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青二才の望み

ウィー視点です。

10代の時期って、振り返ると小っ恥ずかしいものですが、そんな失敗を臆せずできるのが、その時期なんですよね。



『それは…悪戯したってことか?』


『ッハ!やめろ聞くなジルッ…!!』


『ああ、子どもの頃にな。此奴は昔から糞餓鬼だった』


ルゥさんが苦手になる程とは、一体どんな悪戯だったんだろうと思っていたら、予鈴が鳴ってしまった。あの非の打ち所が無い人が、苦手って…




「…ウィー?何を笑っているんだ?」


「え?ああ、続きが聞きたかったなって思って」



まだ表情の硬いエディに言われ、無意識に笑っていた自分に少し驚く。



「続き?」


「うん。コルガーはどんな悪戯をしたんだろって」


「…あまり詮索するのは良くないと思うが…」



非難するかのように顔を顰めるエディ。



ほんとに…この堅物が、憧れる人に出会うとは。嫉妬してしまった僕は悪くないと思う。


ずっと、エディの傍にいたのは僕なんだと。僕がこの子を守らなければならないと、あの時誓ったんだと。




『おれはっ!ぜったいに、”きし”になるんだ…っ!!』


『……じゃあ、ぼくも、エディといっしょに”きし”になる』


『ほんとうかっ!?』




この少子化が進む世の中で、子沢山な侯爵家の三男として生まれ、家の慣習を守るだなんて封建的だと言われる時勢で、長男次男とが文官になっても権勢を掌握したい家の者達からお前も絶対文官にと強いられ。


そんな環境下でもエディは、歯を食いしばり、一言も弱音や文句を吐かず、自分を見失うことなく只々、前を見据えていた。



「それにしても…蛙、ね」



どういう、意味なんだろう。


あの阿呆な文官や近衛師団員の奴等は、泳がされているということ?一体誰に?

じっと見てるって、何かを見極めているってこと?誰が、何を……まさか、


ゴクリと唾を飲み込む。



「ねぇ、エディはさ…王女殿下が、継ぐと思う?」


「……王子殿下のお姿は、一度も拝見していないからな」



やっぱり、みんな薄々そう思っているんだろうな。それでも。



「まあでも、建国史上、未だ女王は即位してないんだよねぇ…」



王子殿下はご病気のためお生まれになってからずっと療養中で、その事に対して王宮内では古参の上級貴族の方々が回りくどくも不甲斐無いと苦言を呈し、近年蔓延っている下級貴族達は王女殿下に媚を売る始末。


公爵家の御令息も同じくご病気による療養中であり、ますます下級貴族達が図に乗っている。さも自分たちがこの国を動かしているんだと言わんばかりに。


全く以て、意図が読めない。

公爵家の御子息が”ディート”というお名前であると耳にした時も今も、心底訳が分からない。”彼”が”ディート”なんだとしたら、王子殿下もご息災なんだろうか…



フルウィウスは小さく嘆息し、座っていた寝台の上に寝転んだ。



「……ウィーは、変わらず騎士団を希望しているのか?」



緊張した面持ちのエディソンが椅子に座り直しながら問い掛ける。



「もちろんだけど、なんで?」


「……今思えば、あの時から…ずっとお前を縛り付けていたのではないかと…今日、ルフェ殿に話していて気付いたんだ」



上体を起こし、エディと目を合わせる。



「…ああそれで、まだ変な顔してたんだ?」


「変な顔などっ…!いや、ウィー、真面目な話をしているんだ。俺は、」


「僕も大真面目だよ、エディ」



にっこりと微笑み、腹の底から込み上げてくる黒い感情を押し込める。



「実はね、あの人に、野蛮な戦闘民族の血が入っているから騎士になんかなれる訳がないって、子どもの頃から言われてたんだ」


「ッ!!そんなことをッ…!!」



自分のことのように悲痛な表情をするエディを見ると、黒い感情が放散していく。



「そうなんだって、思ってた。血は争えないものなんだって。でもね、エディに出会って変わったんだよ?」


「……そんな、」


「ははっ、そうなんだってば、エディ。うちの本家は特に典型的な貴族だからさ、洗脳されてたんだろうね。あのままエディに出会わなかったら…僕は、士官学校なんか入学できなかっただろうし、ルゥさん達にも出会うことはなかったよ」



だからありがとう、エディ。そう笑みを溢せば、彼は泣きそうな顔をする。



「…ルゥさんは、すごいよ。本当に。自分がどれだけ恵まれた環境の中で、もがいてたんだなって思い知ったよ」



エディソンは目をぎゅっと閉じ、瞬きを数回した後、口を開く。



「……無知は、罪だと、改めて思った。何を呑気に生きてきたのだろうかと…」


「そうだね。でも、僕達の志は変わらないどころか、より強くなったよ。エディ、守らないと。この国を」




ーーー恨みは、消え失せた訳じゃない。




のうのうと僕達を見下し王宮内を闊歩している奴等のことを考えるだけで、腸が煮えくり返る。


でも、そんなことはどうでも良いと、ルゥさんに教えてもらった。

自分の成すべきことを、するんだ。



強く何度も頷くエディを見詰め、高鳴る胸にそっと手をあてがった。



エディは、ルジ並みにそっちの方は超鈍感です笑

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