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第4話 宅配司書ができるまで ⑨
アパートの扉を明け、ダイアンは瞠目する。
溢れんばかりにいちごがせり出した籠の乗ったそのテーブルの前。
少女は手に膝を置いて鎮座していた。
お腹が空いただろうに野いちごどころか、食事にも手をつけていない。
自分に気が付くと顔を上げ、カトラリーを持って渡してくる。
戸惑っているとより近くに、ナイフを近付けてきて――。
「いっしょに、食べたかったのですか」
半ば信じられない思いで確認すると、ふにゃりと、未完成すぎる笑顔で笑った。
ぺたんと椅子に座ってフォークとナイフを天につきたてる少女を、微笑みながら、ダイアンはたしなめる。
「いけません。この国では、女性は男性に椅子を引いてもらうものです」
不思議そうに首を傾げる少女を見ているとまた笑えてくる。
まあこのあたりはおいおいでいい。
「いただきましょうか」
手の甲で絶妙な角度を描いて。
ダイアンはカトラリーを手に取った。




