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元峠の走り屋のおっさん、勇者パーティを追放されたのに、聖女様を助手席に乗せて、今日もアクセル全開で逃亡中!  作者: MITT


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第四話「聖女強奪、そして始まるカーチェイス」②

「ったく、遅かったじゃねぇか……」


 車内には他に誰も居ないと思ってたのに、そんな言葉とともに、のっそりと後部シートで誰かが起き上がった。


「おいおい、マスター! そんなとこで何やってんだよ! 話が違うだろ!」


 ハゲのギルマスこと、エドガー御本人だった。


「はっ! お前に責任全部引っ被せて、俺は素知らぬ顔でいろってか? 舐めるんじゃねぇよ……悪いが、俺にも最後まで見届ける義務がある! 何よりも、これは俺からの正式な依頼って事で手続きもしてきた……だからこそ、依頼責任者として現場にも同行するってワケだ! セナ……お前は、ギルマスが強権を振るって、依頼を強制されたって言い張ればいいぜ。聖女さん、アンタもだ……」


「いえいえ、これは私の判断ですから。救えるのに黙って見過ごせとかそんなのありえませんからね。……何よりも実際に人々をまとめて救ってしまえば、誰からも文句は言われませんよ。ほら、あれですよ……勝てばなんとかって……オジ様も言ってらしたですよね?」


 ったく、どいつもこいつも……。


「勝てば官軍……確かにそう言って、ド汚ねぇ策を授けて、魔王軍を出し抜いたりしてたしなぁ……。まぁ、結果を出しちまえば大抵のことが正当化出来る……そんなもんか」


「そうそう、勝てば官軍……正義は言ったもん勝ち……ですよね?」


 なんか諭されちまったよ。

 でも、言ってることはあんまり正しくないような気がしないでもない。


「まぁ、いいさ……。そう言うことなら、なんとしても救わねぇといけねぇよな!」


「ですね! 現地に着いたら、あとはこの私にお任せあれ……完璧に浄化してみせますわ!」


「ったく、頼もしいお嬢さんだぜ……。ああ、すまん……部下から、連絡が来たから、少し静かにしててくれ」

 

 そう言ってマスターが通信用の魔道具……通信札に耳を当てて、誰かからの報告を受けている。

 だが、たちまちその顔が険しくなる。


「おい、セナ……早く出た方が良さそうだぞ。どうやら、聖騎士達が動き出したようだ。全員まとめて眠らされてた上に、聖女様が居なくなったって事で、もう血相変えて、探し回ってるようだ……。教会を見張ってた冒険者も見つかるなり、いきなりはっ倒されて、随分とお冠らしい……。幸いソイツには、教会から誰かが出てきたら、ギルドに報告するように命じてただけだから、何も知らんのだがな」


「……意外と早かったですね。もっとガッツリ三日三晩くらい目を覚まさないくらい強力な調合にすればよかったですね。すみません、思ったより時間が稼げなかったようです……」


「聖女様をかっさらわれたってのに、教会では全員寝コケて、静まり返ってるって言ってたが……。聖女さん、アンタの仕業だったのか……。と言うか、お前ら……以心伝心って感じで……いちいち手際良すぎやしねぇか?」


「はい、この私……セナおじ様の絶対なる味方なので……。離れていても、心はいつでも通じあえる……まさに以心伝心の間柄なのです」


 そう恥ずかしげもなくそんな事を言って、ポッと頬を赤らめたりとかしてるんだが……。

 確かに、コイツは昔からこんなんだった。


 なお、こっちは恋愛感情とかこれっぽっちもない。

 なんせ、多少成長したとは言え、まだまだ十代の子供……なんだからなぁ。


 確かに、胸とかデカくなってるし、相応に色気とか出てきてるんだが。

 俺、中身はアラフォーおじさんだから、あんまりそう言うの興味ないんだよなぁ……。

 色恋沙汰ってのは、若者の特権……俺はそう思うぜ?


