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幕開き

本日もう一話できれば…滝汗



「…ルフェ、腹が痛いのか?」



遠巻きに複数対一人で木剣を振り回しているコルガーを睨み付けているルジへ、気遣わし気に声を掛けたディート。



「…確かに昨夜も暴食したが違う。これは腹癒せだ」



小さく息を吐き出し、大会会場の方へ視線を移す。


まったく…此の一週間は溜め息ばかり付いている。

度重なる雑用と、自身の体調の所為で思うように練習することが出来なかった。最悪である。…まさか其れが狙いか?



「ルゥさん、ディート、おはよう」


「…おはようございます、ルフェ殿、ディート殿」



ルジとコルガーが振り返る。


ああ、おはようと私が挨拶すると、続けてディートも無表情でおはようと言った。

傍から見れば、可笑しな関係になったものだ。



「ルゥさんまだ体調良くないの?」



フルウィウスに問われたルジは、口角を上げて強い口調で言う。



「精々、油断していろ」



剣術大会は勝ち上がり方式であり、勝ち進めばウィーと当たるのだが…その分体力面に少し不安が残っている。ああ最悪だ。


喉を鳴らして笑うフルウィウス。



「本当に貴方は、負けず嫌いだね」



遠慮のなくなったウィーは、逆に可愛気があるのだ。不思議な男だ。


一方のエディソンは、眉間に皺を寄せている。



「エディソン、いつになく固いぞ」


「そんな、ことは…いえ、失礼いたしました」


「まあ、何かが起こるかもしれないと、私も思わない訳ではないが」



すっかりジル達と打ち解けているコルガーにもう一度視線を向ける。



「コルガーを見習え」


「…コルガー殿、ですか?」


「ああ。彼奴は、エディソンと同じく真面目な男だ」


「え、彼が?」



小首を傾げるフルウィウスに、コルガー以上に真面目な者を見たことがないと、そう言い切る。



「ああ。剣術に対しては真面目だ。悪く言えば馬鹿だ。勉学が嫌いな訳でも不得手な訳でもなく、何よりも剣術の事を考え鍛錬を優先したいと、何処までも真摯なのだ」



あの剣術馬鹿には一生敵わないと、力無く笑む。


目を丸くしたエディソンが恐る恐る口を開く。



「…敵わない、などと…ルフェ殿も真摯であると存じますが…」


「いや。私は諦めが早いのだ」


「えぇー、ルゥさんでそうならこの国の貴族達は緩いってことになるけど、ああそういえば」


先日、うちの本家の者が随分と無礼を働いたようだねと、呆れ顔で微笑むウィー。目が、全く笑っていない。

というか、そうか、あの者は伯爵家のお坊っちゃんだったのか。



「あの人の取り巻きが本家に告げ口したみたいでね?」


「ウィーは分家だったか」


「そう。あの人が嫡男。信じられないよね、って、聞こうと思っていたんだった。ルゥさん、どうしてあの人には説教してくれなかったの?」



エディにはしてくれたのにと、ウィーは純粋に知りたいといった表情を浮かべた。


エディソンはじっと私を見詰めている。



「説教のつもりはなかったが…まあ、見込みのない者には何を言っても響かないからな」


「……!!」


「…うわぁ、あの人に聞かせてあげたいよ!」



目を大きく開けたまま硬直したエディソンに、楽し気に笑うウィー。


そして、私達が話している間ずっと腕を組み目を閉じていたディートも、私の方を見ていた。



「…ディート?」



ディートは真顔を通り越し、迫力のある顔になっている。



「…分かったかもしれない」


「…何の話だ」


「教官長殿の意図だ。何故我々が駆り出されたのかーー」



ーー大会開始の号音が鳴り響く。



待機していた生徒達が一斉に動き出し、整列する。


異様な光景だと思うのは、ニ、三学年の生徒総員が一堂に会しているからだろう。



「生徒諸君、今日は晴れの舞台である。鍛錬の成果を存分に発揮してくれたまえ」



相変わらず短い御言葉を述べられた学校長。まあ、二度しか御姿を拝見していないのだが。


如何にも退役将校であるといった風格の学校長が平民出身であり予科からの入学者であったと、ウィーから聞いた時は正直驚いた。

此の国も身分平等を体現できる環境下であるということなのだ。



それにしても、先程のディートが気になって仕方ない。

彼は本当に知らなかったのだろうか。それから、教官長”殿”と無意識に言ったのか、勘付かせる為だったのか。


嗚呼…駄目だ、雑念が多過ぎる。他人の事を言えた義理ではない。



主任教官の号令を耳にし、両の頬を叩いて気を引き締めた。



ちなみに…予科は一般教養なので貴族は飛び級しています。そしてコルガーは出来る奴なのでもちろんパスしてます!(拍手)

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