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元峠の走り屋のおっさん、勇者パーティを追放されたのに、聖女様を助手席に乗せて、今日もアクセル全開で逃亡中!  作者: MITT


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プロローグ「闘争から逃走する為の闘争」

 ……その日は、季節外れの大雪だった。

 

 イル=ゼスタ王国、四大都市の一つハルモニア市と山向こうの宿場町……というより限りなく農村であるエブランを結ぶ峠道は、予てからの大雪で完全に雪に閉ざされていて、普通なら峠越えは諦めて雪が止んで、雪解けを待つ。

 それが俺達、運び屋の常識だったんだがね……。


「ふふふっ、やっぱりセナおじ様の隣は最高ですね!」


 そう言って、この世界では一般的な自動車のような何か……エアライドの助手席で、にこやかに笑うのは「聖女」の称号を持つ俺の古い友人でもあるアステリア嬢。

 

 昔は、ガキンチョって感じだったんだが、しばらく見ない間にご立派に育ったなぁ……と。


 まぁね! こう見えて俺は、超一流エアライダーの一人として名を連ねる、凄腕S級エアライダーでもあるので、夜のドカ雪の中、道なき道を爆走ってのも一向に構わんのだが、いかんせん視界はほぼゼロに近い。

 完全に吹雪いてるので、猛烈な風に車体も煽られて、一瞬でも気を抜くと吹き飛ばされてしまいかねない。

 

 そんな状況にも関わらず、ドライブデート気分で妙にテンションの高めな聖女様……それも、別にいいんだがなぁ。

 現状、のっぴきならぬ事情でアクセルはフルスロットル……本来、そんな呑気な気分でいていいような状況じゃない。


「運び屋ッ! 貴様ッ! 直ちに車両を止めろ! これ以上罪を重ねるつもりなら……」


 おまけに、赤色灯を屋根に付けて、扇みたいに六つのウィングを装備した高速仕様エアライドが、さっきからウザ絡みしてきて、大変にウザいんだわ。


 まぁ、所謂警察とかそう言うんじゃないんだが。

 相手は国家権力に匹敵する聖堂教会の聖騎士様……それも「銘持ち」。

 この時点で、逆らっても何もいいことないし、いつもだったら大人しく従ってるとこなんだが。


 こちとらタイムリミット付きで、大いに事情あり……。

 んな、大人しく止まってやるほど、こっちも暇じゃねぇんだよ。

 

 もっとも、罪状については、不法侵入に未成年者略取誘拐、それに街から出る時に、先回りしてた聖騎士のお供共も派手にひき逃げアタックでぶっ飛ばしてきたから、人身事故と傷害罪も追加だな!


 いかんせん、話のワカラン奴らで、もう話し合いもなんもかんも省略だったから、もはや弁明の余地もない。

 犯罪役満状態と言うのは自覚しているし、捕まったら異端審問官の前にでも連行されて、投獄必至……最悪、縛り首かもしれんな。

 

 だが、後悔はない……時には、法だのルールなんぞブッちぎってでも為すべき事ってのは、あるんだよ。

 ……特に人の命がかかってる時とかな!


 そもそも、拡声器でガナリ散らしてる若造もイケスかねぇヤツで、はっきり言って最初に会ったときからムカついてた。


 単なるアステリアの護衛のクセに、自分が教会の代弁者みたいな態度も腹がたったが、何よりもさっきからブチかまさんばかりの勢いで幅寄せしてきたり、前に回り込んで急減速だの、クソ煽り行為のオンパレード。

 

「ああ、もうっ! 我慢の限界だぜ……このクソボケッ! 目にもの見せてやる……!」


「おいっ! なにする気だよ!」


 後ろで青い顔をしてるハゲ頭の大男……ギルドマスターが喚く。

 まぁ、このおっさん……もはや、ツッコミ係になってる気がするんだが、知るかそんなもん!


「何って、次のコーナーで軽くぶち抜いて、格の違いってもんを思い知ってもらうってだけさ!」


「な、何言ってやがる……相手は、スピードスターズ! 高速仕様の最新型エアライド、乗り手も聖堂教会のエース! こんな輸送用エアライドなんかで勝負になるかよ!」


「……いや、なるねっ! この俺の前を走って、煽りまくりとか舐め腐ったマネしやがって……ブチ抜かれて、涙目になれってんだ!」


 ……通称「一本杉コーナー」


 ここワダツミ峠の最初の難所……超巨大な杉の木が目印の長いストレートと緩やかな登り高速コーナーで加速がついたところで、登り切ってから急勾配になって、挙句にえげつないRのS字コーナーが来るという……普通に初見殺しの難所。

 

 まずは、ここでオーバーテイクの上で、後塵を拝してもらう!

 前に出ちまえば……むしろ、こっちのもんだからな。


「やっぱ、こうじゃなくちゃな……! はーはっは! おら、てめぇら……しっかり捕まってろ! エグい横Gが来るから、覚悟しとけ!」


「はいっ! いつものことなので、遠慮なく行っちゃってください!」


 助手席の聖女様がAピラーのハンドルを握って、ヘッドレストに腕を回した耐G姿勢のまま、ニッコリと笑いかけてくる。

 昔、教えた通りで感心、感心。


「ああ、任せとけ! おっさんもしっかりベルトでも握ってな!」


「ああ、ちくしょうっ! 人の話を聞けっ!」

 

 残念ながら、お話し合いの時間はとっくに過ぎている。

 そもそも、すでに俺は立派な犯罪者……確定だ。


 聖女誘拐に加え、追手の聖堂騎士と愉快な仲間たちをブッちぎって、奴らの最速の称号をコケにする。

 ついでに言うと、この後……奴らは、まとめてド派手に事故ってもらう。


 まぁ、その為の筋道はすでに出来上がってる。

 いわば、詰将棋だ。


 敢えて事故らせる理由は簡単だ。

 

 こいつらを追い抜いたところで諦めるとは思えないからな……。

 もう追ってこれないように、ここで事故って、ご退場いただくだけの話だ。

 

 まぁ、必然的に罪状がもう一つ追加ってなるんだが。


 ……そこは一向に構わんッ!


 でもよぉ……これまで地味に静かに生活してきたのに……・


 なんつーか、色々台無しって愚痴りたいのも事実。

 でも、避けられたかと言えば、無理だな……。

 義理と人情ってもんを忘れちまって保身に走るような情けないヤツ。

 俺はそこまで腐っちゃいない! でもなぁ……はぁ、これからの事を思うとめんどくせー。


 とりま、うだうだ愚痴っててもしょうがないので、まずはこれまでのあらすじでも語ろうじゃないか。


 この平和主義者で、地味なスローライフを送ってた運び屋おっさんだったこの俺が、如何なる事情で、こんなハデな犯罪行為の挙げ句カーチェイスに至ったのか?

 

 順を追って、回想したいと思う……。

 では、回想シーンスタート……5、4、3、2,1……!

久しぶりの新作です。

今回の主人公はおっさんですが、

世界観自体は、宇宙駆けシリーズからの流用となります。



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