拘束
鈴木と正憲が研究室を出て、廊下をしばらく行くと鈴木が立ち止まった。
「どうした?」
鈴木が指を口に当て、正憲に黙るよう合図した。そして指で近くにあった部屋を指差し二人はその部屋に入った。
「だれかいるようです。工作員かもしれません。少し隠れましょう」
部屋には透明な蓋がついた大きなケースが縦に向かい合って二つあった。一つにはカバーがかけられていた。鈴木はカバーがかかっていないほうの透明な蓋を開け、御手洗正憲に入るようすすめた。
「だいじょうぶか? この機械はなんなんだ?」
正憲がそう言いながらもケースに入ると鈴木は蓋を閉めた。
「そうですか? 社長はこのケースがなんなのか知らないんですね?」
鈴木がそう言うと正憲は答えた。
「なんだろう? デュープの製造に関わるものなんだろうが……」
「それではお見せしましょう」
鈴木はもう一台のケースのカバーを外した。ケースには御手洗蓮のデュープが入っていた。そのデュープは目をつぶっていた。
「蓮じゃないか!」
「そうです、蓮ちゃんのデュープです。いやデュープの失敗作です。六歳と若いため、成長促進のコントロールが難しく細胞崩壊を起こしてしまっています」
正憲は孫の姿を見て憐れんだ。
「かわいそうに……」
「そうですね、かわいそうです。もっとかわいそうなのはそのあとです。彼らがその後どうなるか、社長はご存知ですか?」
正憲は苛立った。
「そんなことよりここから出せ」
正憲が蓋を開けようとするがびくともしない。蓋やケースのあちこちを叩いたり蹴ったりするがなんともない。
鈴木は薄く笑いながら言った。
「そんなことしたってむだです。ときどきまだ生存しているデュープを処分しなきゃならないこともあるようで、そう言った場合に激しく抵抗するので、かなり頑丈に作られているそうです。田所に言わせれば、中で手榴弾を爆発させてもびくともしないとか」
「鈴木、いったいなにをするつもりだ?」
「なにをするもなにも、ただいいものをお見せするだけです」
鈴木が御手洗蓮のデュープが収納されたケースの操作パネルを操作した。ケースのLEDが点滅し始め、蓋がロックされた。やがてケース上部から液体が噴出され始めた。液体はやがてデュープの全身をおおった。液体が泡立ち、デュープの肉体が溶け始めた。
目を閉じていたデュープの目が突然開き、叫び声があがった。激しくケースを叩いた。やがてケース中が泡だらけになった。叫び声と激しく暴れる音がした。しかし時間が経つにつれ、叫び声はかすかになり、音もしなくなっていった。さらに時間が経つと泡が消え始めた。ケースの中にはなにも残っていなかった。正憲は目が離せずその一部始終を見ていた。
「デュープたちは、その失敗作は、火葬するわけにもゆかないため、こうして溶融されていたんです。通常は一時間くらいかけて溶融するんだそうですが、濃度を目一杯あげたらほんのわずかな時間でなにもなくなります。残酷だと思いませんか? 社長?」
正憲はごくんとつばを飲み込んでから言った。




