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元峠の走り屋のおっさん、勇者パーティを追放されたのに、聖女様を助手席に乗せて、今日もアクセル全開で逃亡中!  作者: MITT


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第六話「想定外」②

「で、どうなんだ? 俺はまだ間に合うって判断なんだが、ここは専門家の意見を聞く。実際、いざ突っ込んでいって、狂戦士だらけになってたら、目も当てられんからなぁ……」


 ひとまず、双眼鏡をアステリアに手渡すと、目を凝らしながらも、村の様子を見ることは出来ているようだった。


「そ、そうですね……。確かに、付近で発火現象も起きていないようですし、まだ大丈夫のように見えますが……。現地の状況は、もう少し近づかないとわからないですね」


 見たところ、動くものは一切無くて、無事な奴らは家に引きこもってて、罹患者は薬師の医療所に集めて、なんとかなってるように見える。

 

 もっとも、火渡り草のストックも心許ないだろうから、割と時間の問題って気もするから、急ぐ必要があることには変わりなさそうだった。


「なら、決まりだな。下りの途中に開けてるところがあるから、そこでもう一度、現地の様子を偵察する。なぁ、エドガー……ギルドから応援とか寄越せないか? この様子だと、雪もピークを過ぎてるだろうから、何とでもなるだろう。ああ、でも今から要請しても、出立は明日の朝イチとかそんなもんか……」


 慎重すぎると思われるだろうが、これが俺のやり方。

 毎度毎度、慎重すぎるくらいに、偵察やら情報収集を重ねて、後詰めも手配して、事に及ぶのは最終段階。


 段取り8割、実行2割……その程度でもちょうど良いと思うんだが。

 勇者くんには、最後まで解ってもらえなかったな……。


 ひとまず、考えられる想定。

 村の入口の篝火も消されていて、家々の明かりもほとんど消されてるってのは、解った。


 おそらく、無事な村人は家の中に閉じこもって、周囲との接触も絶って、籠城してるんだろう。

 まぁ、感染症の対策としては上出来だ。


 ただ、現地で狂戦士化した村人が暴れ回ってる可能性も考えないといかん。

 狂化すると夜目も利くようになるから、闇夜での乱戦とかなったら目も当てられん。

 

 そうなると、腕の立つ奴が複数居ないと話にもならんし、どうにも嫌な感じがしてならないんだよな。


 少なくとも、俺が出発する直前には、何ら異常はなかった。

 俺だって、魔力感知とかその手のスキルくらいなら使えるし、ニャースキーと言う高位精霊だっているんだから、精霊のバランスに異常があれば、解ったはずだ。

 

 実際、本当にいつも通りだった……にも関わらず、たった半日程度ですでにかなり深刻な状況になってる。

 

 発生の状況もだが、この周囲の状況も異常に過ぎる。

 正直、何が起きるか予想がつかないし、嫌な予感がビンビンにする。

 

 やはり、ここは頭数が必要……そう言う局面だろうな。

 勇者くんの一番の間違いは、こう言う判断に迷う状況で、自分たちだけで何とかしようとしたってのが、一番の間違いだったんだんだがね……。


 勇者の戦いは少数精鋭が基本だから、雑魚がいくらいても足手まといだって、いつも言ってたけど。

 戦力的に劣るからと言って、騎士団の連中や冒険者達が役に立たないかと言えば、そんな事はない。

 そもそも、少数対多数なんてなったら、基本は逃げるが勝ちだ。


 俺にしても、まともに相手できるのは、せいぜい三人まで……それも先手を取って、確実に一人を始末できるってのが前提条件だ。


 5-6人で周囲を囲まれたら、どんな腕利きでも勝ち目なんてない。

 だからこそ、人海戦術ってのも侮れないんだよな……。


「ああ、やっと落ち着けたんで、今しがたギルドへ連絡したとこだ。向こうはすでに雪がやんでて、やっぱり気温もあがってて、雪もみるみる溶け出してるそうだ。もっとも、代わりに深い霧が出てるようだが……そこは大した問題じゃねぇよな?」


 霧が出てる……か。

 恐らく、急激に気温が上がって、大量の雪解け水で水浸しになって湿度も上がったところで、地面の温度が冷えたままだから……だろうな。


 確かに、濃霧とかって雨が降ってから止んで、急激な気温低下が起きた場合

とかで起きるもんなんだが、その条件をちゃんと満たしてる。


 要は、単なる自然現象で、異常じゃあない……だとすると街の方は問題なさそうだった。


「なるほどな。確かに霧は問題じゃないな。とりあえず、人を寄越すように伝えてくれないか? それも出来るだけ大勢いた方がいい」


「ああ、サーシャの姐さんにうちのエースの剣豪ボルヴィック、それに昨夜の時点でB級冒険者たちをすでに確保済みで、医務室送りになってたエテルナも復帰出来たようで、エアライダー達も確保済み……。皆、状況は解ってるみたいで志願して、手伝ってくれるらしい。いつでも増援を出せるって話で、すでに第一陣が出てるらしい。アルメダのヤツ……俺が何も言わずとも、そこまでやっててくれるなんて、やっぱ優秀だよなぁ……」


