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元峠の走り屋のおっさん、勇者パーティを追放されたのに、聖女様を助手席に乗せて、今日もアクセル全開で逃亡中!  作者: MITT


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第二話「トンネルを抜けても雪国だった件について」②

「やっぱ、そうなりますかねぇ……。もちろん、俺達も出来る範囲で雪かきくらいするつもりっすけど、せめてこの雪がやんでくれないと、どうしょうもねぇですわ」


「まぁ、無理すんなって! ところで途中で事故ってたマヌケを拾ってきたんだが……お前ら、こいつ誰か知らんか?」


 事故ってたマヌケ「野郎」……と言いたいとこだったが。


 良く見たら、女の子だった……それもチンチクリンのお子様。

 どっかで見たことあるような気もするんだが、多分ギルドですれ違った事があるとか、その程度だろう。

 

 要するに、全然面識ない。


 冒険者ギルドの臨時職員の腕章を付けてたし、車だって見慣れない高速仕様エアライドで、積載性能よりも高速性能を重視したタイプだった。


 遠方の魔物退治なんかで、特急で冒険者達を送り迎えする時とか、急病人の搬送やら貴重素材の輸送とかに使われるヤツで運賃も割とお高い。


 ちなみに、今どきの冒険者ってのはダンジョン行くのにテクテク歩いてったり、馬車を乗り継いでとかやらない。


 ギルドとしても、さっさと行ってサクッと帰ってきてほしいから、行き帰りの足としてエアライドを手配するってのが常識で、金のない初心者冒険者でもない限り、どこのパーティもエアライド乗りと専属契約してたり、自前のエアライド持ってる奴らだっている。


 どうも、重要物資の臨時運送か何かだったみたいで、身分証代わりの冒険者証には特殊便ギルド所属(出向中)って書いてあった。

 

 さすがに事故車両を目撃して、ドライバーを放置するほど鬼じゃなかったんで、とりあえず雪の中から引っ張り出して拾ってきたんだが……ぶっちゃけ、この時点で厄介ごとの予感しかしねぇ……。

 

 なんせ、特殊便ギルドの専属エアライダーともなれば、俺みたいな冒険者ギルドと契約してる個人運送業者とは別格だ。

 まぁ、幸い俺が預かってた荷物も、エブラン村の名産品……ジャガイモだの、ワインにチーズ……要は農産物セット? それと、乾燥薬草詰め合わせみたいなヤツでカーゴルームも余裕ありだったんで、毛布にくるんでロープで固定して、寝かせといた。


 荷物についちゃ、どれも別に痛みが早いようなもんじゃないから、雪解け後でも良かったんじゃないかと思うんだが。


 他の運び屋はいち早く天候悪化を悟って、どいつもこいつも依頼キャンセルってなったらしく、空荷で帰ろうとしてたら、村人たちに捕まって積荷を押し込まれたって訳だ。


 つか、実際走った感じだと、ありゃ俺以外だと100%事故るか、どっかで足止め食らってビバークする羽目になるだろうな……。

 俺もコース覚えてなかったら、無事には帰れなかっただろうからなぁ……。


 冬場、年に数回程度ではあるんだが、ワダツミ峠もこんな有り様になって、しばらく封鎖ってなってたから、別に珍しい事でもなかったんだが、季節的にはもう4月くらいだから、そもそもこんな降る方がおかしい。

 天気予報士の精霊使いのねーさんは、理由はわからないが水の精霊が荒ぶってるとかなんとか言ってた。


 いかんせん、上の方……標高が高い山の頂上辺りは、もうどこが道やら解らんくらいには、ド派手に雪が積もってるだろうし、完全に吹雪いてて視界もゼロ。

 おまけに、エブラン村側はそもそも傾斜がかなりキツい。


 こっちに帰る時はヒルクライムで向い風だったから、速度を控えればまだなんとかなったんだが。

 逆に今からエブランに行くとなると、急勾配ダウンヒル&追い風、それに加えて、コレでもかってくらいに曲がりくねってる急コーナー連発とか言うベリーハードモード必至。


 なにぶん、エアライドってのは、基本的に減速や低速走行が苦手なんだわ。

 なにげに、その時点で乗り物としては致命的な気もするんだが、飛行機のようなものと考えるとそれなりに納得は出来る……。

 

 追い風&ダウンヒルなんてなったら、もう何もしなくても猛烈な加速が付くから、ほっとくと速度が右肩上がりに上がって、浮かび上がってワンアウトってなる。

 バランスを崩して風に煽られて宙を舞った時点で、完全に操作不能になるから、そのまま数十メートルとかまで舞い上がって、地面に墜落して、ドッカン……そんな感じになるだろうな。

 

 ちなみに、このマヌケ嬢ちゃんは峠の前半戦……それも山で言うところの2合目くらいでコースアウトしてたんだがな。

 

 やたらと平べったい地上クリアランスを極限まで狭めたシャコタン高速仕様エアライドで、随分派手なカスタム仕様機だったんだが……。

 限りなく目をつぶって峠道を走るようなもんで、車体性能とかで、なんとかなるような状況じゃねーからなぁ……。


 事故状況も明らかに一度空に舞い上がって、マナ供給がなくなって制御不能になって……そのまま墜落。


 まさに、お決まりの事故りパターン。


 なお、車両は現地に捨て置き。

 あったりまえだ……事故って自走不可になったエアライドを回収っても、割とどうしょうもない。


 なにせ、タイヤもついてないから、押して転がすわけにも行かないし、クルマを運ぶクルマ……レッカー車やらトレーラーなんぞないからな!


