「集めるな」
廃材を集められました。
市場価値と芸術価値が衝突しました。
困っています。
今日も感謝されてしまいました。
今日の仕掛けは、圧縮罠です。
落ちた英雄を、左右の壁で押し戻す。痛いですが、リスポーン前提なら問題ありません。
たぶん。
今日の罠には自信があります。
═══════════════════════════
ダンジョン配信中(登録者:1)
女神様「今日は何が残るんでしょうね❤」
═══════════════════════════
最初に来たのはノノカさんでした。
「師匠! 今日は作品を集めに来ました!!」
「作品はありません」
「師匠の失敗罠から出る副産物です!!」
「副産物も作品ではありません」
その直後、反対側の通路からタルガさんが来ました。
素材業者です。
失敗した罠の破片を、なぜか市場に流す人です。
「本日は副産物の仕入れに参りました」
「仕入れないでください」
ノノカさんが、ぴたりと止まりました。
「この副産物、私が先に目をつけていました!」
「市場価値の話です」
「芸術価値の話です!」
「どちらも困ります」
二人が、罠の前で向かい合いました。
英雄同士の戦闘ではありません。
廃材の所有権争いです。
圧縮罠が起動しました。
本来なら、侵入者を壁で押し戻す予定でした。
しかし三パーセントのズレにより、壁は二人を押さず、床に散らばっていた古い石材だけをきゅっと圧縮しました。
小さな立方体ができました。
妙にきれいでした。
「すごい!! 師匠の圧縮作品です!!」
「高密度石材ですね。こりゃ売れます」
「芸術です!」
「資材です」
「作品です!」
「商品です」
「......廃材です」
最後だけ私です。
ノノカさんは立方体を両手で包みました。
「この均一な歪み! 意図的ですよね!すごすぎる!!」
「違います」
タルガさんは指で叩きました。
「音が良い。建材にも置物にも使えます」
「使わないでください」
「師匠、値段はいくらですか!」
「売りません」
「では私が買い取ります」
「買い取らないでください」
「共同保管しましょう!」
「共同保管も作業もしないでください」
会話の全方向が、罠より圧縮されています。
シア様は段差に座り、足をぶらぶらさせていました。
「人気ですね〜、廃材」
「人気ではありません」
「ハルカの作品ですからね〜」
「作品ではありません」
「気のせいじゃないですか〜?」
「その返しで逃げないでください」
シアラのニヤニヤが、少し薄かった。ハルカは気づかなかった。
最終的に、立方体は三分割されました。
ノノカさんが観察用。
タルガさんが市場調査用。
私は記録用。
つまり、全部持っていかれました。
「ありがとうございます、師匠!」
「有益な取引でした」
「感謝はいただかなくて大丈夫です」
【撃退成功 / 副産物:圧縮石材 / 収益見込み:あり】
コートに書きました。
【圧縮罠:英雄を押せバカか】
【廃材:芸術価値? 市場価値?】
【共同作業:禁止】
【でも収益:あり】
改善の余地があります。
集めるなつってんだろ。廃材は廃材です。芸術ではありません。
【今回の登場キャラクター紹介】
・ノノカ:師匠の作品だと思っている見習い罠師。師匠なんて存在しません。
・タルガ:副産物を市場価値で見る素材業者。
・ハルカ:どちらも困っています。
【今回のズレパターン解説】
超克型。撃退より先に副産物の価値が発生し、英雄たちが罠を“成果物”として乗り越えました。
═══════════════════════════
【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :65518位 → 65510位
配信視聴者数 :7名 → 8名
本日の用途 :廃材展示即売会
コートのメモ(今話) :「共同作業:禁止/廃材:芸術価値と市場価値が衝突/でも収益あり」
═══════════════════════════
少しでも楽しんでいただけたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!




