四人目のセイント――Justus
「気を失ったかな?」
風間は急に動かなくなったきり、何の反応もない鉄の顔を覗き込む。
が、突然バチバチと音を立てて照明の蛍光灯が火花を噴く。
「わっ、なんだ!?」
思わず声を上げ、天井を見上げる風間。
一瞬にして半数以上の照明を失った厨房は一気に薄暗くなる。
だが風間はすぐ近くで見たこともない青白い光を認めて、本能的にその場から身を引いた。
「これは……っ」
鉄の左胸から溢れ出る青白い光。
何かは分からない。しかし、これは危険だ。風間は直感する。
ゆっくりと鉄が頭を上げた。
いつの間にか縄は解け、自由になった右手をそのまま左胸へと持って行く。すると左胸に光り輝く何かが現れた。
――柄だ。
鉄はその柄を握ると、ゆっくりと自らの胸から引き抜く。
「……お前は罪を犯してきた」
静かな呟きに、風間が体を大きく竦ませた。
「これは罰」
「そ、そんなバカなっ! 君はただの、何の取り柄もない男子高校生だろっ!?」
風間は噛み付くように叫び、鉄の胸から引き抜かれたものを目にして言葉を失う。
それは一振りの剣だった。
青白い光を放つ片刃の剣。そしてその刀身に一際輝く刻まれた一文字。
――justus
「これは、報い」
鉄は剣を高く掲げた。
「悪魔をその身に宿し、シンズへと堕ちた者への裁き。シンズは須らく、神の名の下に消えるのが条理」
大きく舌打ちして、風間は鉄の瞳を見据えた。しかし鉄の動きは変わらない。ゆっくりとひどく澄んだ瞳を湛えて風間へと向かう。
「なんなんだよ、お前ぇっ!? 何で暗示が聞かないんだよぅ! 僕にっ、僕に近づいてくるなぁあっ!!」
風間の絶叫に呼応して、宙に浮いていたナイフが一斉に鉄へと襲い掛かる。
だがそれらが鉄に届くことはなかった。
剣の一薙ぎでナイフは一瞬にして消え失せたのだ。
声と顔色を失った風間は腰を抜かして倒れ込む。
鉄は風間の目の前で剣を振り上げた。刀身に宿った光が鉄の顔を青白く見せる。
「――復讐するは、我にありっ」




