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第4話 宅配司書ができるまで ⑧
また新たな任務を報せる着信がダイアンの元に届いた。
宝石の強盗。軽い仕事だ。
だが仕事の後はいつも、胸の中が捩れたようなおかしな心地になる。
神に背いているとか、人道にもとるとか、生活が保障された人間の特権のようなことを考えているわけではない。
こうするのが当然で必然だった。生まれついたその時から。
だがいつもこうなった。
滅入る思考を追いやろうとダイアンは無意識に手の甲を噛む。
何者にも許されていない感覚が常につきまとう。
――ばかばかしい。
一蹴した時、甘く秋めいた香りが、どこからか漂う。
自身の住まいからだと認識した時、彼は捕らわれた思考から完全に開放された。
こんなことは初めてだということすら、気付かずに。
それほど自然に、思考が部屋に置いてきた少女の元へ舞い落ちる。
自分の留守中空腹になるといけないから、部屋にはいっぱいの野イチゴを置いてきた。
今頃口を真っ赤にして食べているだろうか。
だいぶ品はよくなってきたが、まだまだ食べ物も零すし、引き続きしつけなくてはならない。
そう思うと何故だか笑いが零れた。




