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第77話 この世の楽園へご案内


「うわっ、びっくりした。急に大声出してどうしたんだよ?」


おっと、少しだけ声が大きかったせいか、クリス様を驚かせてしまった。


みんなも一斉に私を見ているね。

ちょうどいいから、早速私の素晴らしい案をアナウンスしようっと!


「おあつらえ向きの場所を思い出したんです!」


「おあつらえ向き?」


「そうです! きっとみんな気に入ると思うわ!」


ボルカノ島民の第二の故郷となる場所だよ。

火山はないから安心してね。


「チェリーナが自信満々の時は要注意なんだよな……」


ん、何か言った?


「みなさーん、私に妙案が浮かびましたのでもう安心ですよ! みなさんをこの世の楽園へご案内いたしましょう!」


私はそう宣言すると、張り切って胸を反らした。

ここはアイデアの源泉かけ流しと異名をとる私にお任せあれ!


「胡散臭いな……」

「ろくでもないことを思いついたとしか思えないよ……」

「楽園ってまさか、天国のことじゃないだろうな」


胡散臭いとかろくでもないとか、まったく失礼しちゃうな。

天国へご案内なんかしたら、誰も生きてないじゃないのよ。


「ゴホン! それでは、発表いたします! この世の楽園とはーー」


私は心の中でダララララーとドラムロールを響かせながら、もったいぶって言葉を切ってみた。

その場のみんながゴクリと喉を鳴らす音が聞こえてくる。


「なんと! マルティーノおじさまの無人島のことでしたー! たぶんまだ名前がないと思うから、”マルティーノおじさまの奇跡の島”と名付けましょうか? わあ、いい考えだわ! ねっ、みんな?」


分かりやすいでしょ?


「ちょっと待て。無人島でどうやって暮らすんだよ!?」


大丈夫、大丈夫ー。

マルティーノおじさまだって、何の準備もなく1年もサバイバル生活したんだから。


「クリス様、無人島とは言っても、川があるので飲み水には困りませんし、今まで通り海で漁をして生計を立てられますよ? それに、野生の果物や木の実がたくさん生っていましたので、農作物を育てるのにも向いている土地だと思います」


「ふーん、一応先のことも考えてたんだな。少し安心したよ」


もちろんずっと先のことまで考えてますよ!


「それに、密林と言ってもいいくらいたくさんの木が生い茂っていますので、斧の魔法具で切り倒せば家を建てるための木材もすぐに調達できます」


「へえー。食料にも木材にも困らないところなら、行ってみる価値はあるかもしれないね」


「そうだな。話を聞く限り、新しい村を作るのに適しているようだ。ここでこうしているより、明るいうちにその島へ行ってみるか」


おっ、アルフォンソとジュリオも乗って来たね!

うんうん、話を聞けば賛成してくれると思ってたよ!


「ぺリコローソ王、一つお聞きしたいことがあります。無人島へは、誰でも自由に移り住んで構わないのでしょうか?」


クリス様は、勝手に無人島へ住み着いていいのか心配しているみたいだ。

だけど、誰も住んでないんだし、別に許可なんて必要ないんじゃないの?


「それは私には何とも言えませんなー。私の治める島ではないようですからー。その島はどの辺りにあるのでしょうかー?」


「ええと、アゴスト伯爵領のポルトの町と、このぺリコローソ島の中間位かしら……? いえ、アゴスト伯爵領の方がずっと近いかもしれません」


確か海図上ではアゴスト伯爵領寄りだった気がする……。

トブーンで行くならポルトの町から無人島まで1時間くらいだけど、船だとどれくらいかかるのかな。


「それならー、万が一所有権を主張する者がいるとするならー、フォルトゥーナ王国のお人なのではないでしょうかー?」


「なるほど。それなら問題ないですね」


そうですね、フォルトゥーナ王国側の問題なら何とでもなりそうです。


「問題ないのですかー?」


「ええ、何かあれば父に相談します」


「お父上にー?」


クリス様の素性を知らない王様がキョトンとした顔をしている。


「ご紹介が遅れましたが、この方はフォルトゥーナ王国の第三王子であられたクリスティアーノ様です。現在は公爵位を賜り、クリスティアーノ・アメティースタ公爵となられています」


ジュリオがクリス様を紹介すると、王様は納得して大きく頷いた。


「おおー、なるほど、なるほど。道理でただ者ではない気品があると思いましたー」


わかります、クリス様って隠し切れないロイヤルな雰囲気がにじみ出てるもんね。


「それからこちらは、マルチェリーナ・アメティースタ公爵夫人です」


はいっ、ただいまご紹介にあずかりました、クリス様の妻マルチェリーナでございます!


