真相を知る者は
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寒暖差に体調崩しております…汗
二学年は競技場で待機となり、招待客達は徐々に退席している。
顔を真っ青にしたジルが向かって来る。
「……っ、ルフェ…」
「違うぞ、ジル。気にするな」
「僕もそう思う。あの人は小心者だからね。君が責任を感じる事はないよ?」
ウィーにしては優し気な声色で、少し驚く。
というか、ジルが今まで何度も貴族達に喧嘩を売られ、毎回打ち負かしていることもウィーは知っているということか。
そして私もあの様な者達は気が小さく、逆恨みを理由に大それた事を実行できるとは到底思えない。
「…ルフェ殿は、如何なる時も冷静でございますね」
感服したといった表情で、ルジに声を掛けるエディソン。
…観客席から誰か降りて来たな。
「いや、そんなことはない。今私は腹が減って苛立っている」
「ーー生徒の皆様、」
振り返り、声の主を見遣る。
「お疲れ様でございました。素晴らしい剣技を拝見し、感極まっております。よろしければ、差し入れを受け取ってくださいませんか?」
………恐ろしく、美人だ。それに……
詠うかのように滑らかに言葉を紡いだ男は、ルジに菓子折りを差し出す。
「ああ、失礼いたしました。私は外交参事官のディーノ・ラフラムと申します。以後お見知りおきを」
ふわりと微笑むその姿は、まるで妖精のようであると、そう思う程の美しさだ。
差し出された高級そうな箱を受け取り、一礼する。
「…ありがたく、頂戴します」
「お気に召していただけたら、嬉しい限りです」
では皆様ごきげんようと、優雅に微笑し、歩き出した背中をぼんやりと見つめる。
………どこかで、会ったことがあるような…そんな気がする……
「……ルゥってさ、意外と面食いだよなぁ?」
ラフラムが遠ざかった後、ニヤニヤと笑うコルガーがルジの顔を覗き込む。
「…違う、今のは、」
「ふぅ~ん?まっ、本命は別だもんなぁ?」
「…どういう意味だ?」
コルガーが意味あり気にウィーに視線を送る。
「…何ですか?コルガーさん」
「うちのルゥがお世話になってます、フルウィウス様」
「……、そういう意味か…」
思わず呟けば、眉間の皺を深くしたウィーが透かさず反応する。
「…どういう意味ですか?」
「くくっ…フルウィウス様の御顔があの御方に似てるってゆー話デス」
「…あの御方?ああ、何ですか、女顔と仰りたいのですか」
……途轍もなく冷たい目をしている。まるで虫螻を見るかのような、冷たさだ。
「…違う、弟のように可愛がっている者だ。女ではない」
「…へぇ?」
「確かに顔の系統は似ているが…全然違う。あの子は、天使なのだ」
…しまった。
場の空気が可笑しなものになる。完全に失言だった…
「ブハッ…!!ルゥ…ッ!!ンな風に思ってたのかよッ…!!」
「……最悪だ…」
片手で顔を覆い、深い溜め息を吐く。
「…ウィー、重ね重ね、本当に悪かった」
「いや?僕は天使だなんて言われたら腸が煮え返るから、やっぱりその子とは違うみたいだね?」
「…いや、」
「ははっ、ごめん、意地悪かったね。別にいいんだ。自分の可愛さは自分が一番把握しているからね」
にっこりと、可愛らしく微笑む。
…成程、どう笑えば好まれるのか、熟知しているということか。やはり、ルフェとは全然違う。まあ顔は…似ているのだけれど…
「ーー総員、校舎へ戻れ!」
距離があっても良く通る主任教官の声が生徒達の耳に届く。
「ンだよ中止かよ~三年の観たかったなァ」
「コルガーお前それはイヤミだぞ!」
「そうだそうだ!今ごろ三年達はホッとしてるだろーな!」
「え~?そうかぁ?」
「ンなバケモンだらけの二年の後に試合やりたくねえっつーの」
「つーかジル、まだ顔色悪いぞ?大丈夫かー?」
「…ああ、大事無い」
ダラダラと、喋りながら戻るコルガーやジル達に続き、ルジも歩き始める。
後ろから腕を掴まれ、振り返りながら足を止める。
「…ルフェ、」
「何だディート、謝罪なら受け付けないが」
「……」
眉根を寄せ俯き、黙りこくるディート。
まさか、本当に謝るつもりだったとは…
「…すまない」
「だから、」
「俺は、…何かが、起こるかもしれないと、それだけ聞かされていた」
真剣な眼差しをルジに向ける。
「斯様な遣り方は間違っている。だから、」
「ディート、中途半端に開示するな。余計訳が分からなくなる。それにな、」
小さく息を吐く。
「私はお前が思う程、気にはしていない」
只、試合を邪魔されて腹が立っているだけだと言えば、ディートは信じられないのだろう、苦渋な顔をしている。
「…気になさるべきです、ルフェ殿。ただの矢ではなかったのでしょう?」
「そうだね、エディの言う通りだよルゥさん」
顔を顰めるエディソンと、毒矢を実際に手にしたフルウィウスが続けてルジに訴える。
あの矢は、訓練担当教官が持っていった。学校側で分析するのだろうか。それとも、軍部で行うのか。気になると言えば気になるが。
「何れ分かることだ。其れよりも他に気にすべき事がある。分かるか?」
疑問符を浮かべているような硬い表情の三人をルジが見遣る。
「昼飯が、肉か魚か、どちらなのか」
そう真顔で言えば、数秒の後、顔を歪めたウィーが珍しく腹を抱えて笑い、エディソンが顔を両手で覆って肩を震わせ、ディートは大袈裟な吐息を漏らして項垂れた。
ルジは三人に気付かれないよう背を向け、破顔一笑した。
ルゥさんは何だかんだ言ってお姉さんです。が、本気で肉か魚か毎食気にしています笑




