河原の青春
その後、二人は神社の縁側で共に時間を過ごすことが多くなった。
鉄は野良猫と日向ぼっこをしたり、雑誌を読んだり。一方の彰二は眠っているのか、はたまたただ目を閉じているだけなのか分からない態で縁側に寝転がる。ある時思い出したように彰二が話しかけ、それに鉄がポツリポツリと返す。夕方までそんなことをして、境内の電灯が着いたらどちらともなく帰宅する。そんな日々を過ごした。
そのうちに学校でも顔を合わせれば話すようになり、それを見たクラスメイト達は驚くと共に、「あの上村と普通に話せるやつ」として勝手に鉄を見直していった。逆に二学年目で転入早々、まず外見からして遠巻きにされていた彰二への見方は「割と普通の、話せるやつなのかも」と変わっていたようだった。
実際、彰二は凶悪そうな外見を除けば人がいいのだ。春、皆に倦厭されていた彰二は、夏休み前には自然と、なんとなく人の輪から就かず離れずのところにいた。
急に増えた友人に戸惑いを隠せなかったのは、鉄の方だった。
端的に言ってしまえば、素直になれなかったのだ。だが、それだけでもなかった。
あれほど悩んで行き着いた「他人から一線を引く」という結論。それを今が楽しいからと言って簡単に覆してしまうのは、あの時の自分を裏切るような気がしてならなかった。
それにトラブルは、理不尽は、いつ、どこからやって来るか分からないのだから。
――また突然背を向けられるぐらいなら、このままでいい。このままがいいんだ。
そう半ば意固地にまでも卑屈になっていたあの頃の鉄。その後、クラスメイトと距離を置くことにこだわるのを止めるに至るまでには、もちろん紆余曲折があった。
(まぁ確かに、突っ張ってたのかもしれない……かな)
当時の自分をやや冷静にそう分析できるくらいに成長したらしい。だがそれを面と向かって認められるほど、鉄はまだ大人でもない。
そんな心境を知ってか知らずか彰二は鉄の隣でニヤニヤしている。
「……なんだよ?」
「べっつにぃー」
「ぁあの頃は、……そう! 若かったんだよ」
「ふっぅーん?」
「あ、っそれゼッテー信じてないだろ!」
「もちろん、シンジテイルトモ」
「じゃあなんで明らかに片言なんだよ!」
「うっせーなー。だから俺はお前が童貞だって信じてるって。心配すんなよ」
「オイ! 何の話だ!!」
意外とまだ余力のある鉄と鬼教官の声が、カラスの鳴き声と共に茜色の色の河原に響いた。




