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【更新休止】魔法使いの花嫁たち  作者: 春夏 冬
6月:キングス・ファイブ 【魔法使い】VS【魔女】
57/62

第6話:優介たちは日本魔法技術センターに向かって出発する

「みなさん全員揃いましたね。それでは出発をお願いします」


 一般基礎学科クラスの生徒が全員バスに乗車したことを確認すると、マシロ先生はバスの運転手へと出発の声をかける。

 気の良さそうな運転手は頷くことで返事を返すと、発車を告げるブザーを鳴らしバスの運転を開始する。

 有栖川魔法学園の敷地に停車していたバスはゆっくりと動き始めると校門から道路へと合流し、僕たちクラス一同を運んで日本魔法技術センターへと向かっていく。


 昨年の八月より再び、ようやく彼の地に足を踏み入れる事となる。


 世界でも有数の魔法を研究している国家公認の研究所。

 魔法使いまたは魔法に興味がある人間が日夜【魔法】について研究する施設であり、およそ魔法業界にもたらされる何かしらの技術の提供元となる日本魔法協会の総本山。

 またそれとは別にプロと称される優秀な魔法使いたち御用達の訓練場、さらには魔法を制限なく使用できる魔法フィールドの存在もまた有名だ。

 知識、技術、そして力。

 その全てを一手に担うのが日本魔法技術センターと呼ばれる重要施設。

 ――それが日本魔法技術センターである。



 ******

 


「西園寺さん。少しよろしいですか」


 バスが動き出してから二十分くらいの時間が経過した頃、マシロ先生から声をかけられる。

 旅行のテンションに浮かれ騒ぎたい放題のクラスメイトたちをよそに、僕は隣に座るアリスに一言声をかけると前方の席で待つ先生の元へと向かう。

 バスはクラスの人数に対して席が多いため、ほぼ全員が後方の席に集まり談話やトランプなどゲームをして遊んでいる。

 しかし一方で静かに過ごしたい人もいるわけで、そういったメンバーは反対に前方の悠々とした空間でゆったりとくつろいでいた。

 ただそのうちの一人が気にかかるというか……。


「藤堂さん。大丈夫?」

 

 先生の元へと向かう途中、一人窓の外を眺めながらぼんやりとしている藤堂さんを見かけた。

 いわく今朝から体調がすぐれないとのこと。

 顔色は悪くなさそうだけど確かにどこか調子が悪そうには見える。

 そんな僕の心配を察してか、藤堂さんはこちらへと視線を配ると心なしかいつもよりか弱い笑みを口元に浮かべる。


「えぇ、大丈夫です。明後日の魔法対抗戦までにはしっかりと体調を整えますから」


 藤堂さんはトレードマークである白いカチューシャを指でなぞりながらそう言葉を口にすると、頬杖をつきながら再び窓の外を眺め始める。

 その()()に心当たりがあるものの、今はそっとしておこうとそう思った。



 ******

 

 

 一番前の席へと辿り着いた僕は、マシロ先生に促される形で着席する。


 なお通路を跨いだ反対側の席には首からプラカードをぶら下げた某問題児が器用にぐーすか眠りにつく姿が見える。

 『私は寝坊して遅刻したことを反省します』と書かれたプラカードの文字とは裏腹に一才の反省を感じさせない様子で、彼女――姫島姫子は堂々と睡眠を貪っていた。


「まずはお礼を。彼女を連れて来て頂いてありがとうございました」

「いえ、あれはまぁしょうがないというか。何事もなくてよかったです。はい」


 二人して横目で彼女の姿を確認しながら、次の瞬間には大きくため息を吐く。

 ここでは詳細を割愛するが、まぁ一言で言ってしまえば寝坊した彼女を引っ張ってきたのが僕だと言う話である。

 もう一人の寝坊助(音子)を連れて学園に登校したまでは良かったのだが、教室に到着しようとするまさに直前で以下の様なメールが届いた。


『やばい』

『ダメかも』

『荷造りしてない』

『あと一時間待ってて』

『ああああああああああああああ』

『セーブポイントない』

 ――etc

 

 出発式まであと十分しかないこの時間でまさかの連絡が届く。

 冷たい目をするアリスに荷物を預けたのち、すぐさま職員室へと向かいマシロ先生へと報告し、その勢いのままにヒメの住むマンションへと突撃。

 鍵を開けコントローラーを持ちながらキョトンとこちらを眺めるヒメ本体をよそに散らかった服を適当なバックに詰め込むと、パジャマ姿のヒメを担いだ状態で学校へと疾走。

 なんやかんやと出発式が終わる頃には学園へと到着し今に至る。


 なお肝心のヒメ本人についてだが、いつの間にやら制服へと着替えたかと思えば颯爽とバスに乗り込み夢の世界へと飛び立っていく。

 流石ヒメさん。あとでどうなっても知らんよ。

 

「さて、それでは本題に移りましょう。本当は朝のうちに話しておくべき内容だったのですが、まぁ色々ありましたからね。……それでまず向こうに到着してからの予定を再度確認しようと思いまして――」

 

 マシロ先生からの話を耳に、僕は相槌を打ちながら情報を整理し始める。

 まずは今回の合宿が三泊四日での宿泊を予定しており、またおおよその予定は次の通りに決められている。

 

