2話 魔力1
俺はそっと鑑定結果が映し出された紙を受け取る。
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ランドウ・クタンセア・リュウカ 13歳
Level1
HP:20/20 MP:1/1 SP:8/11–12/12
スキル枠:[天命LV8][痛覚耐性LV9]
称号:[天照=不死鳥*束縛*][思金=巫女賢人*束縛*]
[鑑定不能:項目不明]
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日本語対応してくれるなんて鑑定さんはなんて便利なのでしょうか。都合の良いものをそのまま解釈し、読み始める。
ステータスで何か特別なものは…ないか。SPの読み方が分からんぐらいだな。
…いや、なんか数値が小さい…?
…一旦スルーだ。称号については…
というか称号とはなんなのだろうか…まぁいいとして、なにやらカッコいい名前が幾つかある。不死鳥とか書いてある奴が生き返った原因か…
………
いちぃ!?
ん!?いち!?
魔力値1という値だけはスルーしようにもできなかった。いや、もはや現実逃避に一度目を背けたまである。
俺が幻覚を見ていなければ魔力は1しかないらしい…これは明らかに低いと俺でも分かるぞ。
…俺の魔法人生…はじめの一歩すら踏めなかった…幻覚であってくれよ…
「ちなみにですね、我がギルドの名物とはまさにこのダナの鑑定板なんです!そんじょそこらと比べでも圧倒的に質がいいんですよ!さらに普段は手を鑑定するだけでいいんですけど、足で鑑定することによってより精度を高め、[鑑定不能]を無くすことができるんですよ!ふふん。あっ、つい力が入ってしまいましたね」
魔力は今は仕方ないと気持ちを切り替えることにした。
「え?鑑定不能と書いてるんですけど…」
「ふふん、そうでsy…え?そ、そんなぁ〜我がギルドの名物にギズがついちゃう〜」
汗をダラダラと垂らしながら目をぐるぐると泳がせまくっている。
よほどこれを売りにしていたのだろう。
「そ、そうだ!もう一度計りましょう!」
否定する理由がなかったのでそれに応じた。
「…どうでしょう。鑑定不能の文字はありますでしょうか…」
「あります」
「ひえ〜!えっと、あっと、そ、そうだ!もう一度計りましょう!」
「…どうでしょう。鑑定できませんの文字はありますでしょうか…」
「…あります」
「ひえ〜!…………以下略
今、俺の手には鑑定書が4枚ある。
しかしどれの紙にも鑑定不能の文字が記されている。
「………その紙、絶対誰にも見せないでくださいぃ〜じゃないと名物が〜!!!」
腰が引けたのか腰をプルプルとさせている彼女は半泣きになりながら俺に抱きついてせがんできた。
なんだか申し訳なくなってしまったので、了承し鑑定部屋から出た。
もらった鑑定書は着服しているワンピースにポケットがついていたので折り畳んでポケットにしまった。
「……それにしても俺の転生特典、どんな能力だろ」
せっかく仕舞った鑑定書を再び取り出して称号とある欄を見やる。
なぜかどちらも束縛と書かれており、パッと思いつくのは弱体化ぐらいだが、何にもされていないのに弱体化とは一体どういうことだ。それに...
天照=不死鳥とはなんなんだ?ひとかけらも理解ができない。なぜ太陽と不死鳥がイコール関係なのだろうか?太陽の象徴と不死の象徴…
よく分からないが天照と聞くと俺の右目が疼きそうだ
思金=巫女賢人…どういう意味だ?先からの情報で推測すると思金?という日本の神が存在するということだろうか?巫女賢人…んーと?俺は賢な神の御使ということか?
