会話
映像が終わると吟の声がした。
「これでもしらをきるつもりか?」
山下は黙ったままだった。それまで黙っていた綿貫栄一郎が口を開いた。
「そうだ。もう一人招待している人がいたんだ」
会議室のドアが開き、女性社員が御手洗憲次を案内してきた。
「なんだ、山下、なぜお前がここにいる?」
憲次は山下の姿を見ていぶかしがった。
「御手洗さん、ごぶさたしています。綿貫栄一郎です」
「おお、綿貫君か。ごぶさたしてしまったね。今日はなんの用なんだろうか? あ、そこにいるのは吟か?」
「はい。あなたの甥っ子の御手洗吟さんです」
と栄一郎が応じると吟の声がした。
「叔父さん、ひさしぶり。お元気でしたか?」
憲次はさらにいぶかしがった。
「ああ……君は死んだはずだが……葬式はもうすませたぞ」
吟の声は続いた。
「そのようですね。でも火葬されたのは、偽物です。包帯で顔が見えなかったんじゃないですか?」
「生きていたのか……」
吟の声が答えた。
「ええ。そこにいる山下に殺されかけました」
憲次が山下を見て言った。
「なに、お前が吟を……」
山下が言い返す。
「なにを言う、命令したのはお前だろう」
ふたたびスクリーンにドローンが撮影した映像が流れ、最後の電話での会話が流れた。
「御手洗社長ですか? 無事終わりました。御手洗吟は予定通りビルから転落しました。社長は? ほお、与党の幹事長と会食ですか、さすがに豪勢でしょうね。銀座ですか? 私もあやかりたいものです。ではアリバイづくりはじゅうぶんですね」
それを見て憲次は顔がまっさおになった。
「知らんぞ。私の偽物じゃないか!」
憲次がそう叫ぶと今度は電話での会話が流された。
山下の声『御手洗社長ですか?』
憲次の声『ああ、そうだ。山下だな。うまくいったか?』
山下の声『無事終わりました。御手洗吟は予定通りビルから転落しました』
憲次の声『ご苦労だったな』
山下の声『社長は?』
憲次の声『幹事長とゴルフしたあと、いまは銀座で寿司を食べているところだ』
山下の声『ほお、与党の幹事長と会食ですか、さすがに豪勢でしょうね。銀座ですか? 私もあやかりたいものです。ではアリバイづくりはじゅうぶんですね』
憲次の声『ああ。幹事長と一緒だったら完璧だろう』
栄一郎が残念そうに言った。
「これじゃ、逃げようがないですね」
追い詰められた憲次が山下に言った。
「どうしてこんなものがあいつらに渡っているんだ! お前が裏切ったのか?」
「そんなわけないだろう」
また一つ照明が点き、今度は帝都セキュリティの長野が現れた。
「社長、長野です」
「長野、なぜお前がここにいる?」




