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「測るな」

測定されました。

測るたびに、首をかしげられました。

感謝されてしまいました。

 今日も感謝されてしまいました。


 来たのは、前にも来たベルネさんです。

 別のダンジョンを管理している、正統派の同業者(どうぎょうしゃ)。前回は批評して帰りました。

 今回は、測定器(そくていき)を持っています。


 今日の罠には自信があります。


═══════════════════════════

ダンジョン配信中(登録者:1)

女神様「測られるんですね❤」

═══════════════════════════


「正式に測るわ」


 ベルネさんは、入口でそう言いました。


「何をですか」

「全部よ」

「全部は困ります」

「困っても測るわ」


 手には銀色の魔導測定器(まどうそくていき)。腰には巻き尺。背中には板状の記録帳。

 完全に、攻略者ではなく出入り業者です。


「あなたのダンジョン、納得いかないのよ」

「私も納得していません」

「そこで同意しないで」


 ベルネさんは通路の幅を測りました。


「二・三メートル。中途半端ね」

「石材の都合です」

「なのに英雄の肩幅回避に効いてる。意味がわからない」


 次に、感知糸(センサーワイヤー)の高さを測りました。


「低い。低すぎる。普通なら誤作動する」

「しています」

「してるのに機能してる。意味がわからない」


 最後に、落下床の角度を測りました。


「何この傾斜」

「修理中です」

「修理中なのに誘導になってるじゃない」

「なっていますか」

「なってるわよ! 腹立つわね!」


 その瞬間、今日の罠が起動しました。

 床が開き、ベルネさんの足元だけが沈みます。


 落ちる予定でした。


 しかし、シア様のスキルが三パーセントだけズレたせいで、床は完全には落ちませんでした。

 代わりに、ベルネさんの測定器だけが、すとん、と下の穴へ落ちました。


「測定器だけ!?」

「すみません」

「謝るところそこじゃないわ!」


 穴の底から、測定器がぴこん、と音を立てました。


【深度:安全基準内】


 ベルネさんの顔が、固まりました。


「……安全基準内?」

「そうみたいです」

「なんでよ!!」

「私にもわかりません」

「意味がわからない!!」


 前回より一段、声が大きくなっています。


 シア様は壁際で腕を組み、いつものように笑っていました。


「邪魔ですね〜、測定器」

「あなたが一番邪魔なのよ」

「そうですか〜」


 ベルネさんが、一歩下がりました。

 ぞわっとした顔でした。


「……今の、何?」

「気のせいじゃないですか〜?」

「気のせいじゃないわよ。圧があったわよ」


 シアラのニヤニヤが、少し薄かった。ハルカは気づかなかった。


 ベルネさんは測定器を回収し、記録帳を閉じました。


「今日は帰るわ」

「そうしてください」

「でも次も測る。改善点を出すために」

「出さなくて大丈夫です」

「感謝しなさい。普通なら有料よ」

「感謝はいただかなくて大丈夫です」

「私が言ってもらう側よ!!」


【撃退成功 / 測定器落下:一件 / 改善点:増加】


 コートに書きます。


【ベルネ:測定値は正しい】

【解釈:正しくない】

【測定器落下対策:不要。たぶん】


 改善の余地があります。


 感謝するなつってんだろ。測定値は改善案ではありません。

【今回の登場キャラクター紹介】

・ハルカ:測られる側。納得はしていません。

・シアラ:邪魔と言われても認めない女神様。

・ベルネ:ライバルダンジョンマスター(だんじょんますたー)。ツッコミが一段強くなりました。


【今回のズレパターン解説】

観光型。攻略ではなく測定目的で来られ、測るほど謎が深まりました。


═══════════════════════════

【今話のダンジョンデータ】

 ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :65524位 → 65518位

 配信視聴者数      :7名 → 7名

 本日の用途       :測定会場

 コートのメモ(今話)  :「測定値は正しい/解釈は困る/測定器落下対策:保留」

═══════════════════════════


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