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幼馴染の願い

コルガー視点です。

他者視点はコルガーをトップバッターにしたいと思っていました!!



『おう、頼まれた頼まれた!よろしくなコルガー。実はずっと話してみたかったんだ』


そう言って朗らかに笑う男は、ディートよりは低いが上背があって、肌はルゥと同じ小麦色で、黒髪。予科生からの生徒だから多分歳は十八。おまけに名前はジルときた。


なるほどなと、思った。


やけに親し気なルゥの態度のワケが分かればイライラが消え失せ、代わりに分かりやすいルゥに笑いが漏れた。




「おいジル!コルガーの奴、やり過ぎて頭オカシくなってんぞ!」


「ははっ、コルガーは真面目だからなあ!よし、お前らも息抜きするか!」


「ヨッシャ!」



思い出し笑いしてただけなんだが、まあ、そろそろ身体が鈍ってきた頃合いか。


コルガーは鉛筆を転がし、立ち上がる。



「よーし、テメェらまとめて掛かって来いっ!」


「ハッ!今日こそは一本取るからなコルガー!」



投げられた木剣を受け取る。


悪くはないと、思っている自分に、ルゥのことを言えたもんじゃないなと苦笑する。



ジルはルゥの言う通り、教えるのが上手かった。まあ、そもそも平民で五位ってのが驚異的だ。ジル以下の貴族連中はさぞかし悔しいだろうな。


剣の腕も、筋がいい。年上らしく面倒見がよくて、仲間達に慕われてる。

まったく、ルゥと似てる所が多過ぎないか?



「ーーコルガー、飯だ飯」



噂をすれば、なんとやら。

不機嫌な顔でやって来たルゥに頬が緩む。



「ヒデェ顔だなっ…!!当たンなよおいっ!!」


「…五月蝿い、早くしろ」



誰かから木剣を奪ったのか、それをコルガーの眼前に突き出したルジは、反応良く避けたコルガーに舌打ちをする。



「おーおー、気が立ってるなルフェ」


「ああ、ジル。……済まない、少し身を隠す」



人一倍聡いルゥに遅れて気付く。…誰か来るな。何人か。

茂みに入るルゥを横目に身構える。



「ーーこれはこれは、平民の皆さんお揃いで」



いかにもな貴族の男が、三人、ニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべる。



「おや?新しいお仲間かい?」


「確か…そうだ、御令息様の腰巾着」


「ああ、例の捨て子か」



テメェらの方が腰巾着だろと言いたくなるのを抑える。一応、上級生なんだよなあ面倒臭ぇ。

努めて冷静な顔と声を作る。



「ええ、その通りです。私は捨て子です」



認めないとでも思ったのか、卑しい表情のまま固まっている。



「然し、そのお陰で領主様に拾っていただき、士官学校に入学することが叶いました。ですから、」


ニッコリと全力の笑顔で言い放つ。


「命を懸けて日々鍛錬しています。私には、後ろ盾のぬるま湯に浸かるヒマがありませんので」


「…ッ貴様!!」


胸倉を掴まれる。

ルゥの動く気配がする。


「おっと、暴行はご法度では?」


「黙れ捨て子がッ!!」


「ーーコルガー、何事だ」



入ってくる間が絶妙だな。



「…ごっ、御令息様っ!此奴が無礼を働いたのだ!!しっかり躾けていただきたい!」



ルゥを目にした瞬間手を離し、歪んだ顔で吠える貴族サマに笑いが込み上げる。



「左様でございましたか。では、我々の推薦人、第一騎士団長殿に申し伝えます」


「…第一、騎士団長殿……?」


「ええ。お名前を伺っても?」


「いっ、いやいいこの度は許す!ではッ!!」



踵を返す貴族サマに、とうとう吹き出した。



「クッ…!!結局俺も後ろ盾頼りじゃねぇかっ…!!」


「まあそう言うなコルガー。あのような者には其れが最も効くのだ」



深い溜め息を吐いたルジに、声を潜めていたジル達が代わる代わる話し掛ける。



「ルフェ、お前…やっぱスゲェのなっ!」


「あーあ、この国の貴族サマもルフェみたいだったらいーのになァ?」


「いや、私は貴族ではないが?」


「ハ?!そうなのか?!」


「私の国にはもう貴族はいない」



そんな国があるのか、なんでいないのかと、驚く面々。



「いなくなった理由は、貴族の責務を果たしたからだ」


「貴族のセキム…?」


「貴族の特権…貴族が力を持つその代わりに、命を懸けて民のために戦うことだ」



長年の戦で多くの貴族が命を散らしたのだと、それが貴族のあるべき姿なのだと、そう語るルゥの話を信じられないといった顔で聞き入るジル達。



「まあ、この国の貴族がどうなのかは知らないが…我が国では、剣を持つ者は皆身分関係なく、」


ルジはコルガーに一瞬目を向け、


「その精神と誇りを胸に抱き、日々鍛錬をしている」



ジル達に真剣な眼差しを向けた。



「……やっぱスッゲェ…!」


「いや、お前達も我々と同じだろう?あの者達にはない気概があるから本科に進むことができたのだと私は思っている」


「うわ…っ!やめてくれルフェ、泣けてくるじゃねぇか…っ!」



目を輝かせる者、涙ぐむ者。

ルゥの言葉はいつも、心の深い所に届く。いや、むしろ、突き刺さる。




ーーーこれだから、願わずにはいられないんだ。




どうか、どうか彼女を、自分の手で幸せにさせてほしいと。


そんな浅ましい己の願望を、嘲笑いながら掻き消した。



(コルガーは私の最推しです)

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