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第4話 宅配司書ができるまで ①
中欧に位地する小国ウィスタリア。
二度の大戦中は連合国イギリスの傘下に入り中立の立場をとる。戦時中大量の移民を拒絶することなく受け入れることでヨーロッパでの立場を保っていた。
平穏な国の暗幕を一手に引き受けるように、掃きだめとなった場所がある。それは現代にも存在した。
とある劇場地下で行われる人身売買オークションである。
商品となるのは平穏な世の中からあぶれた者たちだ。行き場のない孤児や虐待児。受け入れた移民たちの 遺棄場所、必要悪として政府も黙認していた。
そんな掃きだめから、物語は始まる。
ある年の初秋のことである。
ウィスタリアの劇場で開かれる地下オークションに、少女が出品された。
四方に乱れた髪。栄養の行き届いていないやせ細った身体。ぼろきれのようなサイズの合わない服。外見は他の孤児となんら変わりないにもかかわらず、舞台に立った垢まみれの少女に客たちは突き抜けた高額を次々に提示していった。
ただ一つ、特徴と言えるものが少女にはあった。
古今東西、あらゆる書物を記憶し、諳んじることができる。
書物大量記憶装置――Book`s Large Strageの頭文字に、年齢の九つをつけたBLS09。そんなところが、少女にあてがわれた商品名だった。




