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生きる資格と価値

「私は知らなかったとはいえ多くの人を不幸の底へと陥れ、かけがえのない大切な人をシンズへ堕としました。しかもそれだけでは飽き足らずに彼をこの手で殺したんです」

 抑揚無く淡々と言うカナンは遠くの記憶を見つめたまま続けた。

「私にせめてできることはシンズを抹殺することです。それでしか私の罪は償えません。私が存在するのは……存在していいのは、この純潔の槍でシンズを倒せるから」

 そう言ってカナンは純潔の槍を胸に抱いた。

「シンズを倒せない私は……生きている資格も価値も、無いんです」

「そん、な……」

 そんなことない。そうはっきりと明言したかった。だが、カナンの口から語られた壮絶な過去が深すぎて、重すぎて、なぜ彼女の心がそれほどまでに捕らわれているのが理解できてしまった。

 だからこそ、今聞いたばかりの焼け付け刃の自分がそんな言葉を軽々と吐いてしまっていいのか、鉄には分からなかった。

 言葉を探す鉄に向けてカナンはまたあの儚げな笑みを浮かべた。

「鉄くん、私はみなさんが思っているような人間ではないんです。神に復讐することを許されたセイント。そうかもしれません。でも……私は聖人なんかじゃないっ。私は、シンズが、罪人が憎い。憎いからこそ復讐しているんです。私がやっていることは、彼らへの私刑と一緒。いいえ、私刑そのものです。結局私は、シンズや罪人と同じ……っ」

 俯いたカナンは鉄の言葉を待つことなく、「ごめんなさい」と囁くように言葉を残すと急に身を翻す。

「ま、待って! カナン!!」

 慌てて追おうとする鉄を振り返ることなく、カナンは空き地を後にした。

「カナン……」

 鉄はその日、再び何も掴めぬまま差し出した手をブラリと元に戻した。


 街灯が、鉄の影を白っぽい地面にくっきりと浮かび上がらせていた。


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