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追及

 帝都銀行の第一会議室はその日窓が締め切られていて暗かった。会議室には楕円形の大きなテーブルがあった。その中で声だけがした。

「長野さん、聞こえますか?」

「高木さん、だいじょうぶです」

 長野と高木だった。

「ではいまから音声の変換テストを行ないます」

 高木の声に長野が答えた。

「はい、どうぞ」

「私は御手洗吟です」

 御手洗吟の声だった。

「うん、だいじょうぶだ。吟くんの声だ。うちの開発部に急遽開発させたが出来は悪くない」

 長野が満足そうに言った。御手洗吟の声は続いた。

「御手洗さんの声のサンプルはどちらから?」

「吟くんが帝都HDの常務に就任したとき、スピーチしたんだが、それを録音してあったんだ」

 御手洗吟の声のまま高木が言った。

「では、山下を呼びますので、みなさんスタンバイお願いします」

 会議室の入口側だけ照明が点けられた。やがて帝都セキュリティの山下哲夫が女子社員に案内されて会議室に入ってきた。とまどいながら山下がたたずんでいると反対側の照明が一つだけ点けられた。そこには綿貫栄一郎帝都HD専務が座っていた。

「帝都セキュリティの山下哲夫さんですね。私がわかりますか?」

「帝都物産の社長で帝都HDの綿貫専務ではありませんか? 帝都物産のあなたが、どうしてここに? ここは帝都銀行……」

「私を知っていて下さるとは光栄です。そうです、私は帝都HDでは専務ですが、本来帝都物産の人間です。なぜ帝都銀行にいるかと言えば……ここで君に紹介したい人がもうひとりいます」

 照明がもう一つ点くと御手洗吟が座っていた。それを見て山下は驚愕した。

「御手洗吟は死んだはずだ……」

 吟の声がした。

「あの夜のことは忘れられない」

 吟自体は動くことはなく、その声だけが山下の近くのスピーカーから聞こえてきた。

 吟の声は続いた。

「山下、お前の仕掛けたわなにまんまとはめられてしまった」

「なんの話だ! なにも知らんぞ」

「とぼけるな。この映像を見れば思い出すだろう」

 会議室にあった大型のスクリーンに映像が映し出された。吟が転落した夜の一部始終を映していたドローンの映像だ。


 映像は屋上の塔屋の入り口に向かって歩いてくる御手洗吟の映像から始まった。吟におそいかかり薬をかがせ気絶させる男の姿がくっきり映っていた。男はマスクをかぶっていたが、マスクをとってポケットに入れると男の顔がはっきりわかった。山下哲夫だった。山下は吟の体をひきずってフェンスを越えさせた。封筒の中の遺書に指紋をつけた。ドローンを塔屋の上から、横たわっている吟が写る場所に移動させ、屋上から去って行った。やがて吟がふらふらと立ち上がり、いったんフェンスに倒れそうになるが、あわてて反対側に倒れ、そのまま転落していった。少したってからドローンの映像は屋上から急降下して転落して横たわる吟の上をしばらく旋回してから自身の箱の中から封筒を落とし、移動し始めた。帝都銀行の敷地を離れ、一台の車に向かって飛んでいった。車のドアが開き車の中へ入り、そこで着地した。一人の男がドローンの操縦装置を持っているのが映し出された。山下だった。山下は電話し始めた。

「御手洗社長ですか? 無事終わりました。御手洗吟は予定通りビルから転落しました。社長は? ほお、与党の幹事長と会食ですか、さすがに豪勢でしょうね。銀座ですか? 私もあやかりたいものです。ではアリバイづくりはじゅうぶんですね」

 山下が電話を終え、操縦装置を使ってドローンの映像を止めた。


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