…どんだけ考えても意味わからんものは意味わからん。後の俺、任せた。
依頼掲示板を眺めていた先輩と合流した俺は地図の内容を共有して魔樹海を目指すことにした。
「先輩鑑定で何か…転生特典とかありましたか?」
「…秘密かな。桐生だって自分のこと僕に教えないでしょ?」
「.........」
出来る。その言葉は続かなかったどころか、喉にすら達さなかった。
先輩は今は子供の姿だが彼はれっきとした大人だ。
大人に個人情報を教えることは...出来ない。信用は、出来ない。
自分は答える気がないのに相手に聞いた自分の愚かさを俺は少し恥じた。
この町は思ったよりも大きいようで地図だと大したことないように見えたギルドと魔樹海の距離も、その実かなり遠く、1時間以上は歩いた。
魔樹海に少し入り、座れるぐらいの手頃の石の近くで先輩は本を広げた。
適度に土肌が見える程度に雑草が生えており、時たま吹く風に煽られてサラサラとそよぐ
高いまばらに生える木々からの木漏れ日が森の涼しげな空気を引き立てる。
心地よい
「あれ?何故かここだけ紙が新しいような…特段変わりはないか。よし、じゃあ読み上げるよ?魔法使いになる上で、まず初めに鑑定レベルを上げましょう…上げ方は周りのものをどれか1つ意識してじっくりと観察しましょう…ふむ」
先輩はそびえ立つ木を眺めたり触れたりし始めた。
一方で俺はそこに落ちていた石を手に取り、じっくり眺めた。見るじゃなくて観る…だっけ?
石〈そこそこ固め、白に近い薄茶色、ゴツゴツとした形で表面はザラザラ〉
石だ。なんと言おうとこれは石だ。石石石いしいしいしししししい
[称号 覗く者を手に入れました]
脳内を支配したこの言葉にハッとした。あれ?どうしていたんだ俺。
「称号。これが頭に響けば成功…か。何を書いてるんだ?桐生、そっちはどうだい」
「いけました」
「うん?ほんと?」
「はい。先輩の方は…」
先輩は難しい顔をして頭をかく。
「僕は上手くいかなかったよ。一旦スルーして次に行こうか」
「はい」
「次は自分自身に鑑定をかけてみましょう『鑑定』と。発動しないのであればそこでやめましょう。あなたに才能はありません、が成功したのならあなたの名前が見えるはずです。」
やってみよう
えーっと…自分に向けて…『鑑定』!
おっ成功したっぽいな。
眼前には白い縁で型取られた黒い板が出現し…本当にただ出現しただけのようで何も書かれていない。
触れてみようとすると触れることができ、横から見ようとすると見えなくなる…2次元的な板であった。更に後ろからは触れることができないようで、近づけた指が黒い板を通り抜けていった。
どうやら他人のものを見ることはできないらしい。
先輩も黒い板が現れたのだろうか?だが、それらしきものを発見することは叶わなかった。
「うーん…どうやら僕は才がないみたいだね。桐生そっちは…大丈夫そうだ」
先輩の呼びかけに親指を天に立てて返した。
言葉から察するに先輩は恐らく魔法を使う才が無かったのだろう。
「どうします?やめますか?」
魔法の世界に転生して魔法の才が無いとはなんとも悲しいことだ。その絶望感はじわりじわりと侵食しそうだ。俺は耐えられないかもしれない。
先輩には悪いが、どうしても哀れみの目を向けてしまう。
「…しょうがない。これからは桐生に付き合うよ」
先輩は俺が文字を読めないことからそう発言してくれたのだと思う。ありがたや。
「続き行くぞ。鑑定レベル1では何もできないはずなのでレベル2にしましょう。上げ方はそれぞれ別のものを10個、先ほどのように観察しましょう。」
よし、葉葉葉はははは土土土つちつちつちつ木木木きききき雲雲くもくも蜘蛛蜘蛛くもくも…
うわっ蜘蛛いる!
…そういえば人に鑑定したらどうなるんだろ。気になってきたからにはしょうがない。
先輩には犠牲になってもらおう。
『鑑定』っと
黒い板に『ランドウ・モスワイデ・オルト』という文字が出てきたと同時に頭にガンガンと痛みが押し寄せてきた。
うわっ結構激しい頭痛だ。人に鑑定したペナルティとか?
