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第3話 宅配司書と女学生 ⑩
実家に帰る道を辿る時はいつも、体力がいる。
アパートの見慣れたカーキ色の壁が見えると、スウィーティはいつも身構え、緊張する。
伝えられたパーティーの日取りは一週間後だが、いつも色々と仕事を頼む家族が何も言ってこないから、することはもうないか、滞りがないか見にきたのだ。
その日、スウィーティはいつものように申し訳なさそうに、グレージュの扉を開いた。
途端、どっと溢れてくる笑い声と音楽に、倒れそうになる。
――これは、どういうこと?
疑問と同時にある疑念が明白に胸に浮かんでくる。
そっと足を忍ばせ、ドアを抜け、入っていった部屋には、ドレスアップした人々が歓談していた。
スウィーティの考案した料理を、スウィーティの手配したドレスを纏った姉を中心としてスウィーティが招待状を出した人々が取り巻いている。
恐る恐る、入り口に飾り立てられた顧客簿を見る。
父 オットー・ハニービーンズ
母 メイベル・ハニービーンズ
花嫁である姉の名は当然、トップに。
その名簿は彼女が作ったもの。だがある一語を抹消したコピーであった。
家族の欄に、スウィーティの名前だけがなかった。




