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第十三話 ホイールワックスの初体験とガラス撥水の復活

前回の休みから翌日まで降り続いた雨は、それが嘘のように綺麗に晴れていた。


窓から差し込む光は、彼の気分を高揚させる。予報も、休みを含め数日先まで雨の気配はない。


今日こそは、先週のドライブで気づいたフロントガラスの性能低下を応急的にリフレッシュし、さらに楽しみにしていたホイールワックスを初施工する日だ。


彼はガレージのシャッターを開け、愛車を外に出した。


ホースを伸ばし、バケツに水を張り、道具の配置を終える。一連の準備動作を終えると、彼はいつもの手順でプレウォッシュからスタートした。


洗車を終え、ガラスを拭き上げる頃には、撥水を復活させることと、次に控えるホイールワックスへの期待感から、これまでのフラストレーションは完全に消えていた。


彼は時間を有効に使うため、今日の作業を午前中という限られた時間で完了させることを目標とした。


彼のフロントガラスには、厳しい暑さが終わり、ガラス面の施工がしやすくなった九月頃に施工した撥水コーティングが残っている。


まだ半年は経過していないが、先週のドライブでわずかな性能低下に気づいたことが、彼にリフレッシュを促した。


彼はまず、ルーティンの一部であるガラスクリーナーでの拭き上げを終え、撥水層を完全にリセットすることなく、表面を極力綺麗な状態にした。


通常のガラスクリーナーで綺麗に拭き上げたところで、今度は撥水機能を追加されたガラスクリーナーを施工し、弱った撥水層を簡易的に復活させていく。


年明けのしっかり時間が取れる時に、古い層を完全にリセットし、新たに施工し直す予定でいる。だから今回は、あくまで応急的な性能回復だった。


彼はその応急処置によって、失われかけていた撥水の鋭さが戻ったことを確認し、静かに頷いた。


撥水コーティングには定着時間が必要ではあったが、彼はホイールワックスへの期待感を抑えきれなかった。


手早くガラスの作業を終え、施工しやすいよう、すぐに愛車をガレージへと入れた。


ガレージの照明の下、彼は本日のお楽しみであるホイール専用ワックスの施工へと移る。


彼は、ボディに使用しているものと同じメーカーのホイール専用ワックスを準備した。


シルバーのホイールは、彼にとって愛車の「足元」である。その足元とボディの艶を、同じ哲学を持つもので統一する一体感は、彼の満足感を飛躍的に高める要素だった。


洗車時の洗浄だけでは、ワックスの性能を引き出せない。


彼はまず、使い慣れた油分除去剤で一本一本しっかりと仕上げた。さらに、IPA――イソプロピルアルコールを使い、残留物さえもできる限り拭き取っていく。


そうして、ワックスの性能をしっかり確認できる「素の状態」を完成させた。


そして、蓋を開ける。


ふわりと立ち上る甘く自然な香りが、ガレージに広がった。


彼はスポンジを使わず、ボディ用のワックスと同様に指先にワックスを取る。


今回は細かい部分を施工するため、手のひらではなく指先で溶かしていく。指の間に入る溶け切らないワックスを指先に戻しつつ、しっかりと溶かし切ってから施工へ移った。


スポーク一本一本に、丁寧に塗り伸ばしていく。


細かい部分までしっかり塗り広げ、全体に塗り終わる頃には、ホイールに綺麗なウロコ模様が出来上がっていた。


初めての特殊なワックスということもあり、彼は乾燥して白くなっていく様子をそのまま眺めていた。


新しいワックスが愛車に定着していく時間を、ゆっくりと味わう。


たっぷりと定着時間を取った後、頃合いを見て拭き取っていく。


拭き取り終えると次のホイールに移り、同じように塗り、乾燥を待ち、拭き取る。


その手順を繰り返しながら、彼はこの特殊なワックスの初施工を最大限に楽しんでいた。


そして、すべての施工を終えた彼は、その仕上がりを前に言葉を失った。


これまで彼は、艶特化の簡易コーティングや、艶と撥水のバランスが取れた製品など、数多くのものを試してきた。


しかし、専用品。

しかもそれがワックスであることによって生まれた、まるで内側から光が漏れ出すような、深みのある艶と輝き。


その仕上がりに、彼は思わず息をのんだ。


言葉は出なかった。

静かに頷くことすらできなかった。


ただ、口元が自然と緩み、口角が上がっていく。


彼は深い笑みを浮かべ、思わず口元を手で覆い隠した。


その笑みは、かつて高耐久ワックスを初施工した時以来の衝撃によるものだった。


しかし、覆い隠された口元からは、押し殺したような低い笑い声が漏れている。


静かなガレージに、その声だけが小さく響いた。


彼の心の中では、「これだ」という揺るぎない確信が、鮮烈に焼き付いていた。

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