表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放聖女は、ハズレスキル「トリマー」でもふもふ達と楽しく暮らします!  作者: 野生のイエネコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/33

31

 山の向こう側は、斜面が禿山のように地面が露出した状態になっており、そこには巨大な魔法陣が描かれていた。

 そしてその中心には……力なく邪竜が横たわっていた。


『グラニト……』


 ゼフィールが複雑そうな声音で呟く。


「し、死んでるの?」

『ああ、そうだな。あれでは息をしてはいまい』


 あれほど私たちの前に立ちはだかっていた邪竜は、あっさりとその息を引き取っていた。


「どうして……」

『あれは生贄の魔法陣だ。マグヌスがやったことだろうな』

「そんな……」


 その時、ぶわりと黒いもやが禿山とかした山の斜面から噴き出した。


「なになになに、怖い……」

『マグヌスが、邪竜を生贄にして力を得たのだろう。これから厳しい戦いになるぞ、覚悟せよ、聖女あやめ』


 ゼフィールは厳しい声音で私に伝えてきた。


 私たちは、禿山の魔法陣中央にある邪竜の遺体の横に降り立った。穢れの気配を頼りに、そこからマグヌスを探していく。

 私はいざという時に攻撃を避けられるよう、大きくなったルナールの背中に乗って移動していた。


『あやめ、少し速く駆けますよ』

「うん、大丈夫」


 ことは急を要する。早くなると掴まっているのが少し辛いけれど、それも我慢してルナールにしがみついていた。


 そうして、山の奥深くに入ったところ。一軒の山小屋がそこにはあった。そこから、ドス黒い靄が吹き出している。


「マグヌスだわ」

『ここから先は危険だ。あやめはここでルナールと待っていろ。我が山小屋を壊す』


 ゼフィールはそういうと、山小屋の方へ飛んでいき、風のブレスを山小屋へと仕掛けた。莫大な力に押し潰されるように、山小屋が吹き飛ぶ。

 しかし、その中から現れた人影は、何も動じていないように悠然と歩いて出てきた。


「ふん、神獣か。厄介な。だが、邪竜を生贄に力を手にした私の敵ではないな」

「あなたがマグヌス……。ルナールの森を滅ぼし、亜獣人たちを奴隷にしてた男ね!」


 私は、マグヌスを睨みつけた。こいつが、あの邪悪な隷属魔法で亜獣人たちの子供達を操り、犯罪行為や戦争に駆り立てていた犯人なのだ。

 それを思うと、到底許せそうになかった。


 きっとこの戦いで、勝てればこの男は死ぬ。私は、人殺しに加担する。


 でも、それでも私は、一歩も引くつもりがなかった。

 

 捕まった亜獣人のシャドウ君を、そして彼を見つめていたライカンさんの瞳を思い出す。


 決して許してはいけない邪悪が、目の前にはあるのだ。


『あやめ、行くぞ』

「うん。ゼフィール!」


 そうして、ゼフィールは再びマグヌスに向けてブレスを放った。それをマグヌスは、高く跳躍して避ける。その動きは、到底人間のそれとは思えなかった。


 上空へと逃げたマグヌスを、木を駆け上がって蹴ったルナールが追撃する。

 それを避けたマグヌスに対して、ゼフィールの尾が襲いかかる。


 その尾に向かって、マグヌスは手をかざすと、黒い球型の魔法を放った。黒い靄の塊は、ゼフィールの尾に絡みつくと、その毛をジュワリと焼き、その皮膚を露出させる。


「ゼフィール!」


 血が滲んでいるその皮膚を見て、私は思わず悲鳴を上げる。


 少しでも穢れの影響を解消しようと思い、咄嗟にその皮膚のあたりに泡召喚を行う。それによってゼフィールの尾に絡みついていた黒い靄は四散した。


『感謝する、あやめ!』


 尾を振って僅かに残った靄を振り払ったゼフィールは、改めてマグヌスに踊りかかる。


 爪撃がマグヌスの頬を掠り、赤い線が空中に描かれる。しかし、傷は浅い。


 ゼフィールの攻撃により体勢を崩したマグヌスへルナールが追撃をかけ、右腕に噛み付く。だが、黒い靄がバリアのようにマグヌスを覆い、むしろ噛みついたルナールが「ギャン」と悲鳴を上げた。

 

「ゼフィール……! ルナール……!」


 攻めあぐねている。それどころか、徐々にマグヌスが押しているように見えた。私は、邪竜を追い払った時のことを思い出し、マグヌスの体を覆うように泡召喚を行う。

 しかしそれも、噴き出した黒い靄に振り払われてしまう。


 黒い靄は再現なく吹き出し続け、ついには邪竜の形を取った。マグヌスの腕の動きに合わせて、靄でできた邪竜が縦横無尽に動き回る。

 その邪竜に触れた瞬間、ゼフィールの毛皮が焼け爛れていく。


「もうダメ! 逃げよう、ゼフィール、ルナール!」


 焼けても焼けても、ゼフィールもルナールも一歩も引かない。確かにマグヌスの体に傷はつけられている。けれど、それ以上にゼフィールたちが傷ついている。


『ダメだ、あやめ。こやつは野放しにはできない。ことは世界の命運に関わる話だ』


 止めて逃げようと叫んでも、ゼフィールは聞いてはくれない。


 邪竜の尾が、ゼフィールの翼を打ち据える。バランスを崩したゼフィールの胸へ、邪竜の爪が吸い込まれていった。


「ゼフィール!」


 私が叫び、マグヌスが勝利に笑んだその時。黒い影が私の隣を走り抜けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