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「圏外じゃなくなるな」

ランキングがとうとう圏外ではなくなりました。

順位は、64891位でした。

感謝されてしまいました。

 今日も感謝されてしまいました。


 罠の話ではありません。

 順位(じゅんい)の話です。

 正直、罠より扱いに困ります。


 今日の罠には自信があります。


═══════════════════════════

ダンジョン配信中(登録者:1)

女神様「通知が来ましたね❤」

═══════════════════════════


 朝、入口の魔道水晶(まどうすいしょう)が強く光りました。

 来訪者の反応です。


 現れたのは、エルマさんでした。

 ギルド公認査定員。いつも手帳を持っていて、いつも淡々としていて、最近少し胃を押さえる人です。


「緊急通知により来訪しました」

「緊急ですか」

「はい。このダンジョン、ランキングに入りました」

「……入った?」


 私はチョークを落としました。


圏外(けんがい)表示が消えました」

「……何位ですか」

「64891位です」

「……」


 沈黙しました。


 高いのか低いのか、判断が難しいです。

 ただ、65535位よりは上です。


「記念すべき節目ふしめです」

「……64891位がですか?」

「はい」

「……改善の余地があります」


 手が、少し震えていました。

 たぶんチョークの粉のせいです。

 そういうことにします。


 エルマさんは手帳を開きました。


「上昇理由は、撃退成功数、英雄満足度、再訪率、副産物収益、視聴維持率の複合です」

「視聴維持率」

「女神様が毎回最後まで見ています」

「それは一名です」

「一名でも維持率は百パーセントです」


 数字の暴力です。


 そのとき、今日の回避罠(かいひトラップ)が起動しました。

 細い床板が左右にずれ、侵入者の足を誘導する予定でした。


 ですが、エルマさんは当然のように足を止めました。

 罠を見抜き、手帳に記録します。


「床板のズレ、前回より改善されています」

「ありがとうございます」

「ただし、改善されたことで新しい問題が見えやすくなりました」

「それは改善でしょうか」

「改善です」

「問題が増えています」

「良い傾向です」


 良くないです。


「この調子なら、次回以降も順位変動が見込まれます」

「……見込まないでください」

「ギルドとしては注目対象です」

「注目しないでください」


 エルマさんは、淡々と頭を下げました。


「正式なランキング入り、おめでとうございます」

「感謝はいただかなくて大丈夫です」

「これは感謝ではなく通知です」

「通知も困ります」


 シア様は段差で頬杖をついていました。


「よかったですね〜」

「よかったのでしょうか」

「64891位ですよ〜」

「数字だけ言われても困ります」

「ふふっ」


 シアラのニヤニヤが、少し薄かった。ハルカは気づかなかった。


 私は、震える手でコートに書きました。


【65535位ではない】

【64891位】

【圏外表示:消失】

【喜ぶべきか:保留】

【改善の余地があります】


 そして、もう一度だけ、順位を見ました。


 64891位。


 低いです。

 でも、ここに数字があります。


 改善の余地があります。


 感謝するなつってんだろ。でも……64891位になりました。


【今回の登場キャラクター紹介】

・エルマ:ギルド公認査定員。ランキング通知を持ってきました。

・ハルカ:順位を見て手が震えました。粉のせいです。

・シアラ:最初から最後まで見ている女神様。


【今回のズレパターン解説】

回避型。罠は見抜かれましたが、今回は順位そのものが一番のズレでした。


═══════════════════════════

【今話のダンジョンデータ】

 ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :65510位 → 64891位

 配信視聴者数      :8名 → 8名

 本日の用途       :ランキング通知所

 コートのメモ(今話)  :「64891位/圏外表示消失/喜ぶべきか保留」

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