「モンスターを解析するな」
感知糸を改良しました。
スライムが連携要員にされました。
研究会場扱いです。
* * *
今日も感謝されてしまいました。
今回の罠は、改良版の感知糸です。
前回ノノカさんに見抜かれた反省から、糸の間隔をずらし、落下床との連動を細かくしました。第二通路にはスライムAを新配置しています。
今日の罠には自信があります。改良版です。
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女神様「見つけてもらえるといいですね❤」
名無しの罠「師匠回?」
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「師匠! 今日も勉強しに来ました!!」
「弟子はとっていません」
ノノカさんは、入口で手帳を三冊構えていました。
装備より筆記具のほうが多い英雄です。......英雄とは。
第一通路に入った瞬間、ノノカさんの目が光りました。
「この感知糸の間隔! 前回より〇・七歩ぶん狭い!!」
「……改良しました」
「やっぱり! 英雄の歩幅を誘導して、落下床に自然に足を置かせる設計ですね!」
「おおむね正しいです」
「師匠に褒められた!!」
「褒めていません。事実確認です」
ノノカさんは、わざとらしく糸をまたぎました。
その姿勢が低すぎて、第二通路の落下床が先に起動します。
床が開きました。
ノノカさんが落ちる直前、スライムAが床の縁からぷるんと跳ねました。
クッションになりました。
「……スライムが、クッションになっています」
「すごい!! 落下衝撃を吸収しつつ、英雄を次の罠へ誘導するモンスター配置!!」
「素材の都合です」
「素材の都合に見せかけた高度な偽装!!」
「ただの素材の都合です」
スライムAが、ぷるぷるしました。
うん、うん、と同意しているように見えました。
「スライムもそうだ、師匠すごいって言ってますよ!!」
「……ただのスライムです。困ります」
ノノカさんは手帳にすごい速度で書き込み始めました。シュババババババババババババババババババババババババババ――――――。
「スライム×落下床。罠と魔物の有機的連携。師匠、これ発表していいですか!?」
「しないでください」
「では研究だけ!」
「研究もしないでください」
結局、ノノカさんはスライムAを三回観察し、床の開閉音を五回記録し、満足げな顔で帰路につきました。
「師匠、今日もありがとうございました! 次は私もスライム連携を試します!」
「試さないでください。危険です。あと師匠ではありません」
―――
処理後、私はコートに書きました。
【スライムA×落下床:意図せず連携確認】
【費用対効果:計算不能】
【でも計算した】
最後の一行は、小さく消しました。
少し読めます。
シア様が、にこにこと覗き込んできます。
「ハルカ、楽しそうですね〜」
「研究されて困っています」
「そうですか〜」
シア様のニヤニヤが、いつもより少し長く続きました。
私は計算に集中していたので、やっぱり気づきません。
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女神様「弟子さん、熱心ですね❤」
名無しの罠「師匠って呼ばれてる」
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改善の余地があります。
研究するなつってんだろ。スライムは設計に含まれていませんでした。
あと弟子はとってねえよ!!
【今回の登場キャラクター紹介】
・ノノカ:一方的にハルカを師匠認定している罠職人後輩。
・スライムA:クッション機能が発覚。本人はたぶん何も考えていない。
【今回のズレパターン解説】
誤解型です。罠とモンスターの偶然の動きを、ノノカが高度な設計として解析しました。
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【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :65441位 → 65388位
配信視聴者数 :10名 → 11名
本日の用途 :研究会場(非公認)
コートのメモ(今話) :「スライムA×落下床:意図せず連携確認 費用対効果:計算不能」
【モンスター管理状況】
スライムA(暫定識別番号):在籍3日目 稼働率不明 今日の成果:クッション機能・測定中
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