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「料理するなつってんだろ」

料理を始められました。

火炎罠の火力が、ちょうどよかったそうです。

感謝されてしまいました。

 今日も感謝されてしまいました。


 今日の仕掛けは、火炎罠(かえんトラップ)です。

 通路に入った英雄を、左右の壁から同時に焼き払う構造。

 設計図の上では、完璧でした。


 今日の罠には自信があります。


═══════════════════════════

ダンジョン配信中(視聴者:1)

女神様「今日はあたたかそうですね❤」

═══════════════════════════


 来訪したのは、白い調理帽(ちょうりぼう)をかぶった男性でした。

 腰には剣。

 背には鍋。

 手には肉。


 英雄の装備として、最後だけおかしいです。肉?


「失礼します! こちらのダンジョン、火力が良いと聞いて来ました!」

「火力を売りにしていません(誰に聞いたんですか?)」

「こちら、持ち込み食材です!」

「持ち込まないでください」


 料理人英雄さんは、私の制止を聞かず、通路の中央に立ちました。

 その足が感知糸(センサーワイヤー)に触れます。


 壁の魔法炉(まほうろ)が赤く光りました。

 炎が噴き出します。


 ですが、シア様からいただいた火力増幅(ファイア・ブースト)スキルが、今日も三パーセントほどズレました。


 炎は、英雄を焼くには弱く。

 肉を焼くには、あまりにも最適でした。


 じゅう、と音がしました。


「すばらしい!!」

「すばらしくありません」

「この遠赤外線めいた熱の回り方! 薪より安定しています!」

「撃退用です」

「塩を振ります!」

「振らないでください」


 料理人英雄さんは、火炎罠の前に小さな鉄板を置きました。

 置けてしまいました。

 構造上、置けてしまう余白がありました。


 私の設計ミスです。


「前菜、焼き根菜の魔道塩(まどうじお)仕立て!」

「前菜を始めないでください」

「主菜、炎洞窟ファイアケーブ焼き肉!」

「......なんかかっこよさげな名前を付けないでください」

「締めにスープもいけますね!」

「いけません」


 召喚費用はかかっていません。

 しかし、撃退費用も回収できていません。

 代わりに、通路が食堂の匂いになりました。


 経理上、分類不能です。


 料理人英雄クッキングヒーローさんは皿を一枚、私に差し出しました。


「管理人さんもどうぞ!」

「いただきません」

「この火加減を作った方に食べてほしいんです」

「作ったのは罠です」

「つまり、料理する罠ですか!」

「違います」


 後方で、シア様が少し前のめりになりました。


「今日は豪華ですね〜❤」

「豪華ではありません」

「ハルカ、食べないんですか〜?」

「食べません」

「ふふっ」


 シアラのニヤニヤが、少し薄かった。ハルカは気づかなかった。


 料理人英雄さんは、最後に鍋を抱えました。


「最高の厨房でした! また仕込みに来ます!」

「仕込みに来ないでください、あと厨房ではありませんから」

「この出会いに感謝します!」

「感謝はいただかなくて大丈夫です」


【撃退判定:保留 / 食材消費:あり / 英雄満足度:高】


 私はコートの端に書きました。


【火炎罠:火力三パーセント低下】

【焼き加減:最適】

【なぜ!!】

【換気口:増設要】


 改善の余地があります。


 感謝するなつってんだろ。ダンジョンは厨房ではありません。



【今回の登場キャラクター紹介】

・ハルカ:罠を作っています。厨房ではありません。

・シアラ:女神様。食べるかどうかは見ていました。

・料理人英雄:火炎罠を調理火力として評価した人。


【今回のズレパターン解説】

活用型。火炎罠が撃退ではなく調理に活用されました。


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【今話のダンジョンデータ】

 ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :65527位 → 65524位

 配信視聴者数      :6名 → 7名

 本日の用途       :厨房

 コートのメモ(今話)  :「火炎罠:焼き加減最適/換気口増設要/厨房化禁止」

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