表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元峠の走り屋のおっさん、勇者パーティを追放されたのに、聖女様を助手席に乗せて、今日もアクセル全開で逃亡中!  作者: MITT


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/29

第一話「最後の走り屋の最後の軌跡」①

「ねぇねぇ、コウちゃん! いつもみたいに、ブッ飛ばせばいいじゃん! 何お行儀良くトロトロ走ってるのさっ!」


 雪道をエアライドで、ラッセル車のように盛大に雪を吹き上げながら爆走していたら、耳元で甲高い声が響き渡った。

 

 ちなみに、コウちゃんってのは、本名が「瀬名せな 航一郎こういちろう」だからコウちゃん。

 もちろん、そんな呼び方をするようなヤツはコイツ以外、他にはいない。

 

 まぁ、こう見えて立派な日本人……だった。


 そう……過去形なんだわ。

 ありがちっちゃありがちなんだが。


『……死んだと思ったら、なんか異世界にいた』


 何を言ってるのか分からんと思うが、それが紛れもない事実ってワケだ。

 ちなみに、死因は自動車での事故死……だと思う。


 時は、2050年……世の中の交通機関の主流はAI自動運転EV……そんな時代になってたんだがね。

 そんなジェントルかつエコロジーなモーターで動いて、運転手が何もしなくても勝手に目的地に着く、AI制御のロボットカーが気に食わないって連中は、そこそこいたんだわ。


 で、そんな連中は、EVの給電セルラインどころか、電気水道ガス……ライフラインも照明もなんもない……随分前に廃道指定されて誰も通らなくなったような峠道に集まって、夜な夜な街道グランプリみたいな事をやってたのさ。

 

 もちろん、グランプリってもチェッカーフラッグがはためき、際どい衣装のレースガールが色気を振りまいてたり、大勢の観客が集まってTV中継が入るとか、そんな派手なモンじゃない。

 

 どこからともなく峠の中腹にある駐車場の跡地に、同好の士が続々と集まってきて、めいめいに焚き火を囲んでキャンプ飯食ったり、持ち寄った愛車を並べて、あーでもないこうでもないとクルマ談義でアツく語り合ったり、ツルんで峠アタックを挑んだり、互いにバトったりする。

 

 完全無法地帯で、コンビニどころか、自販機もトイレもなんもなし、もちろん携帯端末の電波もクソ遅い衛星回線以外は余裕圏外。

 

 夜になると、照明ひとつもない真っ暗闇で、アスファルトも何年もメンテナンスされずに、もはや風化して砂利になりかけてる。

 

 道路と言っても、至るところに雑草がニョキニョキ生えてて、落ち葉やら木の枝に落石やらが無造作に転がって、ボコボコに荒れまくった道なき道……もう10年も経てば、草に覆われて道があったことも解らなくなるだろう……。

 

 当然ながら、そんなところで事故っても警察はもちろん、救急車も消防も呼んでも来てくれない……。

 そんな半ば忘れ去られた無法地帯で、旧式ガソリン車を駆って、フルスロットルでコーナーを攻めて、スピードの限界を競う!


 ……まさに、クレイジー! 故に男のロマンって奴だな。


 一般観客ギャラリー? そんなもんは居ない。

 何せ、今時の路面給電式EVは給電セルラインが敷かれてない道へ入ると、せいぜい10km程度しか走れないんだからな。


 ガソリン車からAI制御の自動運転EVへの転換。

 エコロジーで地球に優しく。

 目指せ事故ゼロの安心社会。


 結局、交通事故とかって人間が運転してる限り、絶対になくせないってそんなもんで、物流にしても日本という国は割とトラック輸送頼みってのは、2050年になってもそこはあんまり変わりなかった。

 

 そして、そんな中……物流トラックもかなり前から圧倒的人材不足という問題に直面して、割とまっさきに自動運転化が進められて、そんな自動運転車が街中を走るに至って、邪魔になったのは人間が運転する一般車両。

 

 かくして、完全歩車分離と自動車の自動運転化が求められ、それらに都合がいい電動化ってのがもう世界的な流れだったんだよな。

 

 要は走ってる車を全部自動運転にして、AI制御と相性がいい電動車にしてしまえば、石油資源の枯渇に伴うガソリン価格の高騰に、渋滞だの交通事故、そして何よりも物流の要のトラック輸送の自動化と……そりゃあもう多くの問題が解決する……。


 随分前からそんな事を言っていたんだが、実際は物流トラックはともかく、一般車両ではさっぱりEVが普及せず、中途半端なハイブリットカーとかそんなのばかりになってたんだよなぁ。


 それに何と言っても、ハイブリッドカーはともかく、電動車はどれもこれもクソ高い上にバッテリーが重たいから、どいつもこいつも重量級……。

 

 近年は、世界一のレアアース産地の中国さんが、色々あって、アレしちゃったので、脱レアアースバッテリーへの切り替えとかやってたせいで、バッテリー性能はむしろ昔より下がってて、そんな本末転倒な事になってしまった。

 

 航続距離もスマホとかと一緒で、カタログ値では500kmオーバーと言っときながら、実際は2-300kmくらいがいいとこで、一軒家住まいでもない限り専用充電ステーションなんてとても設置出来なかった上に、公共充電スポットでも一回の充電に早くても30分コース……満タンまで一時間以上かかるケースも珍しくなく、おまけに休日ともなると充電スポットに長蛇の列が出来る……はっきり言って超不便。


