挫折感
病室に着いたら、詩織は眠っていた。傍には友達の尚美さんと信子さんが詩織を心配そうに見つめていた。
母「尚美さん、信子さんいつもお見舞い有り難うございます」
尚美「詩織は再検査されたのでしょう、結果はどうだったんですか?」
母「ごめんなさい、今はまだ話せないの、詳しく解ったらお話ししますね」
尚美と信子は母の態度がいつもと違うのに気が付き詩織の状態が悪いのではないかと思い、これ以上母に聞かない様にしょうと感じた。
「お母さん、これを詩織に渡して下さいね、私達は帰ります、詩織にお大事にと伝えて下さい」
と信子は母に今日の授業のノートを渡した。
母「信子さん毎日有り難うございます、詩織にわたしますね、気を付けてお帰りしてね」
尚美「詩織は強い娘ですから大丈夫ですよ、直ぐに良くなりますよ」
母「尚美さんもいつもお見舞い有り難うね、気を付けて帰って下さいね」
二人は病室を出た。
病院のエレベーターに乗り信子は「尚美、詩織の病気はかなり悪いのかな?お母さんの態度がいつもと違っていたよね」
尚美「私も詩織の足首の状態が心配に成って仕方ないのよ」
病室では詩織が麻酔から目覚めた。
お母さんが傍にいたのに気が付き小さな声で話しかけた。
「お母さん私の足首はどうなったの?先生何か言ってた 」
「大丈夫よ、先生はまだ検査中だからはっきりとは言わなかったけど心配しないでゆっくり休みなさい」
「それなら良いんだけど、木村先輩とリハビリしてたら急に痛み出したから、私の足首悪化したのかと思い心配したんだ」
「詩織は焦らないでリハビリして、早く元の状態にもどしてから、スイミングの練習をしないとね、オリンピックは待っていてくれませんよ」
「うん、もうじき協会から代表に選ばれる連絡が入るはずだから、私に知らせてね」
「解ってますよ、代表に選ばれたらお祝いを持って直ぐにここに来ますからね、詩織は何が欲しいですか?」
母はドクターから聞いた詩織の足首を切断するかもしれないと言う事を娘にどうしても話すことが出来ないでいた、例え治る可能性が少しでも有るならば、神様に祈りたいと思っている。
母「詩織、信子さんが今日の分のノートを届けてくれましたよ、リハビリも大切だけども、学生なんだからちゃんと勉強もしなさい」
詩織「信子や尚美に感謝してるもの、毎日ちゃんとノート見て勉強してるよ」
母「それなら安心できますね、もうじき期末試験があるそうよ」
そうなんだった!もう直ぐ12月に入り期末試験が始まるんだった、勉強しないと授業についていけない。
詩織は病気と勉強の二重の問題に憂うつに成ってきた。
翌日朝ドクターから家族に説明が有りますとナースが母に話をした。
母は父親に連絡をして、急いで病院に来る様に話をした。
母「詩織お父さんがここに着いたら、ドクターから病気の詳しい説明があります、落ち着いて聞きなさい」
詩織「えぇ〜?お父さんも来るんですか」
「そうですよ、お父さんも一緒に病気の詳しい説明をして貰いましょうね」
病室のドアがノックされて父親が病室に入って来た。
父「詩織どうだ、足首の状態は大丈夫か」
詩織「お父さんおはようございます、今は薬と注射で痛みはありませんよ」
父「そうか、なら安心だな」
母「お父さん、忙しい処呼び出してすみません」
「何言ってるんだお母さん、詩織の為なら、仕事なんかして要られないだろう」
ナースが父さんが着いた事を確認してドクターに連絡をした。
ドクターが病室に入ってきて、病気の説明を始める。
ドクター「朝倉詩織さん、検査結果が出ましたが、はっきり言って最悪の検査結果に成りました、お父さんもお母さんも、勿論詩織さんも、落ち着いて聞いて下さいね」
