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第4話 宅配司書ができるまで ⑫
木枯らしが吹く三日後の晩。
仕事から戻ったダイアンは倒れ込むようにアパートの扉の内側に身を投げた。
「……ラヴェンナさん」
疲れ切った身体が最初に紡ぐのは、その名。
得体の知れない何かは、ずっしりとした感触を伴って、身体を迸り、少女の方へと傾けた。
戦闘を主たるものとする任務に、珍しく少してこずった。
「おかえり、なさい。だいあん、さん」
拙い言葉で紡がれる自身の名に、どうしてかたまらない快感を覚える。
乾ききった喉にもたらされる清水のごとく。
「まだ起きていたのですか」
吐息を笑みに紛れさせて、ダイアンはベッドに正座する少女の頬を撫でた。
「いけませんよ。毎晩しっかりと眠らなくては」
「だいあんさん。でも」
少女の声を最後まで聞かずに。
自身の寝台に横になった彼を、夢の伴わない泥のような眠りが包み込んだ。