 そもそも、自動運転とかも、俺らみたいな運転を楽しんでるような人種にとっては、要らない機能以外の何物でもないからなぁ……。

 

 何もしなくても目的地に到着とか、たしかに便利なんだが……それなら、電車やバスにでも乗れば済む話だ。


 物流トラックにしても、専用レーンでも作って住み分ければ済む話で、実際高速道路については、かなり前から自動運転トラック専用レーンってのが、物理的に分けられるようになってて、それで問題もなかったんだわ。


 そんなんで、俺らまで巻き込むんじゃねーよってのが、俺ら自動車愛好家の言い分だった。

 要するに、電気自動車ってのも、ブクブク贅肉やら要らない装備やらてんこ盛りのなんとも微妙な代物ばっかりでそりゃ売れねぇよ……そう思ってたんだがね。

 

 発想を転換して、電源を車内に積み込むんじゃなくて、路面からワイヤレス給電する事で走りながら、常時電力を得る……そんな路面給電セル方式のEVが開発されて、全国規模での道路大改造が実施されて以来……。

 

 クソ重たくて高価なバッテリーを積まなくても良くなったEVも構造が簡素化し、大幅に低価格化した事で急速に普及して、日本の主力交通機関にあっという間に成り代わった。

 

 なんせ、色々ゴテゴテ付けた結果、普通に500万とかして、すっかり高嶺の花になってたAI自動運転の新車が一台200万以下で買えるようになったんだからなぁ……。

 

 電気自動車の最大の欠点だった、充電がダルいって問題についても走りながら給電って時点で、あっさり解決した。


 一軒家暮らしの特権だった家庭用充電ステーションも要らなくなったし、街中のあちこちにあった充電スポットもあっという間に消えちまったし、バッテリー残量メーターの数字を見て、不安になるようなこともなくなって、格段に便利になった。

 

 歩車分離対策も兼ねて、全国同時に実施した道路大改造費に、EV購入の補助金……いったいいくら税金を使ったんだが知らんが、さすがにそこまでやられて流行らないわけがなかった。

 

 なんせ、駐車場代を除けば、月あたりにすると一万円にも満たない低維持コストで、クラウド式AIによる自動運転機能付きのマイカー買えるようになって、乗り出し費用も10年落ちの中古車より安くなったくらいなんだから、そりゃ皆買うだろ。

 

 おまけに、常温核融合発電の実用化で電気のコストが大幅に下がった事も手伝って、ほんの10年程度でガソリン車もハイブリッドカーも一転絶滅危惧種になってしまったし、世の中一気にオール電化みたいになった。


 もっとも、それと引き換えに給電ラインを引いたり、ライフラインを維持するにはコスパが悪いと判断された人口過疎地域の放棄政策も同時に実施され、市街地以外の主要国道や高速道路以外の細かい道路網の放棄も合わせて決定されてしまった。

 

 まぁ、この辺の割り切りってのが、全国の道路一斉改修とか、無茶が成功した理由の一つではあるんだが。


 要は、都市部に住民をごっそり集めて、高速道路や主要国道、高速鉄道網で都市間をつなぎ、生活エリアとそれ以外を明確に分けちまったんだよ。

 結果的に、都市と都市の間に点在していた半端な地域は、基本的に国有の農業耕作地域、もしくは自然保護区域と称した放棄エリアとなってしまったんだ。


 前者はともかく、後者は割と容赦なく指定されていって、基本的に山の中とか、過疎地域なんかの大半が自然保護区指定されていて、日本海沿岸部なんかも海の向こうから弾道弾が飛んできたり、色々とヤバい状況になってきて、住民の疎開も兼ねて自然保護区指定されてるんだが。

 そっちはむしろ、軍事警戒地域とも呼ばれていて、違う意味で危険なところだった。


 まぁ、軍事警戒地域はともかく、他の地域では強制移住とかそこまではしてなかったんだが……。

 基本的に、自然保護区はライフラインが通ってないので、水や食べ物は自給自足する必要があるし、電気だって自家発電が必須……何よりも路面給電EVが使えないとなると移動に大きなネックを抱える事になる。

 

 要は、戦後辺りまで生活水準を下げなければ、満足に生活できない……そんな調子だったので、ほとんどの連中が諦めた。

 

 ましてや、都市部への移住を希望するなら、移住費用を余裕で賄ってお釣りが出るほどの補助金が出て、格安で公営住宅に住む権利を与えられるなんてアメもあって、割と自然な流れでこの人口集中政策は進められることになっていった。


 もちろん、富士山周辺とか京都、奈良みたいな歴史や見どころのある観光地は、観光都市と言う事で華々しく飾り立てられるようになったし、企業の城下町みたいになった産業都市なんかもいくつもあるから、地方だからと言って、完全に切り捨てられた訳じゃないんだがね。

 

 ちなみに、30年くらい前に流行ってたメガソーラー発電所や屋根にソーラーパネルを敷き詰めたエコ住宅なんかも、一家に一台のノリで普及した小型常温核融合発電機に取って代わられて、メンテの面倒くささや維持コストがかかり過ぎると言うことで、メガソーラー事業者もバタバタと潰れて、もう至るところで朽ちるに任されているような有り様になっている。

 

 まぁ、この辺は今の日本国を事実上支配する……超AI「アマテラス」に代表される日本国統治機構の超AI連中の提案と施策だったんだがね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