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 目の前の姿見に映る見慣れた自分の姿。左胸に浮かび上がる、いつになっても見慣れない拳大の円形の文様。そしてその文様の中にある幾何学な柄と「正義」を意味する古代文字。


――justus


 鉄は鏡に映った文様を見つめながら指先で触れた。


(正義、か……)


◇◆◇


 シンズ・Gulaが聖教会に身柄を拘束されて一か月。

 その間、鉄はそれまでと変わらず、カナンの囮役改めパートナーとしてミッションをこなしていた。


 いつもの様に聖教会極東支部本部でカナンのお茶を啜っていた鉄に、ふと思いついた様に結木が言った。

「そろそろ江川君にもセイントとしてのトレーニングを始めてもらおうと思うのですが」

「トレーニング、ですか?」

 カップをソーサーに戻しながら聞き返す鉄に結木は大きく頷いた。

「江川君は正義の剣をその身に宿してはいますが、今のところまだ使いこなせるとは言えないでしょう。いくらその剣と神の加護があっても、そんな状態で勤まる程セイントの役割は甘くはありません。分かっているとは思いますが、セイントと今まで江川君が徹してきた囮役ではエヴェレストと海溝程の差があるんです。その役割の重要さも、もちろん危険度も、ね」

「……分かってます」

 そんなことはカナンを見ていれば分かる。囮役とは言え、だてに今までカナンのパートナーを務めて来たのではないのだ。鉄は神妙な顔で肯定した。

「江川君、君には剣の扱い方ではなく、まず戦い方の基礎から学んでもらおうと考えています。なに、心配はいりません。君にはその道のプロを付けますからね。彼は優秀ですよー。どんなに望みのないグズでも、彼のトレーニングを生き残ることが出来ればある程度は使えるようになります」

 そう言ってにっこりと微笑む結木。


(今サラッと生き残ることが出来れば(・・)って……、出来ない場合はどうなんだよ!)


 その道のプロとやらを凄いと思うより前に内心反射的にそう思い至り、鉄は既にげんなりとならずにはいられない。

 そんな鉄の心境を知ってか知らずか。結木はポンと鉄の肩を叩いて爽やかに言う。

「ファイト!」

 首を絞めてやりたい衝動をひた隠しにして、鉄は必死に口角を上げた。

「……精一杯、ガンバリマス」


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