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終 ―ある昼下がり―

 風間は駆け付けた聖教会のビリーバー達によってまずは聖教会へ連行された。近々ドイツにある聖教会の本拠地へと移送されるそうだ。

 風間の暗示によって操られていた学生たちは直ちに病院へと搬送された。失血が多く、傷が残る可能性があるものもいるが、皆命に別状はないと言う。

 また、ミサや彼女の兄を含め、暗示にかかっていた人達の暗示も無事解かれ、皆一応大事を見て現在は入院中だ。

「本当に一時はどうなる事かと思いましたが、なんとかなりましたね。これも偏に江川君の働きのお陰ですね」

「いや、そんなことは」

 鉄は照れ隠しに、いそいそと紅茶の入った白磁のカップを口へと着けた。

 今日もカナンの淹れたお茶はお買い得のビッグパックのティーバック。それにも関わらず、喫茶店の紅茶と変わらない程おいしい。聖女効果、本日も通常運転である。

 当の聖女はにこにことしながら結木の前に二杯目のお茶を差し出す。

「でも本当の事です。鉄くんがいなかったら、シンズを捕えることもできず、失踪事件の被害者がもっと増えていたと思います。私だって助けてもらいました」

「いやいや、本当にそんなことないから。って言うか俺の方こそ、沢山迷惑かけちゃったし……。カナンに剣付きつけちゃった、し……」

 言い難そうに俯く鉄にカナンは穏やかに微笑んで首を横に振る。

「気にしないでください。あれは鉄くんの意思ではなかったのは分かっていました。あれは……聖剣に宿る力のせいです」

「聖剣に宿る力?」

「はい。セイントに与えられる聖なる力は、その強大な力故に扱うのも難しいものなんです。ですが鉄くんは自分の意思で剣を振るっていた」

「そうだよねぇ。聖器を初めて使ったって言うのによく力に飲み込まれないで制御できたものですよ。いやぁー関心関心」

そう言って結木はうんうん首を縦に振る。


(力に、飲み込まれる……)


 実際自分は飲み込まれていたのだろう。最後の最後でなんとか体の自由を取り戻しはしたが、確実にあの時、体は自分のものではない、何か他のものに突き動かされていた。鉄はあの感覚を思い出して顔を顰める。

「それにしても鉄くんが聖剣を持っているのを見た時は驚きました。鉄くんもセイントだったなんて」

「本当だよね。俺もそれは自分でもメチャびっくりだよ。俺、ビリーバーでもないし、礼拝ってのにも行ったことが無い、普通の高校生なのにな。なんで、俺なんだろ?」

 左胸を擦りながら呟く鉄に結木は人差し指をピシリと突き立てる。

「江川君、これは神の思し召しです。前にも言ったでしょう?」

「そう言えば……」

 確かに昔々、そんなことを言われたような気がする。だがなぜ自分がセイントになったのかは未だに謎のままだ。

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