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第3話 宅配司書と女学生 ⑦

 その週末、家に帰るように言われ、命令通り帰宅したスウィーティが、母に最初に言われた言葉は、

「ミレディの婚約パーティーの名簿、できてるの?」

 だった。

「うん……はい」

「そう」

 差し出した名簿を無表情で見渡すと、母は無表情のままの顔を上げた。

「招待状は明日までよ」



「ただいま~」

「あらお帰り」



 そのとき、大学から帰って来た姉と母が抱擁を交わす。

「婚約披露パーティーの手作りパイのレシピはばっちりよ!」

「ありがとママー!」

「ほんとうにおめでとう。ミレディ。あなたはうちの誇りよ」

「……」



 言葉を挟めない。

 蚊帳の外で、まるで別世界の出来事のようにぼうっとスウィーティはその光景を眺める。

 なぜ、こう差ができたのか。

 理由は不明瞭だ。

 でも、と、スウィーティは思う。

 こういう時、明瞭な理由があるのなんてそれこそおとぎ話だけではないだろうか。

 継子だからという明確な理由でいじめられるとか。

 シンデレラや白雪姫の世界だ。

 現実はもっと複雑で微妙。



 言いたいことをその場で言う、わかりやすく華やかな人々と一線を画しているから。

 相性が悪いから。

 間が悪いから。

 噛み合わないから。



 そんな理由で人は寂しいのだ。



 お姉ちゃん。お母さん。

 おかえりって。

 ありがとうって。

 わたしも言ってほしい。

 そんなことが。



 そんな理由で、言えない。


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