 一日目――移動と自由行動

 二日目――訓練

 三日目――魔法対抗戦

 最終日――自由行動


 初日と午後は自由時間を設けられており、一方で二日目と三日目はクラス単位での行動を計画している。

 とはいえそれも数時間程度の授業みたいなものであり、結局は大半を自由時間として割くことが出来るのがこの合宿の大きな特徴の一つである。

 生徒たちの主体性を重んじる方針とのことだが、こうも自由な時間を与えられる機会もなかなかに貴重なのではと考える。


「たしか到着した後は宿泊部屋に荷物を置いて、一度広間に集合するんですよね。場所は昨年と同じ大広間であってますか?」

「えぇ問題ありません。女子生徒は私が連れて行きますので男子生徒はお願いします」


 昨年の合宿で記憶した間取りを思い出す。

 男子女子ともに三人一部屋で部屋が割り当てられており、またそれぞれ別々の階層で棲み分けをしていたはずだ。

 今年の場合だと二年生男子がフロア五階で二年生女子がフロア六階。

 一応それぞれの部屋に行き来は許可されているものの、二十二時を過ぎると自室に戻らなければならないという決まりはちゃんと設けられており、もし違反した場合は厳しい処罰が待っていると聞く。

 ……翔也ほかクラス男子一同には口を酸っぱくしながら注意したが、さてはたして大丈夫だろうか。


「それと、あなたから個人的に依頼されていた件ですが、正式に承認されました」

「あ、本当ですか?」

「私としてはよく話が通ったものだと驚きましたが、もしかしたらあの人の口添えがあったのかもしれませんね」


 思い浮かぶのは笑顔の絶えない西園寺家の母の姿。

 ズルをしたようで気が引けるため何かお願いをした記憶もないけれど、僕の考えてることなどすでにお見通しなのかもしれない。


「おかげさまで仕事が増えてしまいました。その分期待させていただきますよ」


 そう口にしながら、マシロ先生はどこか楽しそうに僕を見る。

 その言葉通り、こちらのお願いなどマシロ先生にとって仕事が増えるだけの面倒ごととしての側面が強いはずなのに、それでも話を聞いてからここに来るまで一度も嫌だとは口にしなかった。

 実のところマシロ先生の()()()を計算に含んでいたところはあるのだが、それを抜きにしても真正面から向き合ってくれる良い先生だと心から思う。


「それで、早速今夜なのですが――」


 

 ******



「ただいま」

「お帰りなさい」


 マシロ先生との話を終え、後方の席へと戻ってみれば、相も変わらず騒ぎ放題なクラスメイトをよそにアリスは一人読書をしながら時間を過ごしていた。


「バスの中で本を読むと酔わない? というかよくこんな雑音まみれの中で本が読めるね」

「まぁ多少うるさくはありますが特に問題ありませんよ。それで、先生とはどのようなお話を?」


 本をパタリと閉じると、アリスは席に座った僕の方へと首を向ける。

 そんな彼女に対し、僕はマシロ先生から聞いた宿泊先でのルールや到着後の行動についてを共有する。

 本当はクラス代表である僕とアリス、それに藤堂さんの三人で共有しておくべき情報かと思うのだが、ひとまずはアリスにだけ情報を伝えておく。

 元々は事前にマシロ先生と話をしていた内容である。

 少し補足もあるけれど、気分のすぐれない藤堂さんに急いで伝えなければいけない話はない。

 あとで折を見てアリスから伝えて貰えば十分だ。

 

「なるほど。分かりました」


 話を伝えると、アリスは内容を飲み込みながら納得したように一度頷く。

 まぁ大した話でもない。

 賢い彼女からすればなんてことのない話題だろう。

 

「さーて、じゃあ僕は一眠りしようかな」


 途中休憩あり、含めてバスの走行時間は三時間近くにも及ぶ予定だ。

 いま騒ぐだけ騒いで向こうに着く前に疲れてしまうようでは実に意味がないし、ここは睡眠を取る選択を選ぶのは決して悪くはない。


「そうですか。では私も」


 付き合うものではないと思うけど、どうやらアリスも到着まで寝ることにしたらしい。


「……うん? なにそれ」

「イアホンです。周りの声が気になるので――一緒に聴きます?」

 

 手元のポーチからイアホンを取り出す彼女は、首を少しだけ傾げながら片一方のイアホンを僕に差し出す。


「いいの? 片耳だけって結局声が聞こえちゃうと思うけど」

「気にしないでください。さぁどうぞ」


 ではお言葉に甘えて。

 アリスからイアホンを受け取った僕は片耳にはめ、彼女がスマートフォンを操作する姿を眺めながら音楽な流れてくるのを待つ。


「適当に流しますよ」

「うん。よろしく。――あ、これ」


 やがて流れてくるのは一昔前に流行った懐かしい歌。

 これ、いつ頃の曲だったかな。


「懐かしいね。小学生の頃くらい?」

「えぇ。まだあなたがこんな小さかった頃ですよ」

「ははっ、それは随分と昔じゃないかな」

 

 あまり昔の話は好きではないのだけれど、こういう感傷はそれほど悪くはない。

 ただまぁ、おかげさまで昔の夢を見そうだなぁとはぼんやりと思った。


本作と少しだけ世界観が交わる新作を執筆しております。


「ポイント制勇者と名もなき魔法使い」

https://ncode.syosetu.com/n1290in/


ややシリアス寄りの作風で、もし興味があればご一読ください。

※両作品を読まなければ理解できない話などは特に予定ありません。

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