泣いても笑っても
台風、凄いですね…
ルゥさんの髪を切っている人がやっと判明します!
「ディート、新年度早々に悪いな」
早朝からルジに呼び出されたディートがコルガーと共に入室する。
「いや、別に構わないが、」
ルジの不自然な髪を見て怪訝な顔をしたディートは、慣れた手付きでルジの髪に触れる。
「理由を、聞いてもいいか」
「休暇中にあった思い出話でもしてくれるのならば、良いが?」
「…勘弁してくれ」
小さく吐息を漏らしたディートがルジの背後に置かれた椅子に腰掛ける。
何だ、詰まらない。昨年、ディートは休暇に関する話題を振るなと言わぬばかりの態度であったから聞かなかったが、矢張り今年も駄目だったか。
「どの程度切る」
「任せる」
そう返せば、躊躇なく鋏を髪に入れ、手際良く調髪するディート。
眠そうに欠伸をし、寝台に寝転ぶコルガー。
目を伏せ、休暇中にあった襲撃を思い出す。
あの日、警備兵隊長と騎士団員にも事情聴取をされた。団員は騎士ではなく事務官だった。
警備兵は、騎士団や近衛師団とは異なり貴族は所属していないと聞いてはいたが、其れなりの訓練を受けた者であると感じた。まあ、結局、あの曲者は捕らえられなかったのだが。
曲者も気にはなる。其れよりも矢張り、人材不足というのは貴族の事なのだろう。警備兵も軍部の管轄の為、訓練や素質に差が有るというよりは問題の有る貴族が多い、といった所だろうか。
「ルフェ、終わった」
「…ああ、ありがとう」
立ち上がりながら体に巻いていた古布を取り外す。
はらはらと床に落ちた髪を見れば、何時もより短めになった様だと気付く。
「コルガー、寝るな。行くぞ」
髪を一つに纏め、古布で適当に毛を集める。
「えぇー早くねぇ?」
「何言っている。お前の成績を見に行くのだ」
うわーそうだったと、嘆くコルガー。
期末試験の結果が次年度の組分けに反映されるのが三学年だけなのは、恐らく進路に関わる事なのだろう。
コルガーが同じ組でないと、貴族ばかりの面々に囲まれ一年を過ごすのは流石に息苦しい。
然し、心配は要らないだろう。以前補習を受けたコルガーは再試験で満点を取り、その後も上々であった。まあ、ジルのお陰なのだが。
「久しぶり。おはよう、三人組」
「ウィーお前、何て雑な呼び方を…」
「ウィー、エディ、久しぶりだな~!元気にしてたかあ?」
「エディと僕は親類達に進路について責付かれてウンザリしていたよ」
そうコルガーに微笑みながら答えるウィーと、エディソンに視線を向ける。
「おはよう。ウィー、エディソン、今年度もよろしく」
「…おはようございます、ルフェ殿、ディート殿、コルガー殿、今年度も一年よろしくお願い申し上げます」
「よろしくお願いしマース!」
「よろしく頼む」
「よろしくね、って、相変わらず変な温度差だね」
何処かほっとした様に、楽し気に笑うウィー。
貴族の帰省というのも、大変なのだろう。
「ルフェ~!!大事件だッ!!」
成績順位表が貼り出されている場所から少し離れた所で連中が騒いでいる。
「オマッ…!貴族サマ方がいんのにデケー声出すなッ!!」
「うわっヤベッ!!」
「コルガー、ディート、行くぞ」
コルガーの腕を掴み、足早に成績順位表の前まで向かう。
「……これは、」
思わず呟く。何と、コルガーは十位だった。
「大事件だな」
そう愉快そうに言ったディートは無論、一位で私は二位だ。全く、諦めたくなる程に何も変わらない。
連中の所からジルが向かって来る。
「おはよう、ジル。お前のお陰だな」
「おはよう。いや、コルガーがやれば出来る男だってことだろう?」
今日も朗らかに笑うジルも変わらず、エディソン、ウィーに次いで五位である。
「だろ?ッてぇ…!」
「調子に乗るな」
自慢気な顔をしたコルガーの腹を肘で突く。
上位二十名までという事は、ディート、エディソン、ウィー、ジル、そしてコルガーと同じ組みだ。
連中とは、演習科目で同じになるだろう。休暇中、相当腕を上げたからな。
「お前ら、ジルと離れたがしっかりやれよ」
連中に近付き声を掛ければ、目を輝かせた面々。
「当たりメェだルフェ!!教えてくださった騎士様に恥じネェよう俺は死に物狂いでやるぞ!!」
「そうだそうだ!!騎乗練習もやったからなっ!!」
「くっ…!!ルゥが言ったのはベンキョーの話だろテメェらっ!!」
大笑いするコルガーの言葉にハッとする一同。
まったく、先が思い遣られるなと失笑した。
まあ、何はともあれ、最後の一年が始まった。
剣術大会の件も、襲撃の件も、何者の仕業なのか分かっていない。否、知らされていない、という可能性もあるが。
目を白黒させている連中を見ながらもう一度、失笑した。
ちなみに、ルゥさんとコルガーは相部屋です(そのうち誰かさんに大丈夫なのかと問われますが笑)。ディートは特別なので相部屋一人で使ってます。




