表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/94

第2話 宅配司書と劇作家 ⑫

 夕暮れの日差しに揺り動かされるように、起こされた。

 レモンの木が甘酸っぱい香りを奏でるように流し込む、庭でのカウチに。

 安らうように、グリッサンドーニは横たわっていた。



「お目覚めになりましたか」



 耳障りでない、ハープの高音のような声に、顔を上げると、二週間ほど前にやってきた宅配司書が、傍らでミントを入れた紅茶を差し出し微笑んでいるのが見える。

 無言で頷くと、グリッサンドーニはティーカップを受け取り、傾けた。

 薬によって、急性期のような興奮は静まっている。

 眠りにつく前、自身が犯した失態もまざまざと想起できる。

 だが不思議と不快ではなかった。

 安らかな微睡みが、繊細な蔦のように体中を覆いつくすようだ。



「さすがのお客様も今ならば、大人しく聴いてくださるでしょうか」

 スケルツォ――冗談という名を持つ音楽を思わせる、曲線的でおどけた声音は、まるで快いピアノのトリルのように、彼の頭の中で弾けた。

「ロレンツォ・グリッサンドーニ様。あなた様に捧げるブックトークが、仰せつかったテーマとは少し、趣向を違えたものだとお伝えしても」

 だから、グリッサンドーニは大人しく目を閉じる。

 その、直前。



「怒らずに、耳を澄ませていただけるでしょうか」

 目に映った女の笑みは、アルペジオの最後の一音のように、均整が保たれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