「昔の顔を見せるなつってんだろ――礼儀正しい骨が礼をしませんでした」
昔の顔が来ました。
ガルルが礼をしませんでした。
感謝されました。困っています。
今日は、昔の顔が来ました。ですが、私の名前は出しません。
入口には第一罠として落下罠、奥には第二罠として記憶誘導用の幻影罠を置いています。
旧勇者パーティ関係者が来る可能性を、私は少しだけ考えていました。
今日の罠には自信があります。
八十二回目の自信です。
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ダンジョン配信中(登録者:166)
女神様「今日のマスターは、コートの左端を見ていますね」
剣士「左端?」
査定員「メモが少ない日は危険です」
杖つかい「コメント欄が急に静かになるやつ」
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来たのは、古い鎧を着た男でした。
「この辺りに、昔の参謀に似たDMがいると聞いた」
「人違いだと思います」
第一罠が開きました。床が抜け、男の足元が落ちます。普通なら落ちる角度でした。
けれど男は、片足だけで縁に残りました。
「この落とし方......昔、見たことがある」
「見ないでください」
「勇者パーティに、ハルカという参謀がいた。あの人の作戦は、いつもこうだった」
配信コメントが、一瞬止まりました。
私は第二罠を起動します。壁から薄い光が流れ、通路に幻影の足場が浮かびました。
男はそれを見て、苦笑しました。
「懐かしいな。あの人は、いつも安全そうな道を一つだけ残していた」
「安全ではありません。誘導です」
「そうだった。誘導だった」
その声が、妙にまっすぐでした。だから私は、コートの端を見ませんでした。見れば、そこにある名前の一部を確認してしまう気がしたからです。
奥からガルルが出てきました。
いつもなら、礼をします。
ガルルは、礼をしませんでした。
「......ガルル」
ガルルは、男と私の間に立ちます。
男は少し驚いたように笑いました。
「礼儀正しい骨だと聞いていたが、今日は厳しいな」
「......今日は、そういう日みたいです」
男は幻影罠の足場を踏み、きちんと落ちました。撃退判定。光の中で、男は言いました。
「もし、あの人を見かけたら伝えてくれ。俺は、今でも感謝していると」
「感謝は、いただかなくて大丈夫です」
男は帰りました。ガルルは、まだ礼をしません。
私はコートに小さく書きました。
【ガルル:礼を保留。理由不明。確認要】
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ダンジョン配信中(登録者:166)
剣士「今の骨、礼しなかった?」
杖つかい「初めて見た」
女神様「今日は、マスターの後ろにいてください」
罠職人見習い「女神様も静かなんですけど!?」
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シア様のニヤニヤは、最初からありませんでした。私は気づいていないことにしました。
改善の余地があります。
昔の顔を持ち込むなつってんだろ。探している人は、ここにいません。いないって言ってんだろうがあああああああああ!!
【今回の登場キャラクター紹介】
・ハルカ:匿名DM。旧パーティの話題でも名乗らない。
・シアラ:配信上では名前を出さず、静かに見ている女神様。
・旧勇者パーティの下位メンバー:昔の参謀を探してきた男。
・ガルル:初めて礼をしなかった。
【今回のズレパターン解説】
誤解型。落下罠と幻影罠は機能したが、英雄が昔の作戦として受け取った。
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【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :4860位 → 4730位
配信視聴者数 :161名 → 166名
本日の用途 :人探し相談所(非対応)
コートのメモ(今話) :「ガルル:礼を保留。昔の顔:持ち込み禁止」
【モンスター管理状況】
ガルル:稼働率0%(礼をしなかった)
スライムA:足元で停止
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