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第5話 宅配司書が死ねない理由 ①
「生きている意味って、なんですか」
ウィスタリア私立図書館、レファレンスカウンター。
拭き抜けの天井まで届く書物。金の装飾に彩られた書棚と閲覧席。広大な空間の中央。コチニールレッドの豪奢なそのカウンターに、その問いはぽとりと落とされた。
精魂尽き果て地に落ちる小さな実の粒のように。
問いを受けた司書、ラヴェンナは一度、息を呑んだ。
「それは……」
答えに窮したためではない。
無数にありすぎる答えが溢れんばかりに喉元につかえていた。
「それを感じられる書物なら、たくさんございます! 例えば――」
司書が羅列する膨大な物語を、随筆を。
問いを投げかけた女性は視線を本の表紙から逸らしたまま、どこか気の抜けた様子で聞いていた。
初老の皺に囲まれたウィスタリアの瞳。後ろで束ねられたセピアの髪はぱさついている。
ちらと、客の反応を窺うため視線を上げたラヴェンナは、かすかに思う。
どこかで見たような色の取り合わせだと。




