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第一章 五月(柏餅)
幕前のひと時。
~~縁側と緑茶と鯉幟~~
桜は花を散らし、青々とした若葉を茂らせている。
すすろうとした煎茶に、一本の茎が ―ぷかり―。
「…茶柱か。」 縁起の良い光景に、紅十郎の頬は緩んだ。
皿には柏餅、縁側から見えるどこかの家の鯉のぼり。
昨年は見なかった気がするので、きっと男児が生まれたのだろう。
「…そういえば、あそこは二人とも五月だったな…」
「?何かおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもないよ…」
思ったより大きな呟きに、こう爺が小首をかしげて聞き直してきた。
紅十郎の頬が、もう一段緩む。
次に会う時には、何か贈るとしよう。
…例えば、これとか。
茶菓子を手に取り、柏の葉をはがしながら、紅十郎は長屋へ思いを馳せた。
今回は各人に少しずつ、いろんな気持ちを表に出してもらうようにしたいと思います。
ほんの少し、一部分ですけどね。




