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中継

「鈴木、どうしてお前が私を? これまでずっとめんどうを見てきたじゃないか?」

「そうですね……社長のために汚れ仕事をたくさんやってきた私が、いまさらデュープたちのためになにかするなんて柄じゃないですものね。社長は、木村典子を覚えているでしょうね……」

「木村……肇の母親か……」

 鈴木はもう一度薄く笑った。

「けっこううろ覚えなんですね。お前が……典子にしたことを私は忘れたことはない」

「そうか、あのとき典子が躊躇っていたのはお前がいたからか?」

「そうだ。お前は迷う典子を従わせるためだけに無理やり典子を……」

「木村の工場を引き取って帝都グループに入れてやったんだぞ」

「いい加減なことを言うな! 木村の工場をさっさとつぶし、その跡地は再開発に組み込まれて、結局儲かったのは帝都だけだろう。そもそも再開発の話を知っていて持ちかけた話だったんじゃないか?」

 正憲はふてぶてしく言った。

「ああそうだ。もともと再開発計画の話があった土地に木村の工場があったんだ。そこに代理母の話が持ち上がったから木村典子に持ちかけたんだ。一石二鳥だ。なのにあの女が渋るから……」

 鈴木の形相が凄まじいものになっていった。それを見て正憲は我に返った。

「うそだ。いまのはうそだ。そんなわけないだろう。木村を助けたかったに決まってるじゃないか」

 正憲は態度を変えた。

「助けてくれ、鈴木」

「もう遅い。苦しんで死ね」

 鈴木が操作パネルを操作する。

「お願いだ、やめてくれ。助けてくれ」

 正憲の願いを無視して鈴木はパネルのボタンを押した。シューという音がケースで鳴り、蒸気が流れ込んできた。正憲の顔は真っ青になった。鈴木は笑いながら部屋を出ていった。蒸気がケースに満ちてくる。狂ったように蓋を叩く正憲。どれだけ叩いてもなにも変わらない。正憲はあきらめてじっとした。やがて蒸気が消えてなくなってゆく。全身ずぶ濡れになった正憲が、はっと目を開いた。両手を動かしてみたり、手で体のあちこちを触ってみる。やがて蓋が自動的に開いた。正憲はケースから身を乗り出した。ケースの操作パネルの「ケース洗浄(洗浄液)」と書かれたボタンが点灯していた。

 正憲はふらふらとなって、ケースから転げ落ちるように這い出た。そして立ちあがろうとしたとき、目の前に三脚にセットされたスマホがあることに気づいた。スマホの画面を見て自分の姿がネットで中継されていたことがわかった。


※    ※    ※


 正憲を溶融装置に閉じ込め、立ち去った鈴木も火災から避難するため、エレベーターへと向かった。廊下を歩いているとき、突然、数人の男たちが飛びかかってきた。中国語と朝鮮語が飛び交っていた。格闘技に長けた男たちに敵うわけはなく、鈴木はあっけなく取り押さえられた。そして両脇を抱えられて連行された。そのときさらに別のグループが襲い掛かってきた。そのグループの中には金髪の美女の姿があった。鈴木は呆気にとられたが、その美女に見覚えがあった。

「シャーロット……」

 中国人工作員を取り押さえながらシャーロットが答えた。

「オー、ナマエヲシッテイタダケタトハコウエイデス」

 中国人や朝鮮人たちは逃げ出して行った。シャーロットが鈴木秘書に話しかけた。

「チュウゴクヤキタチョウセンニイキタイデスカ? ソレトモアメリカデスカ?」


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