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元峠の走り屋のおっさん、勇者パーティを追放されたのに、聖女様を助手席に乗せて、今日もアクセル全開で逃亡中!  作者: MITT


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第四話「聖女強奪、そして始まるカーチェイス」④

「……こ、こりゃ、さすがに相手が悪いぜ。密輸業者の快速エアライドやエアライド犯罪者達を捕縛するための高速エアライド部隊ってのが王都にはいるんだが。あのミハイルとかいう野郎……あの精霊石内蔵の6枚羽に、赤の精霊灯……噂のスピートスターズだったのかよ! セナ、いくらお前でもアレから逃げ切るのは、無理だ……。今ならまだ間に合う……俺が奴らを説得するから、一度止めてくれ……」


 のっけから、エドガーのおっさんが気弱なことを言い出す。

 

 見た目はF1カーに扇みたいに6枚のウィングが付いたようなド派手なデザイン。

 でも、あれ……ホントに空力とか考慮してんのかね?


 それにスピードスターズねぇ……なんと言うかダセェ名前だな。


 1990年代に群馬の山奥を拠点にしてた走り屋チームにそんなのがいたって、走り屋の長老格だった爺さんが話してたけど、俺の感覚からすると、激しくダセェ……だって、スピードはまだ解るが、スターでズだぜ?

 

 お前ら、アイドルグループか何かだっつーの!

 ドリフト大好きドリフターズとか言ってたほうがまだ洒落が効いてるぜ。


「あ? 却下だ、却下っ! ……時間が押してるって言っただろ? んな、珍走団みたいな名前の奴らに下るとか、それこそありえねぇよ……」


「まさか、奴らに逆らうってのかよっ!」


「聖女様かっさらっちまった時点で、逆らうも何もねぇだろ……。こう言う肝心な時にヘタれるのは、アンタの悪い癖だぜ……ったくよぉ」


「んだとぉっ! お、俺は……相手が悪いって言ってんだ。聖堂騎士……それもスピードスターズなんて、上級も上級! ……警備隊とか盗賊団なんかとはワケが違うし、絶対逃げ切れねぇ!」


 ……んなこたぁ、どうでもいいんだがなぁ。

 相手がなんだろうが、俺には関係ねぇ……勝手な理屈で救える奴らを救わないとか、そんなもん……聖騎士なんて名乗る資格ねぇよ。


「……まぁいい、ちと本気出すか」


 むしろ、アクセルをドカンと踏み込む。

 急加速でケツが振られて、車体が若干浮き出して左右にフラ付き出すが、お構い無し。


 うん? もうちょっとダウンフォースが欲しいな……それに向かい風が強くなってきたから、風圧がウゼェ。


「アステリア、そこのロックレバーを外してくれ……ちょっと天井低くなるが、我慢してくれ」


 一般の車で言うところのAピラー部の真ん中にあるロックレバーを同時に外すと、ピラー代わりの伸縮式のパイプが風圧に押されて縮むことで一気に低くなる……。

 ウィンドウも一緒にしまい込まれるので、フロントの面積が一気に減る。

 

 天井も斜めって前席は拳一個入るかどうかってくらいまで天井が低くなるんだが、車体の形状的には流線型に近くなるから、だいぶマシになる……名付けて、高速フォーム!


 可変式車両とかちょっとしたロマンだろ?

 あっちの車で同じような仕組みにしたら、Aピラーの剛性不足や天井下げたぶんだけのウィンドウの処理とかあると思うんだが。

 スライム素材のウィンドウは、通す魔力を抑えると柔らかくなるので、こんな芸当もできる……便利すぎて困るぜ。


 後ろの部分は直角のハッチになってるから、そこがそこそこの空気抵抗になるんだが。

 そっち側は別の仕掛けをしてあるから、そこまで問題にはならない……。


「変形ギミックとか男のロマン……まさに、これから本気出すって感じで燃えるよなぁ! さらにシェブロンスケイルも展開ッ!」


 シェブロンスケイル……要は三角形のギザギザした薄いでっぱりをルーフの突端やサイドの角に貼っつけるってだけ。

 そして、これも普段はカバーしてる布切れをふっ飛ばして、車体後部のウィングの角度を調整する事で実効空力を可変させる……そんなギミックだ。

 

 実際に、2020年代くらいから車メーカーも「ヴォルテックス・ジェネレーター」って名前で実車に採用してたくらいで、低コストな割に効果がある……信頼と実績の技術でもあるんだ。

 

 これもボタン一つでサクッと出来る……まぁ、俺もエアライド職人の端くれだから、こう言うお手製ギミックの自作もお手の物。


 そんな薄っぺらい三角のギザギザ程度で空力に影響なんて出ないって、思われがちなんだが。

 実際は、こんなもんでも、車体後部に絡みつく空気の渦がギザギザに当たって、細かくなることで、空気抵抗が下がって、気流も安定することでダウンフォースが増大し、高速安定性が格段に向上する。

 

 この技術は、最新のAI設計車両でも採用されるほどで、DIY派にもお手軽チューンって事で皆、こぞって採用してたからな。

 

 もっとも、それなりにダウンフォースが増えることで、普通の車だと安定性が増して、風切音や空気抵抗も少なくなるとかメリットしかないんだが。

 

 エアライドの場合……車体が沈み込むようになって、浮揚に余計なパワーを掛けないといけなくなる……なんでまぁ、普段は布でカバーすることで無効化してるって訳だ。


 当然のように、空力の変化から重心バランスも崩れるんだが、そこはアクセルの微調整と精霊石の出力調整ダイヤルを調整してカバーする。

 周辺気温とか気圧でも効果が微妙に変わるんで、実は割と繊細な機構だったりもするんだよな。

 