「じつは、足首の骨の部分からも悪性の腫瘍が見つかりました、問題なのはここからです、落ち着いて聞いて下さいね、骨は手術で取り除かなければ、全身に腫瘍が転移してしまい命に関わります、解りますね」
父「それは、足首の骨を取り除かなければ成らないと言うことは、・・・・ 切断すると言う事なんですか?」
詩織「イャ----ァァァァッ」泣き崩れて震えている詩織
母「詩織しっかりしなさい」母は詩織を強く抱きしめた
ドクター「足首の切断手術をしなければ、命が無くなる可能性が限りなく大きいですのでご家族でご相談して欲しいです」
父「ホントに切断しか方法は無いのですか?」
ドクター「残念ながら、切断しかないです」
それは、詩織の命を奪い取ると等しい告知だった。
オリンピックは勿論一生自分の足で歩けないのだから…。
病室でドクターが詩織さんに病気の説明をしていた頃ナースステーションでテレビを見ていたナースが、テロップに朝倉詩織さんオリンピック出場決定の文字を見つけた。
ナース「朝倉詩織さん、オリンピック出場決定ですって、早く知らせてあげなくちゃあね」
ナースは急いで詩織の病室へ向かい、ドアをノックした。
「朝倉詩織さんオリンピック出場決まりましたよ」
父「ナースさん知らせて下さり有り難うございます、いま大変申し訳ありませんが取り込み中なものですみません。」
ナースは、ドクターや詩織さんとご家族の様子がおかしいのに気付いて直ぐに病室から出た。
ドクター(このタイミングでオリンピック出場が決まったのには、余りに詩織さんが可哀想でやるせない気持ちになった)
詩織の学校にもオリンピック水泳協会より出場の連絡が入って、校内放送により全生徒に知らされた。
放送を聞いた信子や尚美は直ぐに詩織にお祝いメールを打った。
信子「予選大会銀メダルなんだから当たり前たよね尚美」
「そうだよね、授業終わったら病院へ直行だよ信子」
「もち!レッツゴーです。お祝い何にする?」
木村翔太も校内放送を聞いて、父親にメールを打って知らせた。
詩織にもお祝いメールをした。
一方スイミングクラブにも詩織のオリンピック出場の知らせが入った。しかもマスコミや地元のテレビ局まで取材の申し込みが殺到した。
病院では、詩織の家族要請で面会を禁止する処置を取った。
マスコミの取材は全て拒否する事にした。
病室の詩織はまだ落ち着かない様で、お母さんに抱き抱えられて泣いている。
詩織「お母さん、何で私なの?私何か悪い事をしたのかな?だから神様が私をこんな病気にしたのかな?私死にたいよ、もうオリンピックに出れなくなっちうんだよね」
詩織はお母さんの腕の中で号泣している。
父「お父さんもずっと詩織の傍にいて上げるから、死にたいなんて言うんじゃないぞ、お父さんも悲しいじゃあないか」
母「そうよ、お父さんの言う通りだよ、詩織の傍に一緒にいるから、家族て頑張って病気を克服しましょう」
ドクターより家族にマスコミ対策と面会謝絶扱いに成りましたと話がされた。
外が騒がしくなり、病院のヘリポートに大型のヘリコプターが着陸した。
母「何でしょうね、急患かしらね?」
ドクター「あれは病院のヘリコプターでは在りませんよ、軍隊のヘリコプターですね、何かあったんでしょうかね」
詩織もびっくりして、外のヘリコプターに目をやったら何と木村修造さんがヘリから降りてきた。
詩織「あれ見て、木村修造さんだよ!」
父「詩織の為に来てくれたのだろうか?」
詩織は、突然の出来事に泣き止んだ!
母「詩織、泣き止んだだわね、木村修造さんが見えたらどうしましょう?」
予想通り木村修造さんは詩織の病室に入って来た、さすがに病院側も病室に案内をしてくれた。




