓練でも彼に敵うものは誰一人としていなかったな。



「…入学の二日前から、馬を飛ばしてこの国に入った」



睡眠不足の状態でな、と付け加え、当時を思い出しげんなりする。



「あの山道を…」


「いやあ、アレは今までで一番キツかったわ~」



驚いたように呟いたディートに透かさず反応したコルガーへ、憎々しい視線を向ける。



「体力馬鹿のお前でさえも、音を上げていたからな」


「いやいや!!四六時中馬に乗ってられるお前に言われたきゃねーわ!!」



まあ、以前はたしかに毎日のように乗ってはいたけれど。改めて騎乗は日々の積み重ねが大切であると思った。


ディートは、おそらく、休暇中も乗り回していたのだろうな。

…そのような事を気にするなど、私は相当悔しいらしい。得手と自負していた騎馬でさえ、勝てないのだと。



ふと、親し気に話しているウィーとジルが視界に入る。


いつの間に、という訳でもないか。ジルがウィーの本家の者に絡まれてから、気に掛けているようだったな。

ディートも、他の者達ともう少し馴れ合えぬものかと思うけれど、身を明かせぬ立場というものは、厄介だな。私とは逆の立場なのだ。……卒業後、知る事になるのだろうか?私は…、明かす事はあるのだろうか……その時、皆はーー