「えッ!?」


「ええっ!」

「えええ!」

「えええええー!」


なぜか港のみんなが口を揃えて「えっ」の大合唱を始めてしまった。


なによ?

なんか文句でもあるの!?


「いやはや……、これは失礼を。こちらの元気なお嬢さんが、奥様とは……」


「まだ結婚したばかりなのです」


ハンカチで額の汗をぬぐう王様に向かって、クリス様は慰めるように言った。


「ははは……。して、こちらの方はご友人ですかなー?」


王様は、私のことを話題にするのを避けるようにしてアルフォンソに顔を向けた。


「私はアルフォンソ・アルベルティーニと申します。アメティースタ公爵領で商会を営んでおります」


「なんと! その若さでご立派ですなあー」


「ありがとうございます。ぜひとも私どもの商会ともお取引させていただけましたら光栄でございます」


やり手のアルフォンソは今にも商談を始めそうな勢いだけど、今日のところは時間がないからね?


「それはもう。喜んでー」


居酒屋かな?

枝豆と揚げ出し豆腐が食べたいな。


どうでもいいけど、そろそろ無人島へ向けて出発しようよ。


「みなさん、早速マルティーノおじさまの島へご案内いたします。張り切って出発しましょう!」


暗くなる前に、最低でも寝る場所と、食料の確保は終わらせないとね。

時間がないからチャッチャと支度してください!







そして、3時間以上を費やして、私たちはついに無人島へと上陸した。


「やった、やったー! マルティーノおじさまの島ですよ!」


私は懐かしい島の空気を胸いっぱいに吸い込むと、サラサラした砂に足を取られそうになりながら浜辺をザクザクと歩いた。


はあー、空気が美味しいー!


「結局、チェリーナの望み通りになっちゃったね」


まあ、日頃の行いかな!


「アルフォンソ、どう? 素敵な島でしょう?」


「うーん……。砂浜は確かに素敵だけど、バルーンが下りられるところがここしかないのはちょっと困るかな」


いやいや、バルーンどころかトブーンでさえここしか下りるとこないよ?


枝と枝、いや木と木、いやいや蔓と蔦もあったな。

とにかく色んなものが組んずほぐれつ絡まりあっててすごいんだから。


「それだけが難点ね。水場や果物の木があるところまで歩いて行くしかないのよ」


「歩くのか」


「そこまでどれくらいかかるのかな?」


さあ?


「分からないわ。適当に歩けばいつかは着くんじゃないかしら。たぶん、島の真ん中くらい?」


「チェリーナ。俺たちはいいけど、小さな子どもやお年寄りがいるんだぞ」


そう言えばそうだった……。

クリス様の言う通り、体力のない人にはきつい道のりかもしれない。

適当に彷徨ってる場合じゃなかったよ……。


「どうしましょう……。場所がうろ覚えなんです」


「何か目印はないのか?」


浜辺を抜けて一歩木々の間に足を踏み入れると、360度見渡す限りのジャングルだったとしか……。


「ええーと……。確か、密林に入って30分から1時間くらい歩いて、それから崖を飛び越えてーー」


「なんだって!? 崖を飛び越えるなんてとてもじゃないけど無理だろう」


確かにあそこは難所だった。


「幅はそれほど広くありませんので、私は斧の魔法具で木を切り倒してその上を渡ったんです。お父様は走って飛び越えてました」


「崖を飛び越えるって……。義父上は相変わらず常人離れしてるな……」


そこは完全に同意しますけど。


「お父様の真似をしていたら命がいくつあっても足りません」


「それはそうだ」


困ったなあ……。

あの水場は一体どこにあるんだろう……。






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