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追放聖女は、ハズレスキル「トリマー」でもふもふ達と楽しく暮らします!  作者: 野生のイエネコ


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 ざわざわと、周囲を忙しなく人が行き来する気配がする。


 ゆっくりと意識を取り戻した私は、瞼を開いた。


「あやめさん! 目が覚めましたか、あやめさん!」


 いつの間にか戦場から戻っていたライカンさんが、私に取り縋らんばかりにする。


「私は大丈夫です。あの、砦での戦はどうなったんですか?」

「あやめさんのおかげで邪竜や亜獣人の支配が解けて、邪竜は去っていき、一部の亜獣人たちはこちらへ投降しています」


 全ての亜獣人たちの支配を解くまでには至らなかったようだが、多くの亜獣人たちは隷属の魔法が解けてこちらへと投降しているそうだ。


「よかった……」

『だが、邪竜の穢れは完全には解けていない。マグヌスによる支配は解けたようだが、その分どんな行動を取るかわからなくなっているぞ』


 ゼフィールが忠告するようにそう伝えてきた。


「そうね。警戒は解けないか。でも、亜獣人たちが一部でも救われたなら良かった」

「どうしても、砦の人々に亜獣人に対する忌避感はあるようですけどね」


 ライカンさんがほろ苦く笑う。

 その表情に、私は胸が締め付けられる思いがした。

 差別される亜獣人の身の上で、高貴な血筋ゆえに高い地位についているライカンさんは、色々と思うところがあるんだろう。


「でも、強いからって戦争奴隷にされている亜獣人は被害者であって、何も悪くないじゃないですか……!」

「ええ。ですが、職につけないことから犯罪に走る亜獣人も少なくはありませんから、どうしてもね……」


 この世界の歴史に疎い私には何も言えないことも多いけれど、それでもやっぱり亜獣人に対しての扱いは理不尽だと思う。


 投降してきた、隷属の魔法が解けた亜獣人たちも、砦の一室に軟禁状態にされているらしい。

 怪我をしているものも多いが、ろくに治療を受けられていないそうだ。


「それなら、私が薬用シャンプーをします!」

「それはダメです、あやめさん。ただでさえ力の使いすぎで倒れられたばかりだというのに」

「でも……!」


 ライカンさんに引き留められ、思い通りに身動きが取れない。

 また倒れて迷惑をかけることになると思うと、気は急くが強引に動く気にもなれなかった。


「せめて一日お休みください。亜獣人たちへの治療は、受けられるように私も働きかけますから」


 侯爵家の生まれだというライカンさんが動けば、少しは亜獣人の待遇も良くなるかもしれない。

 それを期待して、私は療養するしかなかった。



 

 一日休んだ私は、早速亜獣人たちの閉じ込められている部屋へと向かった。

 薬用シャンプーで怪我を治してあげるためだ。


「聖女様……!」

「聖女様だ! 俺たちを救ってくださった!」

「ああ、聖女様、感謝いたします……!」


 亜獣人たちの居る部屋へ、ライカンさんを伴って入っていくと、亜獣人たちは一斉に跪いた。


「な、何?」


 びっくりして傍のライカンさんを見上げ、問いかける。


「あの隷属魔法から救われたことで、亜獣人たちは感謝しているのですよ」


 その大袈裟な反応に驚く私に対して、ライカンさんが説明してくれる。


「そんなに畏まらないでください。あの、怪我を治すシャンプーをしたいので、魔獣の姿になっていただくことはできますか?」

「怪我を!? そんな治療までしていただけるのですか!?」


 驚きどよめく亜獣人たちを宥めて、怪我の重い順に並んでもらう。

 最初にシャンプーをするのは、複数の矢傷が痛々しい、人よりも大きな狐さんだった。


 いわゆるシルバーフォックスというのだろうか、白い毛が先端に行くにつれて徐々に黒くなっていく独特の毛皮を有する狐さんんは、ふかふかもこもこで愛らしいのに、その毛皮は固まった血餅で汚れている。


 緑色の泡を有する薬用シャンプーを召喚して、その毛をそっと包んだ。


「クルルルゥ」


 狐さんは気持ちよさそうに喉を鳴らす。一通り他の亜獣人たちの怪我を治したら、彼らにトリミングを施してあげようか。女神様の祝福があれば、隷属魔法に対しても強くなるかもしれないのだから。

 もふもふの亜獣人たちを次々に治療していくと、キラキラした崇拝の眼差しがどんどん輝きを増していく。


 正直、聖女として崇められるのはそんなに得意ではないのだけれど、だからと言って治療をしないわけにもいかない。


 ライカンさんは使役魔獣のアリアを抱っこしながら、他の亜獣人たちの怪我の具合を見て、順番に並ぶように列を整理してくれている。


 そうして一通り治療が終わったら、今度はトリミングをしてあげようとしたのだけれど、それはライカンさんに止められた。


「また倒れたらどうするんですか! あやめさん、無理しないでください」

「でも……」

「でももだってもない!」


 ピシャリと怒られたので、思わず「お母さんみたい」と呟いたら、ライカンさんはひどくショックを受けた顔をしていた。

 その姿がちょっと可笑しくて、私はくすくすと笑ってしまう。


「全くもう……。でも、あやめさんが元気そうで安心しました」

「ええ、ありがとうございます。ライカンさんが見守ってくださっているおかげですよ」


 戦の最中、束の間の平穏に私は癒されていた。

 

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