「ーーお~い、ルゥ?聞いてるか?」


「…ああ、すまない。何だ?」



コルガーに顔を覗き込まれ、はっとする。



「飯だ飯っ!」


「飯?少しばかり早くないか?」


「だぁから~!ホント聞いてねぇな?ジルが料理番に声掛けられて、お詫びがしてぇンだとよ!」



お詫び、と呟き、私達を待っている様子のジルに目を向ける。



「なぜか俺は昔からよく声を掛けられる質なんだよなあ」


「たしかにたしかに!城下行った時も毎回、道聞かれるよな~ジルは!」



移動しながら雑談をする面々。

ルジは最後尾に、コルガー、ディートと並んで食堂へ向かう。


あの件から、食堂の料理は格段に良くはなった。しかし、料理番達は、というより料理長は覇気がない。



「ウィー、エディソン。王宮の料理番に平民がなる事は如何程の狭き門なのか?」



前を歩く二人に問い掛ける。



「ん~、どうだろうね?基本、料理学校を卒業した人達だからね」


「彼らは、厨房助手から料理番になったのだと思います。厨房には、厳然とした序列があると耳にした事があります」


「成程。腕と根性はある、という事だな」



料理学校なるものがあるとは、さすが同盟国である。

その環境下で料理番に上り詰めた彼らならば、多少の無理は問題ないだろうか。



「悪い顔をしているな?」



ディートが楽し気に私の顔を見る。

コルガーがゲッと声を上げる。



「その顔はアレだ、無茶振り吹っかける時の顔だっ!食いしん坊っちゃんの食いもんの恨みは半端ねぇからな!」



前方で連中が反応し、また腹を抱えている。

まったく…本当に、そう呼ばれていたのだろうか?今度リューバにでも尋ねてみるか。



「ルフェ、先に入った方がいいかと思う」


「ああ、分かった」



ジルに言われ、一番に食堂へ立ち入る。食欲をそそる香りが漂う。

緊張からか身を固くしている料理長達と、その前に並ぶ美味そうな料理が目に入る。



「…これは、宮廷料理か」



図書室の資料で見たものに似ている。



「…そう、で、ございます」


「そう改まる必要はない。私は貴族ではないのだ」



私の言葉に料理長達は顔を歪める。

驚きたいけれど、失礼にならぬよう留めている、といった表情か。



「私の国にはもう貴族はいない。まあ、領主の子息は元貴族という位置付けだが、城で宮廷料理が出ることはない」



というよりは、時と共に宮廷料理と大衆料理が混合して新たな食文化となったのだけれど。

まあ、斯様な事も知られていないのだろう。同盟国が辺境国に興味がないのか、多様な国と貿易していると取るに足りない事なのか。



「しかし、実はこの国の宮廷料理が気になっていた。早速頂こう」



ルジが席に着き、他の者達へ目配せする。

ディートとコルガー、次いでエディソンとフルウィウスが座ると、ジル達も次々に椅子を引く。


ルジは皆の着席を待たずに、手を清めて直ぐに料理を口にした。



「……堪らないな…」



感嘆の吐息を漏らしながら、料理長の顔を見上げる。



「食材から歓喜の声が聞こえるようだ、料理長」


「……それは…何とも……」


「なんて繊細で優しい味なのだろう。ああ、美味いな…」



もう一度、吐息を漏らす。

汁物を飲み下し、頬が緩む。この国の豊富にある宮廷料理の中で、此れらの料理が選ばれた理由は、そうか。訓練後の身体に染み渡る。



「お気遣い、感謝します。料理番の皆々様」



固唾を呑んで私達を観察していた料理長達へ、姿勢を正して目を向ける。

夢中で食べていた連中も空気を読んで手を止める。



「先日は、皆の料理人としての矜持を傷つけるような発言をし、本当に済まなかった」



座ったまま頭を下げれば、一呼吸置き、慌てた様子で女性の料理番が口を開く。



「そっ…そん、なっ、おっおおおやめくださいッ…!!」



頭をお上げくださいと、声を震わしている。



「……謝らなきゃなんねぇ…ならないのは私共の方です。今まで、本当に、申し訳、ございませんでした…」



体勢を戻せば、料理長が深々と腰を折り、それに続いて料理番達も頭を下げる姿が目に入る。



「舐め腐って、おりました。本当に……申し開きもねぇです」


「いや、腐っているのは貴族の方だ。ああ、この中にも無論貴族はいるが、このままでは腐敗が移りそうな勢いだな?」



エディソン達へ視線を向ければ、話を振るなと言わぬばかりに顔を顰めている。



「さて。顔を上げてくれ、料理番の皆々。もし、これ以上に詫びなければ沽券に関わると言うのならば、是非に、私からお願いしたい事があるのだが、いかがか?」



ルジが優しい声色で尋ねれば、料理長達が恐る恐る頭を上げ、ルジの顔を不安気に見詰める。



「私は知っての通り、食い物を粗末にする者が許せぬ食道楽だ。其れ故、皆々には私と共に新たな食の開発をしてほしい」



私の言葉に、キョトンとする一同。



「まあ、王宮の厨房に戻りたいと望んでいるのならば、無理強いはしないがーー」


「ーーあっ、あのっ…!!協力させてくださいっ…!!」



頬を紅潮させた女性の料理番が、挙手した手を下げて握りしめる。



「あのっ、…あたしっ、たしかに、王宮に戻りたいって、その…思いもあります。でもっ!あなたに叱られて、思い出したんです。あたしは、料理を作って、おいしいって食べてもらえるコトが好きだったんだって…。王宮で、料理人になるなんて、本当に…夢のようだった……。でも、もう、ずっと……辛かったんです」



そう吐露し、目を潤ませる。


…叱ったつもりは、なかったのだけれど…同様の覚えがあるな…

小さく笑みを浮かべると、コクリと頷いた料理長が私に視線を合わせる。



「俺も、ちったァ未練はあるが、このまま腐るワケにゃいかねェ。見返してやりてェんだ。アンタらの言うムズカシイことはさっぱりだが、貴族サマにリヨウされるなんざゴメンだ。俺は、この、俺の腕で戦う。だからよォ、」



自分の腕をガシリと掴み、ニッと歯を見せて笑う。



「アンタらと、一緒に戦わせてくれ」



料理長のその笑顔に、迷いも、憂いも、憤りも全て吹き飛ばし、料理人の熱情を取り戻したのだと確信する。


他の料理番達も次々と声を上げ、揺らめく炎のように輝く彼らの瞳を見て、己の中で忘れかけていた闘志が滾るのを感じた。



ウィーは基本的に真面目な人が好きなんだろうなと。

ディートも早くみんなと打ち解けてほしいですね~(旗)

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