「…桐生、今僕に鑑定した?」
「なぜバレたし」
「この本には鑑定レベルを1から2に上げるうえで最も早く上げる方法は人を鑑定することだが、耐え難い頭痛が襲ってくるから推奨しないって。あと、相手に不快感を与えるから気づいたよ。頭痛大丈夫?」
これをしただけでレベル上がるの?やった〜
「はい、まぁ…大丈夫ですかね。」
「それは本当かい?今読んでいてね。どうやら逆鑑定というものが出来るらしい。これは今の僕らだと僕に頭痛、桐生に不快感が来るらしい。僕も鑑定と言うものを見てみたいしやってもいいかな。不快感もそこまでじゃ無いからね」
「いいですよ」
先輩は我慢強い性格であるし、多分大丈夫であろうという判断のもと、これに応じた。それに魔法に触れることのできる限りあるであろう機会の一つなのだ。応じる以外無いだろう。
「どうやら両手を繋ぎ君が自身に鑑定をし、相手を意識するといいらしいよ。えらく抽象的だね」
さっそく2人でそのポーズになる。
「鑑定」
先輩の声と同時に不快感が頭から足まで伸びてゆく。
うっ…まるで残業代発生しないバイトでモンスター客のクレーム対応でサビ残くらってる時みたいな不快感…
こたえるな〜下手したら頭痛より嫌かも——
「っ!うっぅ~~~~~~!!あがっ」
先輩の顔色がどんどん青ざめていったかと思うと声にならない声をあげた。
そしてジタバタと体をうねらせ悶えている。
「ちょっ先輩!大丈夫ですか!」
しばらく悶えていたと思ったら体の力がふっと抜けたのか止まってガクッとうつ伏せに倒れてしまった。
「先輩っ!」
俺はすぐさま先輩の体を仰向けにして胸、口に耳を近づけて先輩の無事を確認する——
よかった…幸いどちらも問題ない。ただ気を失っているだけだ。
取り敢えず先輩が起きるまで鑑定レベル2の実力でも見よう。3に上げる方法知らないし。
俺は自分に向けて再度鑑定を行なった。
すると今度は黒い板に自分の名前、HP、MPが書かれてあり、どうやらうちの鑑定は成長してくれたようだ。鑑定板にあったSPはまだ出ない子らしくここには載っていなかった。
あれ?MP減ってる…
というもののこのHP、MP表示、ざっくりとしか分からず文字の下にバーがあるのだが、このぐらい減った。しか分からない。
しかし俺のMPは1だ。バーは満タンか空っぽかの2つにしかならないと思っていたんだが、MPにも少数はあるのか。なんかイメージと違うな。
あ、そうだ。外部はどうなのだろう。
そこら辺にある石ころでいーや。『鑑定』っと。
黒い板の文字が上から下へ消されると同時に別の文字が付け足される。
…黒板みたいだな…
新たに書き換えられた板には赤蛙石のみ書かれていた。
そう、その文字のみ
…まぁ情報は増えましたし?どうせ二重鑑定とか出来るんでしょうよ。そうでしょうよ。
文字の書かれている部分に触れ、再度『鑑定』と囁く。
結果的に二重鑑定に成功した。ただ…
出てきたのは石の一文字のみ…
三重鑑定しても出てきたのは石。
腹立つな
そこで1つ、人1人に対して鑑定できる対象は1つだけなのだろうか。二つ同時に出来ないのだろうか
という疑問が生まれた。
その疑問を解消すべく、俺は黒い板を背にもう一度鑑定を自分にかけた。
鑑定板が二つ出来るのではないかという魂胆の元後ろを振り返るとそこに黒い板はなく、…まぁ失敗に終わった。
「そんな簡単なわけないよな」
嘆いてばかりでは始まらない。そう思い鑑定板をチラリと見るとMPバーが空になっていた。
…あっ、すっげぇ眠い
鑑定の乱用によりMPが枯渇した俺は、まるで麻酔を打たれたかのように数秒の内に意識を失った。
文章を整えるので書き直します。