 アルメダさん……。

 ギルドの受付嬢のリーダーなんだが、超有能って評判で、脳筋……要するに、割と頭の足りないところのあるエドガーがマスターでも、なんとかなってるのは彼女の存在が大きい。


 この様子だと、エドガーも細かい指示を抜きにして、無策で現場に乗り込んでしまったから、いつでもフォロー出来るように、メンツを集めて、準備も整えてたみたいだな。


 おまけに、すでに増援の第一陣が出発してるってのもすげぇな。

 だって、始めから増援が必要な状況になるって読んでたって事だもんな。


 さすが、やってくれるな!


「解った……そう言うことなら、残りの連中も直ちに出立するようにしといてくれ……。それと、薬師のバーナードに連絡は取れてるのか? 現地の最新情報を知りたいんだが」


「それがなぁ……。ギルドの方でも連絡が途絶えてるようで、今も呼び出してるみたいなんだが、返答がないらしい」


 マスターの持ってる通信札は、基本的に二枚一組で一対一で通話が出来るようになってて、今持ってるのは、ギルドとの直通回線になってるようなんだが……。

 

 ギルドには、近隣の村や街、各地の支部や王都の本部とも即座に連絡が取れるように大量の通信札が置かれていて、24時間態勢で連絡要員が詰めていて、即座に連絡が取れるようになっている。

 

 このあたりが冒険者ギルドが重宝される理由の一つでな……各地の小さな農村にも最低でも一人は連絡員が常駐してて、村の自警団なんかじゃ対処できないような問題が起きると、真っ先に冒険者ギルドに連絡が届いて動くってのが常だった。


 要は、ギルドってのはある種の情報ハブとして機能しているので、平時もだが、有事になると勝手に情報が集まってくることで、誰よりも早く状況を把握できる。

 領主なんかも冒険者ギルドのマスターには頭が上がらないってのは、こう言う理由もあるし、アステリアが冒険者ギルドに話を聞きに行ったのも、同じ理由からだろう。


 なんでまぁ、直接村の薬師……バーナードにもギルド経由なら連絡が可能……そう思ったんだが、この緊急事態を前に、ギルドからの連絡に応答しない……となると、もう嫌な予感しかしねぇ。


 考えられる可能性としては、バーナードも感染して動けなくなっている可能性。

 もしくは……通信札の通信に妨害がかかっている可能性。


 今のところ、俺は前者の可能性が高いと見ている……。

 治療に当たる薬師や治癒術士は、火病対策もよく解ってるから、簡単には二次感染なんてしないんだが。

 重度感染者が発生した場合、感染のリスクも急激に跳ね上がる。


 具体的には、水晶化が始まってしまった場合、もう感染者の近くにいるだけでほぼ確実に感染する。

 この段階になると、もう火渡り草の解熱ポーションも「浄化」も予防効果がなくなる。


 後者であれば、状況はもっと深刻だ。

 基本的に通信札は二枚一組で、その組み合わせ同士でしか通信できないので、傍受やら割り込みは出来ないんだが。

 付近で強烈な魔法が使われた直後とか、儀式魔術の発動準備で多大な魔力の滞留が起きていると、通信波がかき消されてしまって、通信が出来なくなる。


 この場合は……相応の強大な魔力を持つ何かがいる。

 もしくは、この騒ぎ自体が組織的なもので、大規模な儀式魔術の発動……そっちを考えなくちゃいけない。

 

 いずれにせよ……現状、可能性が高いのは、重度感染者がエブランに入り込んだ可能性。

 もしくは、未知の感染源がエブランに現れた可能性……。

 

 いずれもまさに、最悪の想定と言える……。

 出来れば、その最悪の状況は勘弁して欲しいんだが……ここで、問題になってくるのは、神託が降りてたって事実だ。


 神託が降りるってのは、本当にヤバい状況なんだよな……。

 にも関わらず、真偽だけ確認して、犠牲者が少ないなら、さらっと見捨てて終わりにするとか、どう考えても対応がおかしい。


「アステリア……スマンが、予定変更だ……。多分なんだが、もう一刻の猶予もない……ここはもうノンストップで村まで一気に突入する。最速で行くから、かなりの無茶をする事にもなる。悪いがエドガーは、ここで後続を待っててくれないか?」


 よくよく見れば、空の様子もおかしい。

 エブランの上空にドーナツみたいに雲に穴が開き始めていて、見る間に星空が見えるほどになっていた。

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