表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/97

追跡

 正憲が応接セットの椅子をうながし、猪熊は座った。二人の調査官は椅子の後ろにまわり立ったままだった。

「そう言う話なら所長の田所がいたほうがいいでしょう」

「田所所長ですね。連絡がとれなくて……」

 正憲も椅子に座りながら言った。

「おや、そうですか? じゃあ、関係者を集めますから、生命ラボでおあいしましょう。その方が早い」

「ああ、そうですか……」

 猪熊は不服そうな顔をした。正憲はそんな猪熊にはとんちゃくなく立ち上がると言った。

「申し訳ないね、せっかく来ていただいたのに……総理にもよろしく。次の参議院選挙でも応援させてもらうからと言っておいてください」

 猪熊はあきらめたような顔を見せ、立ち上がった。

「はい、わかりました。伝えておきます」

「生命ラボで会える日にちはおって秘書から伝えます」

 正憲がそう言うと猪熊は目配せして二人の調査官ともども御手洗正憲宅を出た。三人は正憲宅から少し離れた場所に止めてあったバス型の指揮車両に乗りこんだ。壁に設置されたディスプレイには正憲宅の玄関が映っていた。

「今のところ予定通りだ。しばらく待機しよう」

 猪熊がそう言ってしばらく立った頃、正憲宅の玄関が開き、車が出てきた。運転手が運転し、後部座席には正憲が座っていた。正憲は洋服に着替えていた。

「おや、早速動き始めたようだ。どこへ行くのか……」

 猪熊はマイクに向かって言った。

「今の車をつけてくれ。ほかの車も、一台を残してつけろ」

 猪熊たちが乗った指揮車両を先頭に数台の車が正憲の乗った車をつけ始めた。調査官の一人がマップを見ながら言った。

「首都高に乗るようです」

「東名高速か? やはり御殿場の生命ラボに行くつもりか……所長の田所も、鍵を握る研究員の山形や木下も行方不明じゃ、調べようがない」

 猪熊はそうぼやいたが、調査官が続けた。

「おや、東名じゃないようです」

「なに?」

「中央道か……関越道か……どうも中央道のようですね」

「中央道……なにがあるんだ?」

 もう一人の調査官がパネルを操作しながら言った。

「御手洗社長は河口湖に別荘があるようです」

 ディスプレイに別荘の外観の写真が映し出された。大きい建物だったが、何より芝生の庭がかなり広かった。

「別荘って……この大きさはハンパじゃないな……絶対になにかある」

 猪熊には漠然とはしていたが、自信はあった。正憲の車は中央道を走り続けた。猪熊は追跡している車と連絡を取り、交互に尾行を続けた。正憲の乗った車は河口湖ICでおり、河口湖方面に少し行ったあたりの人気のない土地へと走った。できるだけ接近しないよう気をつけながら猪熊たちは尾行した。もう間違いなく別荘へ正憲は向かっていた。

 別荘は高い塀で囲われていて、正面には大きな門があった。その門の前まで正憲が乗った車がゆくと門が開き、車は入って行った。猪熊たちの車は少し離れた場所で停まった。門が静かに閉まった。

「令状もなしに押し入るわけにもいかないな……」

 猪熊は手詰まりになり、悔しそうな顔を見せた。そのとき正憲の別荘の入口を映すディスプレイにもう一台の車が現れた。中には、肇と高木が乗っていた。門の前で停まった。

「おや、御手洗肇だ」

 猪熊は少し考えてからドアを開けて車を降り、肇が乗る車に近づき、窓を叩いた。窓が開くと言った。

「御手洗肇さん、珍しいところでおあいしますね」

 肇は苦笑して答えた。

「珍しいって、ここは父の別荘ですから」

「ああ、そうか、御手洗家の別荘か……」

「そうは言っても、こんな別荘があるなんて私も最近知ったんですが……」

 猪熊が肇に提案した。

「御手洗さん、こっちの車で少し話しませんか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