 ボディもぐしゃぐしゃで、リアの精霊石なんて完全に片方脱落して地面に転がったままになってた……むしろ、爆発しなかっただけ上出来……そんな有様だった。

 

 人里離れた峠道での事故だと、輸送用の車両に回送ドライバーと修理技師、それと修理工具一式と交換用の精霊石を積んで行って、現地で応急修理して、とりあえず自走出来るようしてから、回送ドライバーに運転させて、街のエアライド工房まで運ぶってのが一般的な事故処理対応だった。


 この辺は大都市間を結ぶ街道なんかでも、同じような対応となるから、要するに出張修理が基本で、俺もたまに出張修理の依頼が来て、対応することがあるんだが……。

 拘束時間は長くなりがちなんだが、俺なら修理技師と車両ドライバーを兼任できるから、結果的に報酬も美味くなるから、割とよく引き受けてる。

 あ、そういや俺の特技ってもう一つあったわ……エアライドの修理とカスタムなら割とお手の物。

 

 前世で愛車をニコイチどころか、ゴコイチくらいでハンドメイドDIYで一台組み上げるくらいの技術力はあったし、工具なんかもこっちも向こうもあんまり変わりなかったんで、工具の扱いも手慣れたもん。

 

 この嬢ちゃんの場合、運良く精霊石は割れなかったみたいで、車両自体は原型留めてたから、雪解け後に回収業者手配して、現地修理して引き上げる……そんな感じになるだろうな。

 

 コイツには悪いが、その方向で対応するしかないだろうが、乗りかかった船って奴で、現地の応急修理まで俺がやってやってもいいかもな。

 

 もちろん、回送ドライバーは本人にやってもらう……人を雇うのもタダじゃないから、それくらいやってもらわないと割に合わんし、実は結構そう言うパターンも多いし、その場合は修理費を値引きだってする。

 ……まさにWinWinって奴だな。


「……今日エブランに向かうような命知らずなんて、さすがにダンナくらいしかいなかったっすよ。となるとコイツ……裏道でも通ったんですかね。あっちは確かに近道なんだけど、ろくに整備してないから通行禁止の看板も出してたんですがねぇ……。そいや、どこにいたんです? ダンナの話だと派手に事故ったみたいなのに、まるっきり無傷な様子からして、まぁまぁ腕利きの術師だとは思うんすけど」


「はっ! 命知らずで悪かったな! こいつなら、二合目コーナーの一本杉の先のS字で車体バラバラになっててなぁ……」


「あそこで事故ってたんすか? ったく、ワダツミ峠の素人あるあるじゃないすか!」


「あそこ、コーナー自体は緩やかに見えるし、微妙に登ってるからついついアクセル踏んじまうんだよなぁ。で、登りきったあとにいきなりドーンと下ってて……。次のS字で曲がりきれなくて、制御不能になってS字のどっかにに突き刺さる……。もしくはS字の途中の起伏がジャンプ台みたいになってるとこでポーンとすっ飛んで墜落する……俺も昔やったからなぁ……」


 荒くれ者の一人がそんな風に遠い目をして語る。

 確かに、あそこは罠。


 先の見えないブラインドコーナーで一見緩やかな登り右コーナーに見えて、登りきった後にキツい下り急勾配が来て、更に途中から登って下るとかジェットコースターみたいな鬼S字が来る。

 

 スピード出しすぎてると、S字でバランス崩して、クラッシュするか……途中のジャンプ台みたいになってるとこで、ビョーンってすっとぶってオチだ。

 

 もともとまっすぐ道を引こうとして、やたらと硬くて切ろうとしても切れない鉄壁一本杉とその子分共が立ちはだかって、無理やり道を迂回させたせいで、そんなヘンテコかつ、難所に仕上がったようなんだが……。


 話によると、火をかけても燃えず、チェーンソーみたいなのを使っても、刃が負けて砕けるとかそんな調子で、樹高も親分スギは軽く50mくらいある……見た目は、日本にも並木通りがあったりするメタセコイアとかに似てるんだが……。

 

 こっちの世界では、何故か「スギ」って呼ばれてるらしく、遠目からの見た目も杉そっくりで割とあっちこっちにある。


 割と際限無く成長するらしく、エルフ達が守護する「深緑の森」にある世界最大クラスのは「神樹様」とか呼ばれてて、1kmくらいの高さがあるらしい……。

 

 そんなにデカいとどこから見ても解りやすいと思うんだが……エルフ達が隠蔽の結界で囲んでるから、その場所はエルフ以外は誰も知らない。

 なお、通称の「一本杉」ってのも俺がそんな風に呼んだら、何故か定着した。


 とまぁ……そんな風にもはや道路整備業者と化したアモン団の荒くれ者たちと、焚き火を囲んで揃ってヤニを蒸して一服しつつ、雑談を交えながら、簡単な指示出しして、街に帰還する事にした……。


 一応、俺はこいつらの監督役って事になってるから、いつもなら、もうちょっとゆっくりしていくんだが……。

 けが人運んでるなら、早く戻ってやってくれって言われたんで、早めに切り上げることにした。


 おっさん同士のヤニ・コミュニケーション……峠仲間とも街中ではご禁制になりつつある輸入品の紙たばこを分け合って、ちょいワル気取りでガハハとかやってたもんだ。

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