悪友との出会い 1
鉄が彰二に出会ったのは中学二年になってすぐの事だった。
学校からほど近い神社の縁側。いじめられるようになってから部活動からも足の遠のいた鉄が授業後数時間を潰す場所。
卯月も初めの、風の暖かな春日和。常駐している神主もいないその神社は、定期的に清掃はされているようだが、古ぼけていて人気が無い。だが鉄は気に入っていた。少なくともオドロオドロシイ感じはしないし、何より静かだ。
その日も鉄は何をするでもなくボウっとするためにやってきた。いつものように慣れた様子で境内からまっすぐ社の縁側に向かった。
だがその日は珍しく先約がいたのだ。それが彰二だった。
クラス替えで鹿沼と違うクラスになったことが大きな要因だった。いじめが原因で一年生の初夏からクラスに馴染めなくなっていた鉄も学年が上がり、新しいクラスになってクラスメイトから避けられることも無くなっていた。
それでも一度出来た溝は簡単に消えるものではない。
どんなにクラスメイトが気にしてい無かろうが関係がない。それは鉄自身の問題だった。
鉄は自分がトラブルを呼び寄せる体質なのは幼い頃からの実体験から十二分に分かっていた。それを嫌という程知りながら口から零れてしまった一言。そのせいで始まった陰湿ないじめ。
自業自得と言えばそれまでなのかもしれない。
あの日、あの時、あの教室に足を踏み入れなければ、そして教室に入ったとしてもいじめられている友人を無視し続けていられれば、自分がいじめられることはなかったのかもしれないのだから。そう考え、一時はひどく後悔もした。
だが、本当にそうなのだろうか。
すぐに、既に納得していたその答えに鉄の中で疑問が生じたのだ。
トラブル体質だとしても、自分はそれほど間違ったことをしたのだろうか。間違ったことを言ったのだろうか。それだけではない。そもそも、何故自分は常にトラブルを避けることを考えなければならないのか。何故、ビクビクと怯えながら生きていかなければいけないのか。
何で俺が? 何で俺だけ?
そうあることが当たり前すぎて今まで深く考える事もなかった。だが、考えれば考えるほど、鉄の胸には憤りによく似た疑問が沸々と湧き上がった。
そして、いじめられ、クラスメイトにも無視されるようになった鉄はしばらくして、ある答えに行き着いたのだった。
いじめられる理由。事ある毎にトラブルに巻き込まれる原因。
それはみんなのせいだ。世の中が理不尽なせいなのだ。
だってそうだろう。何もしなくても嫌なことはあっちの方からやって来るのだ。自分がどれだけ平穏を望み、正しい行いをしていようが関係ない。正しいものが救われるなんて言うのは偽善だ。そんなものは、だたの弱い者の願いなのだ。
正義なんてものは、この世のどこにもない。
――だから、仕方がない。
そう「あきらめ」てしまった鉄はひどい虚脱感に襲われると共に、ある種の安堵感を得た。
少なくとも決して自分は悪くない。悪いのは皆。悪いのは周りだ。
そう考えると、今までトラブルに巻き込まれる度に、嫌な思いをする度に、その非が自分にあるように思えて傷ついていた心が軽くなった気がした。
そうして鉄は一線を引いた。「彼ら」と自分の間に。
クラスメイトと挨拶をする。話しかけられれば他愛無い話もする。中には率先して鉄との距離を縮めようとするクラスメイトまでいた。
だがそれだけ。
クラスメイトはあくまでクラス、学校内だけの関係。クラスメイトだけではない。学校の外でもそうだ。知り合いは知り合いのままでいい。できるだけ浅く、深入りしない。深入りさせない。友達はいらない。
――一人でいい。一人が、いい。




