悪友との出会い 4
どうしてだろうか。いや、自分が不幸なのは知っている。よぉく知っている。だが、ここまでしなくてもいいのではないだろうか、神様よ。鉄は頬を引き攣らせながら、またもやツンツン頭のヤンキーの寝顔を見下ろしていた。
しばらく黙って寝顔を睨みつけてやっていたが、彼には何も響かなかったらしい。彰二はヤンキーにしては無邪気な寝顔で安眠している。面白くない鉄は小さく息を吐いて踵を返した。
「――待てよ」
出しかけていた足をその場に留める鉄。
(っ何で今頃起きるんだよ)
内心ドキドキして悪態を付く鉄の後ろで彰二は呑気に伸びをした。
「お前さぁ、松中のやつだろ?」
「そ、そうだけど……」
顔を合わせるのは恐ろし過ぎて後ろを向いたまま答えると、ふーんと彰二が気のない相槌を打った。
「ってかさぁ。人と話すときは顔ぐらい、見たら?」
「――っ!!」
急に耳元で声がして息を呑んで身を引く。いつの間にかすぐ横にいた彰二が鉄の顔を覗き込んでいたのだ。
勢いで二、三歩後ずさった鉄は十分な距離を取ってから彰二を睨んだ。彰二はその様子を面白そうに眺めながら片方の口角のみを上げる。
「俺、なんか間違ったこと言ったか?」
「…………」
悔しいが、言っていない。彰二の言ったことが至極一般常識的だと分かっている鉄は、一瞬目を泳がせた後、意地になって彰二の目を見据えた。
「お、俺が悪かったよ! 俺も松木中学だよっ」
(なんか文句あるかっ!)
内心大声で虚勢を張って自らを奮い立たせる鉄は、何故か肩で息をしていた。いや、鉄にとってはそれ程の事だったのだが。
呆気にとられた様に固まっていた彰二がやがてふっと息を漏らす。そして、爆笑し始めた。腹を抱えて笑う彰二を見て鉄はいろんな意味で混乱する。
「なんで笑うんだよ! お前が聞いて来たんだろ!」
「そうだけど! でもお前……、アハハハ!」
「な、なんなんだよ? っくそ!」
無性に腹が立って、未だ大爆笑が収まらないヤンキーに背をしようとした時、その肩に手を置かれた。
「まぁ、待てって。いやぁ、でも本当! ハーっ、苦し。ククク」
「やっぱり帰るっ」
「オイオイ、待てってば!」
渋々振り返ると彰二は先ほどまでの悪そうな笑みを顔から消して、ヤンキーにしては爽やかに笑っていた。
「お前、かなり面白いよな。気に入った。俺、村上彰二。お前は?」
「…………江川、鉄」
仏頂面で答えると彰二が細い目を更に細める。
「これからよろしくな、鉄」
鉄は驚きに目を見開いた。久しぶりにまっすぐに向けられる同情も、憐れみも、蔑みさえもない視線。本当に久方ぶりに見るものだ。
「…………こちら、こそ……」
いつの間にか半ば呆然とした鉄の口からは、普段の彼からは考えられない言葉が出ていたのだった。




