終焉
「社長は帝都のPC用セキュリティシステムをけっこう改造させていたんですね? PCが起動していさえすれば、PC内部のファイルをアップロードしたりダウンロードしたり、メールをすべて転送したり、やりたいほうだいできるものに改造していたとは、技術部長の私も知りませんでした。吟君のPCのデスクトップに遺書ファイルを転送したのも社長ですか?」
憲次が必死に顔を振って答えた。
「遺書ファイル? 知らん」
「じゃあ山下さんかな? どっちでもいいですけど。お二人はご自身のPCにも同じセキュリティソフトがインストールされていることを忘れていたんじゃないですか? お二人のPCを解析して、とくに山下さん、海外のサーバーに秘密のファイルを隠していたつもりでしょうが、そのセキュリティソフトを使えば、すべてお見通しです。それが先ほどご覧いただいた映像と録音ファイルです」
ふたたび吟の声がした。
「やはり叔父さんが関係していたんですね? 私はあなたの甥っ子ですよ」
山下が叫んだ。
「生きているはずがない、二十階から転落したんだぞ!」
吟の声が答えた。
「おや、そうすると私は幽霊ですか?」
「そうとしか思えない……」
山下がそうつぶやいたときまた一つ照明が点いた。そこには警視庁の岩田刑事がいた。
「もう一人ご紹介しましょう。こちらは警視庁の岩田刑事です」
栄一郎がそう言い終わらないうちに、山下はその姿を見て会議室から逃げ出そうとした。ドアを開けるとそこには宮崎刑事がいた。宮崎刑事が言った。
「申し訳ないが、ここは封鎖しています」
宮崎刑事は逃げようとする山下を確保し、会議室に連れ戻した。
会議室のすべての照明が点灯した。高木の姿があった。
「高木……やはり貴様か……」
山下が怒りで満ちた顔をして言った。それに答えて高木がしゃべると吟の声になった。
「観念してすべてを話してください、山下さん……たしか七年前も私はあなたに同じセリフを言いましたね」
高木の隣にいた吟のデュープが言った。
「どうしたんでちゅか? みんななかよくしないといけませんよ」
それを見て憲次と山下は目を見張った。二人は事態を理解できていなかった。
「それと御手洗肇さんの自動車事故の件ですが……」
長野がそう言うと、今度はスクリーンに高速を走る車の映像が映し出された。肇が運転していた車だった。その映像は肇の跡をつけていた車の車載カメラの映像だった。
「こんな映像も見つかりました」
前を走る車の中が見えた。その車は、突然エアバッグが作動し、運転が困難になったようだ。激しく蛇行し、インターチェンジの分岐に衝突した。跡をつけていた車は少し先にいってから路側帯に停車した。
「やはりエアバッグが作動して運転できなくなって衝突したようですね。車載カメラの映像には日時が記録されていて、どうもこのとき停車した車から110番通報しているようです。警察側の録音とも日時が一致しています。山下さんの声でした。偶然ですか?」
岩田刑事が落ち着いた声で言った。
「山下さん、あなたがエアバッグの改造を依頼した自動車整備工場もあなたのメールから特定できました。この件も詳しくお伺いしないといけないですね」
山下は椅子に座り込み、御手洗憲次は呆然と立ち尽くした。
「憲夫に帝都を継がせようとじゃまな吟や肇を消そうとしたんだが……肇は奇跡的に助かり、吟もああして生きている……なぜだ?」
事件の背後でうごめいていたものを憲次も山下も知らなかった。




