小石と電柱
ホームを出て駅前に出ると、仕事帰りのサラリーマンに交じって、大きめのスポーツバッグを肩にかけた学生がちらほらいた。
彼らが身に着けているのは鉄と同じ制服。
鉄は数時間前、足早に通り過ぎた高校最寄りの駅前に再び立っていた。
――カナンが姿を消したのは江川君たちの通う高校のすぐ近くでした。
結木の言葉を頼りにここまで戻って来たものの、鉄にはカナンがどこに連れ去られたかなど見当もつかない。
現在ビリーバーがシンズの捜索に加え、この一帯を中心に行方の知れなくなったカナンの行方を血眼になって探している。それでも見つからないのだから自分がどう歩き回ったところで見つかるはずはないだろう。
だが鉄は何もしているわけにはいかなかった。
夕陽に照らされ長くなった電柱の影が足元に伸びる道をいつもよりも周りを気にしながら歩く。なんとなくその足は学校方面へと向かっていた。
堕ちた罪人が好むのは青い果実。獣に守られた館で、無知な子らは同じ血、同じ肉によってもてなされ、宴を楽しむ。
鉄は英知の書に示されたという天啓を脳内で繰り返す。
堕ちた罪人は十中八九シンズのことだろう。だが青い果実の意味するところが謎であるし、更にその後の一説はそれ以上に意味不明だ。獣に護られた館も、無知な子が何を指すのかも分からない。
(シンズは……カナンは一体どこに……!)
「くそっ!」
苛立たし気に悪態を付き、鉄は足元にあった小石を蹴った。
思いのほか勢いよく転がった小石が電柱にぶつかり小さくカツンと音を立てる。
ふと視線を上げた鉄。
その先にある電柱に見覚えのあるチラシを見つけて、そのまま固まった。
遠くにカラスの鳴く声がして、夕暮れの空は橙から藍色に変わろうとしている。黄昏が近づいている。
「……そっか」
そう呟いて踵を返すと、鉄は来た道を逆方向に駆け出した。