「なら、さっさと行くぞ。すまんが、ちょっと飛ばすからな! アステリアは……慣れてるから心配要らんか」


「はい! 久しぶりのオジ様の運転……むしろ、楽しみです! ああ、でも……マスターさんはちょっとキツイかも……。むしろ、降りるなら今のうち……と言わせていただきますね」


 俺も出来れば、降りて欲しいってのが本音だった。

 ぶっちゃけエアライドってのは、浮かぶだけに軽さ=ジャスティス。

 

 要は軽いに越したことはない……エドガーみたいなデカくて重たいやつは、デットウェイトにほかならん。

 まぁ、俺もまぁまぁガタイはある方なんだが、エドガーは俺より頭一つはデカい。


 そもそも、すでにギルドも動いてるのに、指揮官様が最前線にってそれもどうかと思うぞ。


「はっ! 俺だってかつてはA級冒険者として、鳴らしたクチだぜ……。エアライドでちょっとくらいスピード出されたくらいで音を上げるほど、やわじゃねぇよ! ……要するに、遠慮は無用だ! ドーンと行け! ドーンとな!」

 

「そう言う事なら……構わんか。言っとくが、俺も遠慮なく飛ばすからな! ルートは……確か裏門を開けといてくれるって手筈だよな?」


「ああ、本来なら夜間はすべての門を閉鎖してるんだが、裏門を開けておくように手配済みだ。もちろん、俺らが出たらしれっと閉じちまうから、聖騎士共も街から一歩も出れずに立ち往生……。だから、街の外に出ちまえば、追手の心配も要らねぇぜ!」


「……まったく、冒険者ギルドの全面バックアップがあるってのは、相変わらず楽でいいねぇ」


 勇者パーティ時代にも冒険者ギルドにはずいぶんとお世話になった。

 先行威力偵察なんかでは、いつも上級冒険者たちが同行してくれてたし、巨大モンスターの討伐では、助っ人として、冒険者たちが駆けつけてくれた事もあった。


 それに、各方面との調整やら後始末も……。

 もちろん、勇者パーティにはかなりの融通が効かせられて、勇者の戦いで生じた人々の被害については免責される特権が与えられてたんだが……。

 特権でゴリ押しなんてので、街を半壊させられた人たちが納得するわけがない。

 人々に頭を下げて謝罪して回るようなことは、ルードリックやアステリアが率先して引き受けてくれてたんだが。

 

 頭下げたからって、許してくれるかと言えばそんなことはないからな。

 なんでまぁ、現場の事なんて、まるで見えてない王家と、現実的な方々や勇者の戦いでとばっちりを受けた被害者の方々の間を取り持って、賠償金や復興費用を引き出す調整役として、冒険者ギルドには非常にお世話になった。


 エドガーなんかにもずいぶんと助けられたし、そう言うのもあって付き合いも続いてたんだがな。


 だが、そんな門が開かない程度で諦めてくれるかどうかって事については、正直微妙だと思う。


 あのミハイルって野郎……目的のためには手段を選ばないとか、そんな手合っぽいんだよな……。


 それに、何が何でも聖女を現地に行かせたくない……そんな意思が垣間見えていた……。


 ミハイルとか言う聖騎士も、行かせたら聖女の命に関わるって解ってて、必死で下手くそな言い訳を並べて止めようとしてた……そんなふうにも見えた。

 

 まだ、なんとも言えんのだが、エブランで思った以上にヤバいことが起きてるんじゃねぇか?


 或いは、これから起きる。

 神託なんて出てる時点で、はっきり言ってロクなもんじゃねぇ。

 

 もっとも、アステリアが勇者パーティの一員として、挑んだ戦いなんて毎回そんな調子だった。

 全員揃って無事に帰れる確率なんて、それこそ1割以下。

 そんな戦いだって、なんどもこなしてる……。


 人々の避難が終わるまで、侵攻してきた魔王軍の足止めをするって……そんな戦いもあった。


 勇者は、間違いなくバカだったんだが。

 戦わずして、臆して逃げ出すことや、人々を見捨てるような真似だけは、絶対にしようとしなかった……そこは俺も評価はしてるんだよな。

 

 そして、アステリアや他のメンバーも勇者が無謀な戦いを仕掛けようとしていても、それ以外に選択の余地はないと言うことで、自ら望んで死地へと飛び込んでいった。

 

 だからこそ、俺も皆をなんとしてでも生還させるべく、最大限の努力をしてた。

 幸い、その努力の甲斐あって、誰も死なせずに済んだんだからな。


 結局、勇者パーティを抜けたのも、あいつらが命がけの戦いをしなくても良くなったって解ったから……俺も身を引いたんだからな。


 そう考えると、今回も同じ図式だ。

 アステリアはどのみち……俺と出会わなくても、夜中聖騎士たちを眠らせて、こっそり抜け出して、エアライドを勝手に動かして、単身エブランへ向かっていただろうな。


 聖女アステリアってのは、そう言うやつなんだよ。

 だったら、俺もいつもどおりやるだけの話だ。

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