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再生

「肇か? 上で待っているように伝えたはずだが……もうここまで辿り着いたのか……」

 三人は部屋に入った。部屋には何台かのディスプレイが設置され、手前にはコントロールするための機器が設置されていた。この部屋は別荘とその地下室とを管理するコントロールルームの役目を果たしているようだった。ディスプレイには透明な液体で満たされた容器で眠る裸の人間の姿が交互に映し出された。ときどき写る顔は御手洗吟だったり、御手洗肇だったり……また胎児だったり、幼児だったり……。幼児の中には肇の子供蓮に似た顔があった。みな素裸だったが、肌はきれいで美しかった。

「これはいったい……」

 肇はあらためて衝撃的な映像を見て言葉をなくした。

「デュープだ。正確にはデュープ予備軍というのか、デュープになる寸前の人間だな」

「人間を作っているんですか?」

「人間を作るなんてことはだれにもできない。手や足は義足や義肢で代替することができる。義足や義肢をつけたアスリートだっている。再生医療が進んだおかげで、内臓を修復したりもできるようになった。それでも人間を作ったりはできない。体外受精も精子や卵子を人工的に受精しているだけだ。精子や卵子自体を作ったわけじゃない。クローン人間は細胞から元の生命を作り出すという意味では、人間を作ったという意味にかなり近い。しかし私が願うのは、亡くなった人間が生き返るように、亡くなる前に体を移って、新しい体で生き続けることだ。吟にそうしてもらいたかったし、蓮にもそうしてもらいたい」

 しばらく沈黙してから肇が言った。

「そして私はその成功例第一号というわけですか?」

「たしかにお前はデュープ第一号だ。いやか?」

 肇には返す言葉がなかった。

「あの時の事故でお前は死ぬ寸前だった。妻子を残してお前は死んだ方が良かったというのか? そうじゃないだろう。死なないですむのなら、死なない方がいいんじゃないか? デュープは新しい技術だから、抵抗があるんだろうが……義肢や義足ですら最初は抵抗があったという。人間じゃないとか、機械みたいだとか。いまそんなふうにいうものはいない。むしろ美しくすらある。iPS細胞を始めとした再生医療は医学を大きく次の段階に進めた。メディカル二・〇と呼べばいいのか? それとも三・〇と呼ぼうか?」

 肇は自分の気持ちを落ち着けながら言った。

「妻や子を残して死にたくはありません。大切な家族です。蓮や心が大人になり巣立ってゆくのを見守りたいです。しかし……」

「しかし?」

「お父さん、あなたの本当の目的はなんですか? あなたは本当に、吟兄さんを助けたかったんですか? 私を助けたかったんですか?」

「もちろんだ。ほかになにがある?」

 肇には解けない謎があった。

「だったらなぜ脳移植の見込みの薄い吟兄さんのデュープを残しているんですか?」

「それは……吟の遺体は火葬してはいない。冷凍保存されている。近い将来、脳の損傷を修復できる時代がきたら、脳移植を行うつもりだ」

「吟兄さんが火葬されたとき、あれはデュープだったことは知っています。驚きました。脳の損傷を修復できる時代っていつですか? まだまだ先でしょう。だったらいまデュープを確保して保護する意味はありません。もしかしたら吟兄さんのデュープにご自分の脳を移植する計画だったんじゃないですか?」


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