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第2話 宅配司書と劇作家 ⑤

 それからの日々は半月という制限時間と戦いながらのトライアンドエラーが、しぶとく繰り返された。

 生活の合間、図書館から持参した大量の書物や、あるいは依頼主の戯曲や楽譜を読みふけり、ラヴェンナは思いつくかぎりの『オペラの原作に相応しい本』を提案していく。



「スタンダールの『赤と黒』はどうでしょう? 道ならぬ恋が描かれたフランスの教養小説。ドラマチックで衝撃のラストはちょっと残酷ですが、そのぶん観客の皆様のご記憶に鮮烈に残るのでは」

「古典の恋愛物の舞台化。新しさがまるでないな。陳腐だ」

「では趣向を変えてあえて女性作家から! エレノア・ポーターの『スウ姉さん』などはっ? ピアニストを目指す女性の話です! 演奏シーンを中心に物語を音楽で彩ったら映えるのでは」

「音楽に纏わる物語を音楽劇にとは。安直な発想だな。第一オペラの主役は歌であって楽器ではない」

「ならばならばっ、O・ヘンリーの短編はどうでしょう! 単純ながら、大人でもじーんとくる筋のものは多いです! 家族連れでも楽しめるオペレッタにするんです!」

「女子どもに迎合しろというのか! 大衆受けなど俗物作曲家のすることだ。わたしは高度な精神性を追求してかつ大衆をあっと言わせる偉業を成し遂げんとしているんだ」



 等々のやりとりが丸四日ほど続いたところで、一度休戦が訪れた。

 大量の書物と楽譜の中、突っ伏すラヴェンナに、グリッサンドーニがぼそりと命じたのである。

「買い物に行く。同行しろ」

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