 もっとも、こう言うのは、経験が物を言うからな……なんだかんだで最適バランスはすぐに設定できる。

 毎日走ってるってのは、やっぱ強みだぜ。


 さて、状況。

 まず真後ろべったりと聖騎士の銀ピカ高速エアライドが接近中。

 

 だが、こいつはおそらく囮だ……。

 

 さらに、左右後ろに2台ずつ、森の中の木々を縫うように照明を消した細長いバイク型の車両が並走してる。

 よく見ると後ろに二人鈴なりに掴まってるとか無茶な乗り方してるんだが……。


 合計12人……野郎も含めたら13人か。

 さすがに、教会の連中達までは動員できなかったみたいで、それで打ち止めっぽいんだが……。

 こんなドカ雪の中、タンクデサントみたいな真似……御苦労なこった。


 要は、聖騎士の派手なエアライドでこっちの動きを止めてから、伏兵のバイクに乗った兵隊が接近して、車両に飛び乗って、移乗制圧するってところか?

 

 まったく、対エアライド……車両制圧に手慣れてる感じだな。

 エドガーの話だと、対エアライド用の制圧部隊らしいが、となるとバイクに並ばれたら、こっちもいいようにやられるってことだ。

 

 ハルバードやらロングハンマーみたいなのを持ってるから、アレで車両をボコボコにして、走行不能に追い込む……まぁ、そんなところだろう。

 

 しっかし、そんな5台がかりとかなんつーか、大人げない対応をするねぇ……。


 さて、どうしてくれよう……と思っていたら、アステリアが慣れた手付きで助手席のダッシュボードの蓋を開いて、中にしまい込まれてたトリガースイッチとターゲットサイトを取り出して、助手席前にセッティングして、ドヤ顔でこっち見る。


「……もうめんどくさいから、精霊砲の拡散誘導モードで全員まとめてバーンってやっちゃいましょう。よかったです、何から何まで昔のままだったんですね!」


 ……精霊砲ってのは、簡単に説明すると仲の悪い精霊同士……例えば、炎と水みたいな感じの組み合わせで精霊を呼び出して、狭いところに押し込むと、互いに喧嘩して外に飛び出そうとするので、それを無理やり押し留める。

 

 そして、外へ飛び出そうとする圧が高まったタイミングで解放すると、馬鹿みたいな速度で互いに絡み合ったエネルギー波みたいになって、勝手にすっ飛んでいく……そんな原理の兵器らしい。


 らしいってのは、俺が作ったんじゃなくて、今は亡き職人爺さんの作品だからだ。

 あの爺さん、割とマッド系錬金術師でもあったんで、こんな訳のわかんないものをいくつも作ってたんだよなぁ。


 ストレイ・キャッツ号もこっちの世界に飛ばされた直後は、完全にスクラップ状態だったんだが。

 それをお手本に、俺からのアドバイスを聞きながら、エアライド仕様に組み直してくれて、精霊砲や様々なギミックを仕込んでくれた。


 大概、頭オカシイ爺さんだったけど……酒が入ると、まるで死んだ孫が帰ってきたみたいだとか言って陽気に笑って……。

 偏屈だったけど、割と他人からは好かれてた。

 

 まぁ……いい爺さんだったよ。


 なお、欠点としてはまず、砲身自体は車体の下部にあるんだが、基本的に後ろ側を向いてる。

 走行中は、こっちもエアライドの制御で手一杯なので、走りながら撃つとなると専門の射手が必要なのが大きな欠点だ。

 

 それに射手についても、適性ってもんが要求される。

 具体的には、ある程度の魔力と精霊への強制力……つまり、高度な魔力制御能力。


 ……その二つを併せ持つような奴はそうそういない。


 この時点で割と致命的な欠点で、俺も基本的に停車させた上で後ろ向きでまっすぐ撃つ程度が精一杯で、最近は完全に死に装備化してたんだが……。

 

 この聖女アステリアと、その姉の賢者ミスティアは二人ともその辺の適正をガッツリ併せ持ってて、割と代わる代わる射手を務めてくれた。

 

 そして、精霊砲は光学兵器とかじゃなくて、活性化した精霊を飛ばして、直接ぶつけるって兵器だから、制御力次第では、後ろ向きに撃ってからUターンさせて、真正面に向かって撃ったり、目標へ誘導して直撃させる……なんて芸当も出来るんだが。

 実際は、後ろ向きに撃つってのがほとんどで、主に敵に背を向ける撤退戦で有効活用してくれた。

 

 ちなみに、アステリアの言ってる拡散誘導モードってのは、間違いなくコイツとミスティアくらいにしか出来ない職人芸。

 具体的には、精霊を数十体とか多数まとめて呼び出して、同時複数目標をロックオンして、ホーミングアタックをブチかますとか言う大群制圧用モードだ。


 俺もそんな使い方が出来るなんて、聞いてなかったんだが。

 こいつらは並の術者じゃない……魔道具一つにしても、常識を超えるような運用や想定スペックを軽く超えるような結果を出す……所謂天才とかそう言う類の奴らなんだ。


 ちなみに、考案者はミスティアなんだが……アステリアも見様見真似で似たようことが出来るようになった……要は姉妹パクリって訳だ。


 実際、魔王軍の大群の追撃を振り切るのに、ミスティアはアドリブでそんなデタラメなやり方を編み出して、大損害を与えてる……。

 俺もどの程度の損害与えたかまではよく知らんのだが……バックミラーの向こう側が真っ赤な火の海になって、地獄絵図みたいになってたのは覚えてる……。

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